雪原とクエストと妖精
……という訳で。
結局奥まで進み、何とかプリシアナッツの実がある場所まで来た俺たち。
……だけど。
「ぐるるる……」
……うん。
すっごいでかぶつがいらっしゃいますヨ?
口から冷気がバシバシほとばしってますヨ!?
「あはは……これ何? ボス登場? それとも死亡フラグ的な……」
「縁起でもないことを言うんじゃねぇよ!」
ブロッサムに怒鳴られた。
しょうがないだろ!? こっちは寒さと疲労で疲れてんだから!
「み、みゅ~……。ど、どうするの……?」
「……クエストの合格はプリシアナッツの実を持ち帰ることだ。じゃなきゃ意味がない」
「……それじゃあ……」
「ああ……」
俺らのやるべきことは、一つ。
「倒して、手に入れっぞ!」
「や、やっぱり……」
俺が刀を構えると、ブロッサムも杖を持つ。
「シルフィー。おまえは邪魔にならないとこまで下がってろ」
「え? で、でも二人じゃ……」
「いいから! ブロッサム、行くぞ!」
「わ、わかった!」
いい淀むシルフィーは無視し、俺はそのまま唸る獣に突っ込んでいった。
「ぐるる……がぁあああ!!」
獣は鋭い爪を振り上げ、そのまま俺を引き裂こうとする。
「そらよっ!」
けど甘いな。俺は華麗に受け流し、それどころか逆に斬り込んだ。
「がぁあああ!!?」
……結構深くいったみたいだな。
ボロッと前足が鮮血塗れで折れた。それはもう見事なスプラッタだ。
「うわっ、グロ……」
折れた前足を見ないよう、ブロッサムが光魔法『シャイン』を放った。
その隙間を縫って、俺が確実にダメージを与えていく。
「ぐるるる……!!」
「うぉ!?」
その時だ。
獣が俺とブロッサムに水の塊を次々落としてきやがった!
ってか獣のくせに水魔法『アクアガン』なんて使うのかよ!?
「や、やば……っ!」
「ちょ……痛さで乱射か!?」
「こ、これじゃ反撃できないぞ!?」
止む気配のない攻撃にひたすら避けるしかない俺たち。
「アユミちゃん、ブロッサム……っ」
シルフィーは木の影から俺らを見てる。
よかった……獣はこいつに気づいてないようだ。
「気づく前に何とかしないと……」
「あ、あう……っ、……!」
ドゴン! ドゴーン!
獣の攻撃が止む気配が一向にない。
や、やばい……もう疲れが……っ。
「……ぐぁあああ!」
「げっ……うわっ!?」
「いでっ!」
あ、避けるのに夢中で隣にいたブロッサムと派手にごっつーん、と……。
ってこれ、や・ば・い!?
「……あれ。なんか、俺らに影が……?」
「気のせいじゃないぞ……これは……」
言われて恐る恐る上を向く。
……あり? なんか水塊が一際でかく……?
「こ、こんなの落とされたら……」
「……終わりだな……勘弁してくれ……」
二人揃って顔を引き攣らせる。
どうしよ……疲れのせいか、体が動かない……。
「がぁあああ!!」
「「……っ」」
あ、終わった……。
タカチホの皆、先立つ不幸をお許しください――いや、死にたくねぇ!
ドゴォオオオン!!
「……、……はれ?」
ボケながら目を閉じてたら、なんか爆音が響きました。
……ってか、水塊どころか、獣も丸焦げですが? それはもう上手そうにこんがり丸焼きに。
「みゅ……みゅ……やった、よ~……」
「な……シルフィー?」
加えてもう一つ。
木の陰に隠れてたシルフィーが木の側で両手を突き出して立っていた。
……これはまさか。
「シルフィーが、やったのか……?」
ブロッサムが呆然となってつぶやいた。
……俺も正直驚きだ。このへたれフェアリーのどこにそんな力が……?
「『イグニス』……うまくいったよ~……♪ …………ぁぅ」
それだけつぶやくとバタッ、とぶっ倒れた。
「シルフィー!?」
慌てて起き上がって容態を見る。
「アユミ。シルフィーは……?」
「……うん、気絶してるだけだ」
ホントは気絶じゃなくて寝てるだけだが。まあ不毛なやり取りは面倒なので黙っておく。
「……とりあえず、プリシアナッツの実を取るか」
「ああ、わかった。俺が取ってくる」
ブロッサムが翼を広げると、プリシアナッツの実を直接取ってきた。
――セレスティアって便利だな、オイ←
「取ってきたぞ」
「サンキュ。じゃ、ブロッサム。帰還札でこのまま帰るか?」
「そうだな……ローズガーデンで少し休んでから帰ろう。……体力がもたない」
「……だよな。んじゃ帰るか」
シルフィーがいる以上、モンスターでも来られたら厄介だからな。
帰還札を手にしながら、俺は軽くため息をつくしかなかった。
――――
……で。プリシアナッツの実を持ち帰り、クエストはクリアはした。
……クリアはしたんだ。ただいろいろとごたごたが残っているだけで。
「はぁ!? ブロッサム、なんでそうなってんだよ!?」
「いや、俺に言われても!」
「シルフィーのいたパーティのメンバーがやられたって……」
……そう。あのお気楽フェアリー、シルフィーのメンバー(こいつを見捨てたが)。
実はスノードロップの街寸前でモンスターたちにやられてた。たまたま視察で街に来てた先生方が発見したらしい。
「……シルフィーは知ってるのか?」
「いや……本人はのほほんとしてるし、何より見つけたのは先生たちだからさ……。秘密裏に処理している」
「秘密裏、なあ……?」
「しょうがないだろ。ジャーナリスト学科がうるさいから」
「……わかってるよ」
話題を求めるジャーナリスト学科のことだ。
いらんことまであれこれ書くのは失礼だし、何よりシルフィーに知られたら……。
「……あー、それと……先生に言われたことがあるんだが……」
と、ここでブロッサムが控えめに、かつ言いにくそうに切り出した。
……なんか、嫌な予感が……。
「実は……シルフィーなんだが……俺らのパーティに入れてくれと……半強制的に言われた」
「…………。な・ん・だ・と!?」
やっぱりか! うっすら予想はしてたが! うっすら予想はできたけど!!
「なんでだ!? ってか半強制的って誰が言った!!」
「待て! 答えるから刀をしまえ! ……あー、シルフィー自身も俺らに懐いたし、俺らもこの先もう一人くらいいた方がいいって……校長とセルシアが」
……ここで従兄弟の方々が出てくるとは。
まあ……たしかにシルフィーの能力はすごい。あれだけの魔法の強さがあれば、その辺のモンスターも敵じゃない。
……けど、あのヘタレ性格だけは何とかならんのか!?
「……もう決定事項?」
「……ほぼ」
「つーか、なんであっさり頷いたんだよ」
「……あの二人に反論できると思うか?」
「…………」
……無理だな←
セルシアはまだしも、校長は言いくるめることは無理だと思う。
そもそも、彼らの方が正当な意見を言っているはずだから、俺らの反論は人徳に反する。
「……シルフィーは? この事知ってるのか?」
「……多分。先生が話すって言ってたし……」
「……もう決定じゃないか」
はたしてあいつは戦力になれるのだろうか……。
そんなことを考えながら俺はため息をつくしかなかった。
結局奥まで進み、何とかプリシアナッツの実がある場所まで来た俺たち。
……だけど。
「ぐるるる……」
……うん。
すっごいでかぶつがいらっしゃいますヨ?
口から冷気がバシバシほとばしってますヨ!?
「あはは……これ何? ボス登場? それとも死亡フラグ的な……」
「縁起でもないことを言うんじゃねぇよ!」
ブロッサムに怒鳴られた。
しょうがないだろ!? こっちは寒さと疲労で疲れてんだから!
「み、みゅ~……。ど、どうするの……?」
「……クエストの合格はプリシアナッツの実を持ち帰ることだ。じゃなきゃ意味がない」
「……それじゃあ……」
「ああ……」
俺らのやるべきことは、一つ。
「倒して、手に入れっぞ!」
「や、やっぱり……」
俺が刀を構えると、ブロッサムも杖を持つ。
「シルフィー。おまえは邪魔にならないとこまで下がってろ」
「え? で、でも二人じゃ……」
「いいから! ブロッサム、行くぞ!」
「わ、わかった!」
いい淀むシルフィーは無視し、俺はそのまま唸る獣に突っ込んでいった。
「ぐるる……がぁあああ!!」
獣は鋭い爪を振り上げ、そのまま俺を引き裂こうとする。
「そらよっ!」
けど甘いな。俺は華麗に受け流し、それどころか逆に斬り込んだ。
「がぁあああ!!?」
……結構深くいったみたいだな。
ボロッと前足が鮮血塗れで折れた。それはもう見事なスプラッタだ。
「うわっ、グロ……」
折れた前足を見ないよう、ブロッサムが光魔法『シャイン』を放った。
その隙間を縫って、俺が確実にダメージを与えていく。
「ぐるるる……!!」
「うぉ!?」
その時だ。
獣が俺とブロッサムに水の塊を次々落としてきやがった!
ってか獣のくせに水魔法『アクアガン』なんて使うのかよ!?
「や、やば……っ!」
「ちょ……痛さで乱射か!?」
「こ、これじゃ反撃できないぞ!?」
止む気配のない攻撃にひたすら避けるしかない俺たち。
「アユミちゃん、ブロッサム……っ」
シルフィーは木の影から俺らを見てる。
よかった……獣はこいつに気づいてないようだ。
「気づく前に何とかしないと……」
「あ、あう……っ、……!」
ドゴン! ドゴーン!
獣の攻撃が止む気配が一向にない。
や、やばい……もう疲れが……っ。
「……ぐぁあああ!」
「げっ……うわっ!?」
「いでっ!」
あ、避けるのに夢中で隣にいたブロッサムと派手にごっつーん、と……。
ってこれ、や・ば・い!?
「……あれ。なんか、俺らに影が……?」
「気のせいじゃないぞ……これは……」
言われて恐る恐る上を向く。
……あり? なんか水塊が一際でかく……?
「こ、こんなの落とされたら……」
「……終わりだな……勘弁してくれ……」
二人揃って顔を引き攣らせる。
どうしよ……疲れのせいか、体が動かない……。
「がぁあああ!!」
「「……っ」」
あ、終わった……。
タカチホの皆、先立つ不幸をお許しください――いや、死にたくねぇ!
ドゴォオオオン!!
「……、……はれ?」
ボケながら目を閉じてたら、なんか爆音が響きました。
……ってか、水塊どころか、獣も丸焦げですが? それはもう上手そうにこんがり丸焼きに。
「みゅ……みゅ……やった、よ~……」
「な……シルフィー?」
加えてもう一つ。
木の陰に隠れてたシルフィーが木の側で両手を突き出して立っていた。
……これはまさか。
「シルフィーが、やったのか……?」
ブロッサムが呆然となってつぶやいた。
……俺も正直驚きだ。このへたれフェアリーのどこにそんな力が……?
「『イグニス』……うまくいったよ~……♪ …………ぁぅ」
それだけつぶやくとバタッ、とぶっ倒れた。
「シルフィー!?」
慌てて起き上がって容態を見る。
「アユミ。シルフィーは……?」
「……うん、気絶してるだけだ」
ホントは気絶じゃなくて寝てるだけだが。まあ不毛なやり取りは面倒なので黙っておく。
「……とりあえず、プリシアナッツの実を取るか」
「ああ、わかった。俺が取ってくる」
ブロッサムが翼を広げると、プリシアナッツの実を直接取ってきた。
――セレスティアって便利だな、オイ←
「取ってきたぞ」
「サンキュ。じゃ、ブロッサム。帰還札でこのまま帰るか?」
「そうだな……ローズガーデンで少し休んでから帰ろう。……体力がもたない」
「……だよな。んじゃ帰るか」
シルフィーがいる以上、モンスターでも来られたら厄介だからな。
帰還札を手にしながら、俺は軽くため息をつくしかなかった。
――――
……で。プリシアナッツの実を持ち帰り、クエストはクリアはした。
……クリアはしたんだ。ただいろいろとごたごたが残っているだけで。
「はぁ!? ブロッサム、なんでそうなってんだよ!?」
「いや、俺に言われても!」
「シルフィーのいたパーティのメンバーがやられたって……」
……そう。あのお気楽フェアリー、シルフィーのメンバー(こいつを見捨てたが)。
実はスノードロップの街寸前でモンスターたちにやられてた。たまたま視察で街に来てた先生方が発見したらしい。
「……シルフィーは知ってるのか?」
「いや……本人はのほほんとしてるし、何より見つけたのは先生たちだからさ……。秘密裏に処理している」
「秘密裏、なあ……?」
「しょうがないだろ。ジャーナリスト学科がうるさいから」
「……わかってるよ」
話題を求めるジャーナリスト学科のことだ。
いらんことまであれこれ書くのは失礼だし、何よりシルフィーに知られたら……。
「……あー、それと……先生に言われたことがあるんだが……」
と、ここでブロッサムが控えめに、かつ言いにくそうに切り出した。
……なんか、嫌な予感が……。
「実は……シルフィーなんだが……俺らのパーティに入れてくれと……半強制的に言われた」
「…………。な・ん・だ・と!?」
やっぱりか! うっすら予想はしてたが! うっすら予想はできたけど!!
「なんでだ!? ってか半強制的って誰が言った!!」
「待て! 答えるから刀をしまえ! ……あー、シルフィー自身も俺らに懐いたし、俺らもこの先もう一人くらいいた方がいいって……校長とセルシアが」
……ここで従兄弟の方々が出てくるとは。
まあ……たしかにシルフィーの能力はすごい。あれだけの魔法の強さがあれば、その辺のモンスターも敵じゃない。
……けど、あのヘタレ性格だけは何とかならんのか!?
「……もう決定事項?」
「……ほぼ」
「つーか、なんであっさり頷いたんだよ」
「……あの二人に反論できると思うか?」
「…………」
……無理だな←
セルシアはまだしも、校長は言いくるめることは無理だと思う。
そもそも、彼らの方が正当な意見を言っているはずだから、俺らの反論は人徳に反する。
「……シルフィーは? この事知ってるのか?」
「……多分。先生が話すって言ってたし……」
「……もう決定じゃないか」
はたしてあいつは戦力になれるのだろうか……。
そんなことを考えながら俺はため息をつくしかなかった。