このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

プロローグ

「うげー……広ェな、おい」

 晴天の空。
 真昼の学校の廊下に、げんなりとした表情をした黒髪の少女がいた。

「プリシアナ学院か……前のタカチホ以上に広いと感じるのは、俺の気のせいか? いや、違うよね?」

 少女はどうやら転入生というモノらしい。
 刀を握り、物珍しそうに学院内を眺めている。

「……では転入生のアユミ君に来てもらおう。アユミ君! 教室に入って来てくれ」

 考え込んでいると、教室から男の声がした。
 呼ばれたアユミは「はーい」と間延びした声で教室に入る。

 ざわざわ……。

 入ってきた途端ざわめく教室。
 興味深そうに自分を見る目。
 それらすべてをやり過ごし、アユミは自分を呼んだ教師――グラジオラスの隣に立つ。

「どーも。転入生のアユミです。学科は侍、後サブに盗賊。好きなモノはイワシ。身長に関してはつっこむな。以上、よろしくお願いします」

 すらすらと言いつつ軽く一礼をすると、周りから拍手が起こった。
 ちなみに一部から「ちっちゃくて可愛い……」と言う声が聞こえたが、それはなんとか無視する。

「これから彼女と仲良くするようにな。席は……そうだな……」

 グラジオラスは教室全体を見回し、窓際の席に注目する。

「そこの窓際の席にしよう。……ブロッサム!」

「は……俺の隣ですか……!?」

 ブロッサムと呼ばれたセレスティアが、がたっと椅子の上でのけ反った。
 周り(男子+一部の女子)から視線が注目し始める。

「そうだ。アユミが慣れるまで、プリシアナについていろいろ教えてやってくれ」

「う……わ、わかりました……」

「よし。……じゃあアユミ。彼、ブロッサムの隣に座ってくれ」

「はいよ」

 周りの視線に耐えつつ、ブロッサムは頷き、促されたアユミは、そんな彼の近くへ歩み寄っていく。

「……まあ、そんな訳で。とりあえずよろしく頼むわ」

「……ああ」

 互いに軽く挨拶を済ませ、席に着くアユミとブロッサム。


 これがこれからの物語の

 始まりだったりするのだった。
1/1ページ
スキ