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「どこに行くのかな」
「げ」
「授業始まるよ」
休み時間終了二分前に声をかけてきたのは宿敵、不二周助。隣の席になってからというもの、奴のせいでサボれないのだ。保健室に逃げ込もうとする度になんやかんやと足止めを食らうのは両手では数え切れなくなってしまった。
「体調悪くて……」
しおらしくお腹を押さえて言ってみた。しかし、不二は頬杖をつき、溜息も吐いた。
「嘘吐き。お昼ご飯しっかり食べてるところ見たよ」
「うっ」
何も言えねえ。というより、なんでしっかり見てるんだよ。
不満を覚えつつ、席にぽすんと座る。ちらりと不二を覗けば、変わらず顔の三か所が弧を描いていた。
なんだかずるい。私も不二の表情を崩したい。何がいいだろう。あ、そうだ。
「ほんと私の事好きねぇ!」
自分でもよく言ったと思った。女子人気の高い不二にふざけてでも投げる言葉では無いことは分かっていたはずなのに。
すると、不二は頬杖をついたまま動きを止め、目を開けた。
「ダメだった?」
「だっ……」
何を言っているんだ、この男は。不二周助はこんな男じゃない。こんな私に心底情けない顔に見せてくるなんて。でも、ぐるぐると思考を巡らせても出てくる答えは一つしか無くて。
「だめ、じゃないです……」
じわ、と顔に熱が集う。逃げ出したいのに逃げ出そうとしなかったのは、不二の目に席から離れないよう縛り付けられたから。
ああ、チャイムが鳴ってしまった。どうしよう。
授業が終わらないでくれと願ったのは、これが初めてだった。
「げ」
「授業始まるよ」
休み時間終了二分前に声をかけてきたのは宿敵、不二周助。隣の席になってからというもの、奴のせいでサボれないのだ。保健室に逃げ込もうとする度になんやかんやと足止めを食らうのは両手では数え切れなくなってしまった。
「体調悪くて……」
しおらしくお腹を押さえて言ってみた。しかし、不二は頬杖をつき、溜息も吐いた。
「嘘吐き。お昼ご飯しっかり食べてるところ見たよ」
「うっ」
何も言えねえ。というより、なんでしっかり見てるんだよ。
不満を覚えつつ、席にぽすんと座る。ちらりと不二を覗けば、変わらず顔の三か所が弧を描いていた。
なんだかずるい。私も不二の表情を崩したい。何がいいだろう。あ、そうだ。
「ほんと私の事好きねぇ!」
自分でもよく言ったと思った。女子人気の高い不二にふざけてでも投げる言葉では無いことは分かっていたはずなのに。
すると、不二は頬杖をついたまま動きを止め、目を開けた。
「ダメだった?」
「だっ……」
何を言っているんだ、この男は。不二周助はこんな男じゃない。こんな私に心底情けない顔に見せてくるなんて。でも、ぐるぐると思考を巡らせても出てくる答えは一つしか無くて。
「だめ、じゃないです……」
じわ、と顔に熱が集う。逃げ出したいのに逃げ出そうとしなかったのは、不二の目に席から離れないよう縛り付けられたから。
ああ、チャイムが鳴ってしまった。どうしよう。
授業が終わらないでくれと願ったのは、これが初めてだった。