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彼の部屋のソファで我が物顔のように寝そべる。私が寝転がろうが、当たり前に余裕のあるソファは私の扱いをよく知っている。居心地の良さのせいで睡魔に襲われる事もしばしばあった。
今も肘掛けの上で腕を組み、閉じてしまいそうな瞼と戦いながら窓辺で読書中の彼を眺めている。私がソファに寝転ぶと、夢の中に迷い込んでしまうから彼は静かに時を過ごす。
私は彼の横顔が好きだ。造形が美しいのは言わずもがなだが、長い睫毛が揺れる度に私の目は釘付けになる。彼の碧がより神秘的に見える。
あ、今ページを捲った。
外から微かに鳥の鳴き声や木々の揺れる音が聞こえる中、紙を捲る音は確かに私の鼓膜を響かせた。
細長い指が紙を操る。そんな彼の指が好きだ。私に触れる時の滑らかな指先。丁寧に優しく。言葉を交わさなくとも伝わる彼の心緒に、私はいつも満たされる。
「けいごくん、」
猫撫で声で名を呼んだ。彼はすぐに私の方に碧を向けると、本を閉じた。
「来て」
行動を催促するように強い語調で命令する。彼は気にせず、机の上に本を置いて私の元へと近づいた。それに合わせて体を起こすと、彼は私の隣に腰を下ろす。背もたれに腕をかけた姿は、彼の態度を表している。
「何の用だ」
よくもまあ言えたものだ。いつも分かっているクセに一々言わせる。以前、彼は私の声が好きだと言っていた。そのせいでもあるのだろう。だから、悪い気はしない。
彼の傍に擦り寄って顔を近づける。私の好きなものが近くにある。
くすりと微笑んでやれば、彼は私の輪郭を指でなぞった。ほら、丁寧で優しくて。私の好きな指。
「私の命令を聞く景吾くんが見たかっただけ」
得意げに答えてやると、彼はクツクツと肩を揺らして笑った。彼は笑う時、初めに顔を俯かせるから私の好きな睫毛がよく見える。だから笑顔も好き。
「ハッ、随分と我儘な姫様だな」
髪をかき上げながら喜色を溢れさせる彼。私もそれにつられて顔を綻ばせてしまう。
「可愛いお願いのつもりなんだけど」
「バーカ、俺様に命令する時点でそう決まってんだよ」
指で額を啄かれる。もう、と唇を尖らせて見せると、彼は再び笑った。
「嫌いじゃないでしょ?」
今度は意地悪く片側だけ口角を上げる。挑発的な言葉に彼は満足そうに空気を漏らした。
「当たり前だろ。自分の女に求められて嫌な事があるかよ」
彼は私の顎を掬うと、唇を重ねた。彼の熱が私を浮かす。ふわふわと夢を思わせる。
誰にも渡したくない。これは私の、私だけの特等席なのだから。
今も肘掛けの上で腕を組み、閉じてしまいそうな瞼と戦いながら窓辺で読書中の彼を眺めている。私がソファに寝転ぶと、夢の中に迷い込んでしまうから彼は静かに時を過ごす。
私は彼の横顔が好きだ。造形が美しいのは言わずもがなだが、長い睫毛が揺れる度に私の目は釘付けになる。彼の碧がより神秘的に見える。
あ、今ページを捲った。
外から微かに鳥の鳴き声や木々の揺れる音が聞こえる中、紙を捲る音は確かに私の鼓膜を響かせた。
細長い指が紙を操る。そんな彼の指が好きだ。私に触れる時の滑らかな指先。丁寧に優しく。言葉を交わさなくとも伝わる彼の心緒に、私はいつも満たされる。
「けいごくん、」
猫撫で声で名を呼んだ。彼はすぐに私の方に碧を向けると、本を閉じた。
「来て」
行動を催促するように強い語調で命令する。彼は気にせず、机の上に本を置いて私の元へと近づいた。それに合わせて体を起こすと、彼は私の隣に腰を下ろす。背もたれに腕をかけた姿は、彼の態度を表している。
「何の用だ」
よくもまあ言えたものだ。いつも分かっているクセに一々言わせる。以前、彼は私の声が好きだと言っていた。そのせいでもあるのだろう。だから、悪い気はしない。
彼の傍に擦り寄って顔を近づける。私の好きなものが近くにある。
くすりと微笑んでやれば、彼は私の輪郭を指でなぞった。ほら、丁寧で優しくて。私の好きな指。
「私の命令を聞く景吾くんが見たかっただけ」
得意げに答えてやると、彼はクツクツと肩を揺らして笑った。彼は笑う時、初めに顔を俯かせるから私の好きな睫毛がよく見える。だから笑顔も好き。
「ハッ、随分と我儘な姫様だな」
髪をかき上げながら喜色を溢れさせる彼。私もそれにつられて顔を綻ばせてしまう。
「可愛いお願いのつもりなんだけど」
「バーカ、俺様に命令する時点でそう決まってんだよ」
指で額を啄かれる。もう、と唇を尖らせて見せると、彼は再び笑った。
「嫌いじゃないでしょ?」
今度は意地悪く片側だけ口角を上げる。挑発的な言葉に彼は満足そうに空気を漏らした。
「当たり前だろ。自分の女に求められて嫌な事があるかよ」
彼は私の顎を掬うと、唇を重ねた。彼の熱が私を浮かす。ふわふわと夢を思わせる。
誰にも渡したくない。これは私の、私だけの特等席なのだから。