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wondere one year ago

階段を駆け上る・・・
暑いし、足だるいし・・・ なんで、俺こんなに必死になって走ってるんやろ・・・
誰のために走ってるねん・・
人間の体ってこんなに熱くなるもんやってんや・・・


なんてことを考えながら・・・



別荘について中を見るけど誰もおれへん・・・
一体あいつらどこに行ってん・・・
さらに駆け上り駐車場へ急ぐ


酒と怠惰で腐りきった体には相当このロードワークはこたえる・・・
体中で息をしながら、吹き出る汗を袖でぬぐう・・


美樹が連れ去られたのがこの階段の途中やって話や・・・そんなに遠くへは行かれへんやろ・・・
駐車場の奥の雑木林の方に目を向ける・・・
と、かすかに何か光ったような気がした・・・


俺は急いでそっちの方に行く・・・





「な・・・なんでこんなことするん?」

小さいけどはっきりした女の声・・・ やな・・・

「だって俺ら暇やもん・・・」

笑いを含んだ声が答える・・・  あれは快彦や!

俺はさらに足を進めて・・ 目を凝らす・・
日はすっかり落ちてしまって月明かりだけが頼りや

そこに、あいつらが懐中電灯を向けた先には美樹の姿が浮かびだされていた
かなり逃げたのか、顔中泥だらけで、しかも着ていたランニングシャツが引きちぎられたいた


あいつら・・・
俺はなんか頭ん中真っ白になってあいつらの前に飛び出そうとした・・・・
と・・・不意に、美樹の姿を見ていた快彦の声が響いた



「ええよなーーーあんたも、一緒におったあのクソ生意気な二人組みも・・・毎日輝いてるんやろうなぁ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「俺ら、なんもないんや・・・毎日が退屈で死にそうなんや・・・ 」

快彦の声が少し切なく響く



「・・・・・・・・・・・・・・」

「学校行ってもおもろない・・・働いててもおもろない・・・ 惜しいものもなんもない・・・ 毎日が薄っぺらで・・・ お前等にはわかれへんやろうな・・・」

「だからなん? ヨコやヒナのこと殴ったり・・・私にこんなことするのも・・・」

「そうや」

それまでの哀愁に満ちた声がガラッとかわって、いやなモノを含んだような声が響く・・・

「あんま眩しいのって目に悪いねん。 なんもそんなに輝かんでもええやろ?」

「それって・・・ただの逆恨みやん!」

「だからなんや?」

快彦が美樹に近づきその顎に手をかける

「逆恨みでもなんでもしたるわ・・ お前ら汚すためやったら! 」

「そ・・それやったら好きにしたらええやん! でも・・もう、ヒナやヨコに近づかんといて!」

「・・・・・・・・・・・・・」

「みんなの夢を邪魔せんといて!」

一瞬快彦の背中がたじろいだようにビクッと震えた
それから、もう一歩につめより顔を近づけた

「思った以上に気の強い女やな・・・そんなにあいつらのことが大事か? 好きなんか?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「だったらあいつらの前でお前をめちゃめちゃにしてやったら・・・あいつらどうするやろうな? 自分らが殴られる痛みには我慢できても・・・俺たちになんもせんと引き下がったりはできへんやろ?」

美樹の顔がゆっくりと引きつる

「やめて・・・」

「あいつらここに連れて来い!」

快彦の声に後ろの三人がうなずく

「やめて!」

美樹が慌てて止めようとするけど、快彦に腕を掴まれた

「ちょっとだけ大人しくしときや・・・すぐに連れて来たるわ」

そう言って駆け出そうとしたあいつらの前に俺は姿を現した
みんなギクッとしたように立ち止まる



「なにやってんねん?」

俺は威嚇するようにみんなを見回した

「すばる・・・」

「もう、こいつらと関わるな言えへんかったか?」

「・・・・・・ 」

「ええかげんせえよアホ!」

「なんやねんえらそうに!」

快彦がの腕を掴んだままこっちを向く・・・
今まで、俺には隠していた憎悪をむき出しの目をこちらに向けてくる

「なんやねん! ちょっと金持ってるからっていつもすかしやがって・・・俺らのこと心の中ではウザイ・・・アホやって思ってるくせに」

「それはお前らも同じやろ・・何にも知らんと思っとったんか? お前らかって一人やったらなんもできへんくせに・・・」

「なに?」

「一人でおるのが寂しいから適当な奴らとつるんで友達のふりしてるだけやないか!」

「寂しくて仕方ないいう顔してたんお前のほうやろ! だから俺ら一緒におったったんやないか!」

「一緒におってくれたなー 俺、アホほど金持ってたもんなー」

「そうや・・・あたりまえやろ? それしか理由なんかないわ!」


言うなり、快彦は美樹の手を離して俺に殴りかかってきた
それしか理由はない・・・ それが当然やろうな・・・

その程度の付き合いしかしてない奴らや・・・ 俺が思ってるのと同じ分だけしか返してもくれへんやろ?








でも・・・・
それでも・・・・
一人でいるのが寂しかったんや! 辛かったんや!!!




誰でもいいから・・・一緒につるんでいたかったんや・・・・
その場しのぎでも・・・間に合わせでも・・・ それでいいと思ってたのに・・・



5―1やったけど・・・・かなり体は鈍ってたけど・・・・負けたくなくって・・・
あいつらを殴るたび・・・自分を殴ってるような気がした・・・
俺だけちゃう・・・きっとみんな心の中では何か熱くなれるもんをずっと探してるんや・・・
それが見つけられへんから・・・荒んでいってるんや・・・






荒い息づかいが夜の闇の中に充満する・・・
俺はよろけながらも立ち上がり・・・月明かりに照らされたみんなの姿を見つめた






「もう、今日限りや・・・お前らとは・・・ 二度と俺の目の前に現れるな!!」

地べたに這いつくばりながら、みんなの視線がこっちを向く

「お前らいい加減気づけ! ただ寂しさ埋め合わせるためだけで一緒におったって・・・空しくなるだけやって・・・みんな平等に時間は流れてるのに・・・目を閉じて耳を塞いで・・・何も感じんようにしてるのは自分らの方なんやって・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「いつまでもこんなことしてられへんのや・・・ いつかは自分と向き合って前に進みださなあかんのに・・・それが怖くて、全てのことから目を背けてるだけやろ!」

「・・・・・・・・・・・・・」

「気づけ! もう、俺らの夏は終わったんや・・・」





快彦はしばらくくいいるように俺を見ていたが・・・その目から荒んだような光が消えた・・・そのかわり、一寸寂しそうに目を細めると口の端を上げて笑った

そしてゆっくりと立ち上がると服の泥をはたき俺に背を向けた

「行くぞ!」

快彦の声にみんな無言のまま立ち上がると快彦について行った


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