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どうでもいい恋話

・・・・・見捨てられた店・・・・・

私の勤めている会社は店舗を運営していて、テナントに入っているので、会社の人よりは同じテナントにいる他の会社の人達との交流の方が深い。

配属された店にやってきた私

「何これ…」

売場はとにかくごにゃごちゃで何を売りたいのかわからへん
バックヤードも汚くて何がどこにあるのかもわからへん

同じテナントに別会社から配属になった新入社員の女子、とりあえず名は鈴木さん。

鈴木「前任者、片付け苦手やったんですよ。まぁ、頑張って下さい。最低限の必要な書類の場所は片付けといたので」

「鈴木さん!ありがとう!別会社やのに!」

鈴木「いえ…うちの場所も使われてたんで取り返したついでです」

「……なんかごめん」

鈴木「大変ですね。何でわざわざこんな所きたんですか?旗艦店にいましたよね?」

「一緒に働かへんって誘われたから」

鈴木「…見捨てられた店にようこそ」

「へ?」

主任「確かに…」

店員「見捨てられてますよね…」

他のスタッフさん達も頷いてて、これは大変と思っていると爽やかに新しく担当になりましたーと挨拶にきた白石上司

「見捨てられた店て言われてますよ!」

挨拶ついでにお茶しようと言われて店を離れた

白石「あぁ…まぁ、そう言われるのも仕方ないかもな」

「数字出てないし?」

白石「それもやし、遠いから上の人らも巡回してへんかったらしいしな」

「それはつまり、会社に見捨てられたって事じゃないですか。それに、数字出てない言うてもギリギリラインを保ってたんでしょ?前任者の人長かったんですよね?長年一定数保ってたなんて凄いですよ」

白石「まぁ、だから雇ってた訳やけど…あの、もしかして聞いてない?」

「何をですか?」

白石「この店、今月目標いかへんかったらアウトなんやけど…」

つまり人を抜く事になるという…

「え?クビ?私、クビ?」

そんな誘っといて1ヶ月でクビなんて!

白石「いや、他の店に行く事になるんやろけど…俺も私さんも試されてるってこと」

「何すかそれ?あの部長は善人の皮を被った悪魔か!」

白石「確かに、人良さそうな顔してるからなぁ」

「腹立ちますね!でも、いいです。なんとかできる可能性に部長が賭けてると思って、なんとかしてやりますよ」

白石「頼もしいな。俺も協力するし!一緒に頑張ろ!」

白石上司は言葉の通り、協力してくれた
うちの店以外にも複数店舗担当しているにも関わらず、頻繁にお店に来て一緒に考えてくれたし、掃除も手伝ってくれた

鈴木「白石さん、めっちゃ来ますね」

「優しいわー、イケメンやわー」

鈴木「確かに、うちの上司に比べたらほんま…あ、堀尾が来た」

鈴木さんの上司は仕事ができるのはできるらしいけど、自信が凄い。言わば堀尾君のような…堀尾君の方が可愛いけど

堀尾「おつかれっスー!」

「お疲れ様です」

鈴木「何の用ですか?」

鈴木さんは堀尾が嫌いらしく、冷たい

堀尾「聞いてよ、鈴木ちゃん!俺、昨日さー」

来るや否や自慢話が始まった
鈴木さんは適当に相槌しながら手は動かして仕事してる。偉い!

堀尾「そういえば、私さんのとこの上司が下にいたで。電話してた」

「え?来るって聞いてない!すっぴんや!」

白石「すっぴんなん?」

「白石さん!」

くそ!来た瞬間に教えてくれてたら!ダッシュで化粧してきたのに!堀尾め!しょーもない自慢話なんかしやがって!

白石「お疲れ様。あ、これ!よかったらみんなで食べて!」

鈴木「あ、それ!気になってたやつです!」

白石「ほんま?よかった!可愛いなぁと思って!」

堀尾「可愛い?あぁ、動物の形したやつ?」

白石「そう。堀尾さんもよかったらどうぞ」

堀尾「ありがとう!ええタイミングで来たわ!」

鈴木「ほんまに…こんなにも差を見せつけられるタイミングとか…」

「まぁまぁ」

堀尾「そういえば、目標いったんやろ?鈴木ちゃんが珍しく報告してきた」

鈴木「私は普通に報告しただけです」

「そうなんですよ!いったんですよ!」

白石「私さんのお陰で!ほんまありがとう!」

「白石さんと鈴木さんや主任達の協力があったからです!ありがとうございます!まぁ、私の実力ありきですが!」

白石「いや、ほんまに。さすがやわ」

堀尾「いかんと思ったんやけどなぁ…鈴木ちゃん、頑張ってや!」

いかんと思ったって何やねん!

鈴木「そう思うならさっさと帰って頼んだ資料作って来て下さい。いつまで待たせるんですか?」

堀尾「鈴木ちゃんて俺に冷たいねん!どう思う?」

白石「え?いや…そう…なんですかね?」

鈴木「白石さんに絡まないで下さい。ほら、早く行って下さい!」

鈴木さんに追い払われて堀尾さんは渋々帰って行った。もちろん、白石さんの差し入れを食べた後に。

白石「堀尾さん、いつも明るいし面白いよな」

鈴木「現場向きやのに何で上がったんやろ」

「育てたいんじゃない?どうやったか〜とか事細かく話してはるし、俺凄伝説から何か活かして欲しいとか」

白石「俺凄伝説て…」

「私は現場離れて指導なんかごめんやけど。責任なんか負いたくない!」

鈴木「わかります!私も責任なんか負いたくないです!絶対上になんていきません!」

「そうやんなー!よくやるわ!あんな胃が痛くなる仕事、絶対無理!」

白石「あの…俺はその仕事をしてるんやけど」

鈴木「白石さんは合ってますよ」

「うんうん!胃をお大事に!」

白石「俺の胃を守る為にもよろしくお願いします」

鈴木「まぁ、私さんがいたらこの店は大丈夫ですよ」

「鈴木さん!愛してる!」

鈴木「彼氏いるんで」

・・・・・人見知り内弁慶・・・・・

3ヶ月後、チームの個人成績で1位になった。
部長が数年ぶりに店に来たので鈴木さんはじめ、他のスタッフさん達も驚いてた。

「私ってば!やはりやればできる!」

白石「いやー、ほんま…驚いたわ」

「ですよねー!ですよねー!」

白石「私さんが前の会社おった時、俺の店来たことあんの覚えてる?」

辞める数ヶ月前に、私は上司命令で他店応援をさせられてた

「覚えてますよ!私の店から異動になったスタッフさんがいたお店ですよね!」

私の店から異動になったスタッフさんは私さん天使ですよ!とか眩し過ぎて見れへん!とかそんな台詞を真顔で言うおもしろスタッフで、仲が良かった。千石さんとしよう。

白石「そう、千石は俺の癒しって言ってて、私さんとこのスタッフは怖い人って言うからどんな人や思っててん」

「千石さんも私の癒し!てか怖いて…失礼やな。助けてやったのに」

白石「いや、でもほんま怖かったで?お世話になります、私です。今の実績教えて下さいっていきなり言うし…」

「そうでした?」

白石「そやで。俺、話しかけてんけど…」

「話ましたっけ?」

白石「話したよ!雨降ってきたけど、傘持ってるん?って!」

「えぇ…そんなん言われたかなぁ?」

白石「そしたら、傘ささない派なんで大丈夫ですって…何か話しかけてごめんなさいってなったわ」

「それはすみませんでした」

白石「けど怖い言うてたスタッフがまた来て欲しいて言うてるの聞いて、一緒に仕事したら面白いんやろなって」

「私、人見知りの内弁慶なんですよ」

白石「人見知りはともかく、そうなんやろな。やし、一緒に仕事できて嬉しいわ」

「私もですよ!白石さんおらんかったら3ヶ月持たなかったですよ!多分」

白石「絶対嘘やん」

「いや、まぁ嘘ですけど。でも白石さんがフォローしてくれるからなんとかやれてるから、ありがとうございます」

白石「こちらこそ」

白石さんが私を気にかけてくれるのは経験があれど、入って右も左もわからん私が上の立場になって初めて担当した新人やから
私も私で白石さんに懐いてたのは同じ会社で顔を合わすのは白石さんくらいやったし、頼りにしてた

・・・・・私は正常!・・・・・

半年くらい経った頃、長年応援していたアイドルが脱退する事になり晴天の霹靂の如くショックを受けた私は、初めてやらかした。

「こんなミス!新人でもせんわ!」

鈴木「いやいや、逆に新人がやらかすレベルではないですよ。どうやったらこんなミスできるですか」

「…これはもう死んで詫びるしか」

鈴木「そこまで?私さんの命って軽っ」

「おいー!」

なんて言いつつも、正直かなり凹んだ
だって!アイドルはいなくるなるし!仕事に私情挟んでミスるし!上司に迷惑かけるし!
トリプルショックや!

鈴木「あ、電話鳴ってますよ」

「白石さんや!いや!出たくない!」

鈴木「いやいや、怒られるなら早い方がいいですって!」

「怖い!怖い!怒られる!」

鈴木「いいから出て謝る!」

鈴木さんが怖くて、電話に渋々出た

「この度は大変なご迷惑をお掛けして申し訳ございません!」

白石「いきなりやな。大丈夫やから、もう着くし!」

白石さんは笑って言って、電話を切った

「…来るって」

鈴木「まぁ、そうですよね」

「いやや!怒られる!」

鈴木「大丈夫ですって!」

「嘘や!手間かけさせやがって!とか言って怒るんや!あかん…もうこれは首を括って詫びるしかない!私はもう腹を切って詫びる道しか残されてない!」

鈴木「首と腹のどっちにします?」

「どっちが痛くないよ?痛くない方を希望!」

鈴木「あ…」

白石「声が大きい」

白石さんが苦笑いでやってきた

早っ!電話切って数分しか経ってへん、心の準備をさせろや!とパニックしつつも始末書を差し出す

「始末書です」

白石「え?書くように言うた?そこまでの事じゃないやろ?」

「いやいや!そこまでの事ですよ!こんなミスするなんて!さぁ!怒って下さい!」

白石「そんなに反省してんのに怒らへんわ。それに、ミスするのは仕方ない。みんなするよ。俺にはなんぼでも迷惑かけていいから、俺も勉強になるし!次から気をつけよ!な?これでこの話は終わり!」

爽やかに言われて私の心臓は破裂した…気がしただけやけど

「あれ?白石さんは?」

お店にいる間に休憩を取るように言われて戻ってくるの姿がなかった

鈴木「今日、ほんまは他店行く予定やったらしいですよ?その店に呼び出されてついさっき帰りました」

「ま、まじか!私はなんて迷惑を!お礼も言えてない!」

鈴木「怒る訳でもないのにわざわざ顔見にくるて…優しいなー」

「優しいなー!」

鈴木「ほら、そこ」

「ん?」

鈴木さんがカウンターの中にあるパソコンを顎で差した
そこには付箋が貼ってあった

「ごめん!行かなあかんくなった!今日の事はほんまに気にしないように!頑張ろな!…なぁなぁ!こんなんさぁー!」

鈴木「いや、そんなんなくても惚れますよ。正常です」

「そうやんな!私は正常!」

鈴木「白石さんて彼女いないんですか?」

「そんな話したことないわ」

鈴木「確認してから好きになった方がいいですよ」

「確認する機会なくない?」

鈴木「ご飯誘ったらどうです?私さん、しょっちゅう行ってるじゃないですか」

「いや、それは後輩とかさ。何か誘われたら断れへんくて…」

鈴木「私は誘われても行きたくない時は断ります」

「羨ましい」

鈴木「社外の付き合いとか面倒しかないじゃないですか」

「楽しいけど…仕事の話もできるし」

鈴木「勤務外で仕事の話とか…無理」

「…ご飯行こうよ?」

鈴木「…いいですよ」

「鈴木さん!愛してる!」

鈴木「イタリアンでお願いします」

・・・・・丸井先輩は本屋さん・・・・・

会議があり、久しぶりに会社に行った
他店のスタッフも集まってたので
元々同じお店で働いていた人達も来ていた
私を部長に雇うべきや!と引き抜きのきっかけを作ったスタッフ、とりあえず日吉君にしよう
新人で入ってきて別会社の癖にやたらの懐いてきた後輩日吉君

日吉「私さん!俺、車で来てるんで送りますよ」

「マジ?!やったー!」

日吉君に送ってもらい、仕事の話をあーだこーだ話していた

「いやー!白石さんって最高!」

日吉「あの人、知識凄いですよね。まぁ、俺がそのうち抜かしますけど」

「抜かしてみせてくれ!財前君(元後輩)はもうすぐ一位とれそうなんやろ?」

日吉君は財前君と同じテナントにいる

日吉「そうなんですよね…俺のせいで先輩いなくなったとか言って落ち込んでたのに、復活しました」

「可愛いなー!財前君!」

日吉「そういえば、資格試験受けるんですか?」

「受けるように今日言われた。白石さんが教えてくれるって」

日吉「白石さん、チームで唯一1番上の資格持ってますからね」

「へぇ、凄い資格なん?」

日吉「1番上の資格は凄いですね。俺も次、受けるんですよ」

「お!取れたら白石さんに並べるかもやん!」

日吉「対策ノートもらったんですけど白石さんが作ったやつで…凄いですよ?本当に努力してるなと思いました」

「そんな対策せなあかんほどの資格を私は別に欲していない」

日吉「何言ってるんですか。取って損はないですよ。それより、噂で聞いたんですけど…」

「何?」

日吉「白石さん、辞めるって本当ですか?」

「誰が辞めるん?」

日吉「だから、白石さん」

「何で?」

日吉「それを俺が聞いてるんですよ。何か聞いてないんですか?」

「聞いてない。嘘やろ?」

日吉「さぁ?あくまでも噂なんで。私さんが聞いてないならデマですね」

日吉君はそう言っていたけど、そんな噂があるくらいなら何かある気がする

白石「これ過去問まとめたやつ」

「うわ…分厚い」

白石「5年分くらいあるしな」

「えぇー」

白石「大丈夫!こっちがその中からよく出るのをピックアップしたのやし」

「白石さんが作ったんですか?」

白石「そう。試験受けた人らに聞いて」

なんてこったい!
凄いな…

「そういえば、白石さん…辞めるんですか?」

白石「え?」

「いや、なんか日吉君が…」

白石「あいつが言うてんのか…辞めへんよ!この前も違う店舗の子にも聞かれてんけど、辞めへんから!」

「ほんまですか!よかった!白石さん辞めたら私も辞めますからね!」

白石「それ、俺めっちゃ責任重いな」

そんな話をして、しばらくして帰る間際に白石さんがお店にやってきた

「あれ?私もう帰りますよ?」

白石「一緒に帰ろうと思って!」

鈴木「それでわざわざ来たんですか?」

白石「あー、まぁちょっと話したいこともあって…」

「わかりました!すぐ終わらせます!」

急いで帰る準備をした

「話って?あれですか?お店でイベントするとかいう…」

白石「そういえば、部長が言ってたな。したい?」

「どっちでも。今までしたことないんですよね?試してみるのはいいかもですけど…」

白石「ほな、部長に言うとくわ!それで、話というのは…俺、再来月で辞める事にしてん」

「えぇ?!辞めへんて言うてたのに!」

白石「あの時はそうやってんけど…実は東京に恋人がいて、その人と住む事になってん」

「遠距離恋愛してたんですか?!え?え?結婚?!」

白石「いや…結婚はできんねんけど」

「結婚できひん?」

白石「やっぱ聞いてないか…会社には隠してないねんけど、恋人って彼氏やって。親はその事知らんし、結婚はな…」

「なる…ほど…」

白石「俺が辞めたら辞めるって言ってくれてたし、私さんには1番に話そうと思って。今日、部長に話したとこやねん」

「ほやほやですね」

白石「そやな。あの、けど…俺は辞めてまうけど、辞めんといてくれたら嬉しいなぁと」

「考えときます」

次の日、出勤したら部長から聞いたんですけど!と、日吉君から連絡がきた。そこで白石さんの彼氏話も聞かされた。遅い!日吉!遅い!

「はぁぁぁぁ」

鈴木「まさか、彼氏がいたとは…流石に足掻いても難しいですね」

「それよりも!周知の事実やったのに私だけ教えてもらえてなかったショック!」

鈴木「まぁ、でも本格的に恋に落ちる前でよかったですね」

「何だよ!本格的って!すでに落ちとるわ!」

鈴木「その割に何のアプローチもしてないじゃないですか!信じられへん!……だから彼氏できないんですよ」

「うるさぁぁい!」

鈴木「いやー、でも白石さんがあんなけ優しいのもなんか納得。私の友達のゲイもすっごく優しいですもん」

「ゲイなんかなぁ?バイじゃなくて?」

鈴木「ゲイなんでしょ?諦めて下さい。私さんには丸井先輩がいますよ」

「丸井先輩どこにいるやー!」

鈴木「こないだ本屋にいましたよ?新刊出てました」

「え?新刊出たん?買いに行こ!」

こうして、私の憧れ上司の白石さんは仕事を辞めて東京に行った。白石さんと最後にイベントを成功させると約束した私は、無事に成功させて、会社を辞めて全く異なる業種についた
白石さんのプライベートな連絡先は教えてもらったものの、連絡なんてする勇気もないので恐らく彼と会う事は二度とない