もう一つの物語
ー運命の番ー 分岐END2
「ここは……」
目を覚ますと見えたのは見慣れた我が家の寝室だった。
ゆっくりと視線を動かすと樹くんが私の右手を両手で握りしめ、祈るような姿勢でいた。
躰を動かしたことで傷のある左手首が痛む。
「痛っ!」
私の声で彼が顔を上げた。
その表情は昨夜と違い、心の底から私を心配しているようだった。
「良かった、目が覚めて」
繋がる右手をもう一度握り返し、自分の頬に当てる。
樹くんは何も言わない。だだ、私の意識が戻って安堵の表情を浮かべている。
「ごめん、なさい」
力なく謝る。
「君が、無事でいてくれるだけでいいよ」
勢いで自殺未遂までしかけたのに何も怒らない。
(ああ、また私は彼に迷惑を、心配をかけてしまったんだ)
それが逆に私自身を追い詰めてしまう。
私は樹くんの名前を呼んだ。
彼はどうしたのと聞いてくれる。
「私たちこれ以上、一緒に居てはいけないの。きっとこれからも私はあなたを悩ませ、苦しませることになるから」
そして私は一番心に引っ掛かり、悩んでいたことを話した。
「私たちがいくら“番”の関係であっても、あなたに“運命の番”の相手が現れたとき、私よりも“運命の番”の方をあなたは選ぶと思う」
本能的に惹かれ逢う、“運命の番”。
自分の母親が、父よりも“運命の番”の相手を選んだように。
そうなることを予測して、私は言った。
「だからね、私たち、《離婚》しましょう」
そこまで静かに聞いていた樹くんが目を見開いて、そして私を抱きしめた。
肩越しに彼が話す。
「たとえ俺に“運命の番”が現れたとしても一緒にはならない、俺はあなたしか愛さない。離婚は絶対にしない」
「でも、そうしないと……」
「ダメだ、別れるなんて絶対に」
お互い苦しまないで済む方法を提案したのに、樹くんは聞き入れてくれない。
悲しい別れ方をするくらいなら、今離れた方がいい。
結婚して仕事を辞めてしまったが、歯科衛生士の資格を保有しているので、働き口を見つけて働こうと思う。
蓮の親権のことなど話し合わなければならないことはたくさんあるが、私はその後の生活のことも考えていかなければならない。
離れるのなら今しかない、そう思い決断したのだが、樹くんは受け入れてくれなかった。
涙が溢れ出す。
左手には痛みがあり、もう片方は彼に繋がれている。その躰を押し返すこともできず、私は嗚咽を漏らす。
「だめ、私といると樹くんまで……不幸になってしまう。……離れ……なきゃ」
背に回された樹くんの手が優しく私の背中を撫でた。
「あなたがいてくれるだけで、何も望まない。あなたが俺の隣で、笑ってくれるだけでいいんだ。だから離れないで」
最愛の人。
そう告げた。彼もまた泣いているのだろう、声が震えている。
私は手を差し出せない代わりに泣きながら返事を返した。
「……いいの?こんな私で?これからも、あなたを悩ませる原因を作ってしまうかも……知れない」
抱きしめていた躰を離すと、樹くんは私の泣きじゃくった顔を両手で優しく包みこんだ。
彼は涙を流しながらゆっくりと笑みを浮かべる。
「その原因も、一つ、一つ解決して一緒に乗り越えて行こう。君と一緒が良いんだ。いいや、一緒じゃなきゃ意味がない、俺にとって………」
“運命の番”は君しかいない。
他にはいない。
代われる者もいない、あなた一人だよ。
そう言い、樹くんは私の唇にキスをする。
昨夜とは違う、今までで一番優しくて切ない口付けだった。
続く。
「ここは……」
目を覚ますと見えたのは見慣れた我が家の寝室だった。
ゆっくりと視線を動かすと樹くんが私の右手を両手で握りしめ、祈るような姿勢でいた。
躰を動かしたことで傷のある左手首が痛む。
「痛っ!」
私の声で彼が顔を上げた。
その表情は昨夜と違い、心の底から私を心配しているようだった。
「良かった、目が覚めて」
繋がる右手をもう一度握り返し、自分の頬に当てる。
樹くんは何も言わない。だだ、私の意識が戻って安堵の表情を浮かべている。
「ごめん、なさい」
力なく謝る。
「君が、無事でいてくれるだけでいいよ」
勢いで自殺未遂までしかけたのに何も怒らない。
(ああ、また私は彼に迷惑を、心配をかけてしまったんだ)
それが逆に私自身を追い詰めてしまう。
私は樹くんの名前を呼んだ。
彼はどうしたのと聞いてくれる。
「私たちこれ以上、一緒に居てはいけないの。きっとこれからも私はあなたを悩ませ、苦しませることになるから」
そして私は一番心に引っ掛かり、悩んでいたことを話した。
「私たちがいくら“番”の関係であっても、あなたに“運命の番”の相手が現れたとき、私よりも“運命の番”の方をあなたは選ぶと思う」
本能的に惹かれ逢う、“運命の番”。
自分の母親が、父よりも“運命の番”の相手を選んだように。
そうなることを予測して、私は言った。
「だからね、私たち、《離婚》しましょう」
そこまで静かに聞いていた樹くんが目を見開いて、そして私を抱きしめた。
肩越しに彼が話す。
「たとえ俺に“運命の番”が現れたとしても一緒にはならない、俺はあなたしか愛さない。離婚は絶対にしない」
「でも、そうしないと……」
「ダメだ、別れるなんて絶対に」
お互い苦しまないで済む方法を提案したのに、樹くんは聞き入れてくれない。
悲しい別れ方をするくらいなら、今離れた方がいい。
結婚して仕事を辞めてしまったが、歯科衛生士の資格を保有しているので、働き口を見つけて働こうと思う。
蓮の親権のことなど話し合わなければならないことはたくさんあるが、私はその後の生活のことも考えていかなければならない。
離れるのなら今しかない、そう思い決断したのだが、樹くんは受け入れてくれなかった。
涙が溢れ出す。
左手には痛みがあり、もう片方は彼に繋がれている。その躰を押し返すこともできず、私は嗚咽を漏らす。
「だめ、私といると樹くんまで……不幸になってしまう。……離れ……なきゃ」
背に回された樹くんの手が優しく私の背中を撫でた。
「あなたがいてくれるだけで、何も望まない。あなたが俺の隣で、笑ってくれるだけでいいんだ。だから離れないで」
最愛の人。
そう告げた。彼もまた泣いているのだろう、声が震えている。
私は手を差し出せない代わりに泣きながら返事を返した。
「……いいの?こんな私で?これからも、あなたを悩ませる原因を作ってしまうかも……知れない」
抱きしめていた躰を離すと、樹くんは私の泣きじゃくった顔を両手で優しく包みこんだ。
彼は涙を流しながらゆっくりと笑みを浮かべる。
「その原因も、一つ、一つ解決して一緒に乗り越えて行こう。君と一緒が良いんだ。いいや、一緒じゃなきゃ意味がない、俺にとって………」
“運命の番”は君しかいない。
他にはいない。
代われる者もいない、あなた一人だよ。
そう言い、樹くんは私の唇にキスをする。
昨夜とは違う、今までで一番優しくて切ない口付けだった。
続く。