第三章
ー来客ー
陽寄さんが我が家へ遊びに来る日が決まった。
バイトが始まる前に交流した方が良いかもと母の提案で、週末の土曜日になる。
その日は母は休みで父は仕事だった。
そして土曜日の当日。
母と伊織は、二人して兄のお友達が来ると言うことで朝から張り切って家の掃除をしたり、料理の下ごしらえに忙しくしていた。
私も手伝うと妹の鈴も協力してくれている。
残りの男3人、蓮、蒼、優たちは……
「蓮兄の同級生、もうすぐ来るんだね」
「思えば初めてかも、女の子が我が家に来るなんて」
兄の部屋で二人の弟たちは好き好きに話しを盛り上げている。
「だから、彼女にはバイト先を教えてあげただけだって」
「そもそも家(うち)でする必要があるの?」
鋭い弟の発言が飛ぶ。
「それはね、優……」
「蒼、余計なことは言わないで」
この間のメッセージのことを言いたそうだったので蓮は自分の口から優に話し出した。
「バイト先を探していたクラスの子に母さんの職場を紹介しただけだよ。一緒に働くんだったら交流した方がいいって母さんも言ってたし」
「別に母さんの職場紹介しなくてもいいんじゃない?それにバイト先教えるほど仲良いってことにもなるよね。普通、そこまでしないよね、ただの、と、も、だ、ち、なら」
確信をつく口ぶりで優は手に持った単語帳から顔を出し、兄に目を向けた。勉強熱心なのは関心だが、今やらなくてもいいのに。
「とにかく今日は歓迎会ってことだから二人とも、事を荒立てないでね」
弟たちに言い聞かせてから蓮は部屋を出て行った。
蒼がこっそり優に耳打ちする。
「あと、お弁当の交換もした仲らしい」
「そうなの」
事を荒立てないでと言われた言葉を真っ向から崩してしまうのだった。
※※※
階段を降りたところで陽寄さんからメッセージが入る。
《迷った、家どこかな?》
この辺りは住宅地なので一つ角を間違えると同じような建物が並ぶ。
《わかった、迎えに行くよ。今どの辺り?》
打ち込み送信する。
すぐに返事がきた。
《郵便局を過ぎたところの、公園にいるの》
《それじゃあ公園の入り口で待っていて》
《お世話かけます、お願いします》
返信が返ってきたのち、蓮は玄関へと向かう。
出かける際に伊織と鈴にどうしたの?と聞かれたので、彼女が迷ったみたいだから迎えに行ってくると告げ、外に出た。
※※
「お待たせ」
公園に着くと陽寄さんは安堵した表情を浮かべる。
「辿りつけないかと思った……」
早々と来たが、どの道を歩いてもなぜか公園に戻ってきてしまい、陽寄さんは迷ったことを正直に話し、お迎えを頼んだとのことだった。
「この辺り、一つ道入るの間違えちゃうとややこしいからね」
話しをしながら蓮は我が家と続く道を彼女と一緒に歩く。
今日の陽寄さんは制服と違って秋らしいブラウンニットのコーデだ。
「どうかした、一ノ瀬くん?」
「その、私服……似合ってるなぁって」
「ありがとう。家族以外に言われたことないからなんだか照れちゃう」
陽寄さんは少し頬を赤くしてお礼を言ってくれた。
この角を曲がると僕の家だとと言うと陽寄さんは『帰りも道案内お願いします』とお願いしてきたのでいいよと返事をする。
「ここが僕の家だよ。陽寄さん」
「わぁ、大きなお家」
「玄関はこっちだよ、両親と兄妹合わせて7人で住んでいるんだ」
「7人、大家族だね」
「そうかな?」
「私は兄1人の、2人兄妹だから」
「そうなの?陽寄さんお兄さんがいるんだ」
初めて知る陽寄さんの家族のこと。
玄関を開けると陽寄さんは蓮に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「今は会えないけど……」
※※※
「こんにちは、初めまして。陽寄 遥と言います。本日はお招き頂き、ありがとうございます」
丁寧なお辞儀をし、陽寄さんは中から現れた母と伊織、鈴に挨拶する。
「陽寄さんこんにちは、今日は来てくれてありがとう」
「こんにちは、妹の伊織です」
「わぁ、可愛いお姉さんだぁ」
母と伊織が挨拶を返す中、鈴は思ったことを口にする。
どうぞと母たちが彼女を中に招き入れる姿を階段の上から眺める蒼と優。
「あの人……」
蒼は何か思い出したようだ。
「どうかした?」
「たしか、校門を飛び込んだ生徒」
「校門を飛び込え……」
「優、声大きい」
むぐっと口を塞ぐ。離してと優が言うと、彼女が二人に気づいてにっこり笑った。
「こんにちは初めまして、一ノ瀬くんのご兄弟さん」
周囲を明るくする素敵な笑顔に、兄弟二人は思わず会釈をする。
「ねぇ陽寄さん、遥お姉ちゃんって呼んでいい?」
先に切り出したのは妹の鈴だった。
「うん、いいよ。えっと……」
「妹の鈴だよ、よろしくね、遥お姉ちゃん」
「鈴ちゃん、こちらこそよろしくね」
鈴が彼女の手を引き、こっちがリビングだよと連れて行く。
母も伊織も続いてリビングへと入って行った。
蓮は階段の上にいる弟たちに目を向ける。
「余計なことは絶対に言わないでよね」
もう一度念を押して弟たちに言うのだった。
続く。
陽寄さんが我が家へ遊びに来る日が決まった。
バイトが始まる前に交流した方が良いかもと母の提案で、週末の土曜日になる。
その日は母は休みで父は仕事だった。
そして土曜日の当日。
母と伊織は、二人して兄のお友達が来ると言うことで朝から張り切って家の掃除をしたり、料理の下ごしらえに忙しくしていた。
私も手伝うと妹の鈴も協力してくれている。
残りの男3人、蓮、蒼、優たちは……
「蓮兄の同級生、もうすぐ来るんだね」
「思えば初めてかも、女の子が我が家に来るなんて」
兄の部屋で二人の弟たちは好き好きに話しを盛り上げている。
「だから、彼女にはバイト先を教えてあげただけだって」
「そもそも家(うち)でする必要があるの?」
鋭い弟の発言が飛ぶ。
「それはね、優……」
「蒼、余計なことは言わないで」
この間のメッセージのことを言いたそうだったので蓮は自分の口から優に話し出した。
「バイト先を探していたクラスの子に母さんの職場を紹介しただけだよ。一緒に働くんだったら交流した方がいいって母さんも言ってたし」
「別に母さんの職場紹介しなくてもいいんじゃない?それにバイト先教えるほど仲良いってことにもなるよね。普通、そこまでしないよね、ただの、と、も、だ、ち、なら」
確信をつく口ぶりで優は手に持った単語帳から顔を出し、兄に目を向けた。勉強熱心なのは関心だが、今やらなくてもいいのに。
「とにかく今日は歓迎会ってことだから二人とも、事を荒立てないでね」
弟たちに言い聞かせてから蓮は部屋を出て行った。
蒼がこっそり優に耳打ちする。
「あと、お弁当の交換もした仲らしい」
「そうなの」
事を荒立てないでと言われた言葉を真っ向から崩してしまうのだった。
※※※
階段を降りたところで陽寄さんからメッセージが入る。
《迷った、家どこかな?》
この辺りは住宅地なので一つ角を間違えると同じような建物が並ぶ。
《わかった、迎えに行くよ。今どの辺り?》
打ち込み送信する。
すぐに返事がきた。
《郵便局を過ぎたところの、公園にいるの》
《それじゃあ公園の入り口で待っていて》
《お世話かけます、お願いします》
返信が返ってきたのち、蓮は玄関へと向かう。
出かける際に伊織と鈴にどうしたの?と聞かれたので、彼女が迷ったみたいだから迎えに行ってくると告げ、外に出た。
※※
「お待たせ」
公園に着くと陽寄さんは安堵した表情を浮かべる。
「辿りつけないかと思った……」
早々と来たが、どの道を歩いてもなぜか公園に戻ってきてしまい、陽寄さんは迷ったことを正直に話し、お迎えを頼んだとのことだった。
「この辺り、一つ道入るの間違えちゃうとややこしいからね」
話しをしながら蓮は我が家と続く道を彼女と一緒に歩く。
今日の陽寄さんは制服と違って秋らしいブラウンニットのコーデだ。
「どうかした、一ノ瀬くん?」
「その、私服……似合ってるなぁって」
「ありがとう。家族以外に言われたことないからなんだか照れちゃう」
陽寄さんは少し頬を赤くしてお礼を言ってくれた。
この角を曲がると僕の家だとと言うと陽寄さんは『帰りも道案内お願いします』とお願いしてきたのでいいよと返事をする。
「ここが僕の家だよ。陽寄さん」
「わぁ、大きなお家」
「玄関はこっちだよ、両親と兄妹合わせて7人で住んでいるんだ」
「7人、大家族だね」
「そうかな?」
「私は兄1人の、2人兄妹だから」
「そうなの?陽寄さんお兄さんがいるんだ」
初めて知る陽寄さんの家族のこと。
玄関を開けると陽寄さんは蓮に聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「今は会えないけど……」
※※※
「こんにちは、初めまして。陽寄 遥と言います。本日はお招き頂き、ありがとうございます」
丁寧なお辞儀をし、陽寄さんは中から現れた母と伊織、鈴に挨拶する。
「陽寄さんこんにちは、今日は来てくれてありがとう」
「こんにちは、妹の伊織です」
「わぁ、可愛いお姉さんだぁ」
母と伊織が挨拶を返す中、鈴は思ったことを口にする。
どうぞと母たちが彼女を中に招き入れる姿を階段の上から眺める蒼と優。
「あの人……」
蒼は何か思い出したようだ。
「どうかした?」
「たしか、校門を飛び込んだ生徒」
「校門を飛び込え……」
「優、声大きい」
むぐっと口を塞ぐ。離してと優が言うと、彼女が二人に気づいてにっこり笑った。
「こんにちは初めまして、一ノ瀬くんのご兄弟さん」
周囲を明るくする素敵な笑顔に、兄弟二人は思わず会釈をする。
「ねぇ陽寄さん、遥お姉ちゃんって呼んでいい?」
先に切り出したのは妹の鈴だった。
「うん、いいよ。えっと……」
「妹の鈴だよ、よろしくね、遥お姉ちゃん」
「鈴ちゃん、こちらこそよろしくね」
鈴が彼女の手を引き、こっちがリビングだよと連れて行く。
母も伊織も続いてリビングへと入って行った。
蓮は階段の上にいる弟たちに目を向ける。
「余計なことは絶対に言わないでよね」
もう一度念を押して弟たちに言うのだった。
続く。