第三章

ー悩み事ー 




学校から帰宅後、お弁当のお礼を妹に伝えようと思ったが伊織はまだ帰っていなかった。
仕事休みの母親が蓮を迎え入れてくる。

「おかえり、蓮」
「ただいま、母さん。伊織はまだ帰っていないのかな?」
「伊織は学校の帰りに買い物してくるって。お父さんの車に乗せて帰ってもらうって今朝、言ってたの」

父の仕事場から帰宅途中に伊織の学校がある。
今日は早上がりなので妹を乗せて買い物もしてきてくれるようだ。

「そうなんだ。あのさ……母さん」
「どうしたの?」


ーそれは恋だー
ー好きになったってことだよー


龍真の言葉を思い出し、母親に尋ねてみようとした。
しかしそこで弟の優と鈴が帰宅して来る。

「ただいま〜」
「ただいま、母さん」
「おかえり、鈴、優」

二人を出迎えたあと、母は蓮に話したいことがあったのではと聞いてくれたが首を振った。

「なんでもないよ、部屋に行くね」
「そう、何か悩み事があるなら遠慮なく相談してね」

もちろんお父さんにも、みんなにもねと母親は話す。
頷き蓮は階段を上がった。
優は何か勘づいたようだが、鈴が《今日のおやつは何かな》とウキウキしながら台所へ行きかけたので《手洗い、うがいが先だよ、鈴》と注意をしている。

部屋に戻ったあと、蓮は一人悩む。

好きになるなんて初めてのことだった。

そもそも《好き》なのか、この気持ちが表すものは。
ベッドに横になって天井を見上げる。
思えば中学生くらいから女の子に声をかけられることが多くなってきた。
それは高校に入るとさらに増していく。
それが異性に対するものだと知ったのはもう少し後だったが。
中学時代、友人の龍真が後輩の女の子に告白されたと聞いたときは驚いたものの、あまり興味が湧かなかった。
龍真はその子と付き合っていたみたいだが、半年くらいして別れたらしい。
別れた理由は聞かなかったけれど。
高校に入学後も龍真は何度か告白を受けたみたいだが断っているらしい。
友達の恋愛相談にのれる程蓮は経験をしていないなので力になれずにいた。
しかし今、恋愛初心者の自分に龍真が先輩となりそうだ。

(明日は土曜日、たしか龍真は土日、バイトをしていたような……)

そこで陽寄さんが本日バイト面接に行ったことを思い出す。

「面接、どうだったんだろう?」

聞こうにも連絡手段がない。電話番号くらい聞いておけばよかったかなと思っていたら、下の階から妹が呼ぶ。

「蓮兄、おやつ食べないの?今日はバームクーヘンだよ」
「いらない。食べていいよ、鈴」
「ほんとに!じゃあいただきます!」
「太るよ」
「優、デリカシーない!」
「事実を述べただけだよ」

リビングで兄妹が言い合いしているみたいだけれど、蓮はそのままベットで寝返りをうった。


「こんな感情、知らない」


考えれば考える程自分の気持ちがわからなくなり、蓮は悩みながら過ごすのだった。















続く。
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