第三章


午後からの授業も引き続き蓮が教科書を見せて過ごし、体育の時間は隣のクラスの子に体操着を借りて陽寄さんは授業を受けていた。
男子と女子とでは授業の内容が違うようで蓮たち男子はグラウンドで、陽寄さんたち女子は体育館でそれぞれ行っていた。
登校時、インパクトある飛び越えを行った彼女は体育の授業でも活発なのかなと思いながらグラウンドを走る。
隣に並走して龍真が話しかけてきた。

「なに考えてんの?」
「なんでもないよ」
「もしかして陽寄さんのこと?」
「……っ!」

心でも読まれたのかと龍真を思わず見返してしまう。

「図星って感じだな」
「違うよ、そんなんじゃ……」
「そこの二人!無駄話ししてないで走れ!」

体育担当の先生に注意を受けてしまい、その話しはなしになった。
龍真は『また帰り話そう』と言い、蓮を追い抜いて行く。
友人の背を追いかけながら蓮は今の気持ちを不思議に思うのだった。




        ※※※

下校時間となり、蓮は隣の席にいる陽寄さんに声をかけた。

「陽寄さん、転入初日から大変だったね」
「こちらこそ!教科書も見せてもらって、おまけに美味しいお弁当のおかずまで頂いちゃって」

本当にありがとうとお礼を言ってくれた。そして慌ただしく荷物を鞄に詰め込んでいる。
どうしたのと聞いてみたら、これからバイトの面接らしい。

「受かる自身ないけど、行ってみなきゃ。お金、いるし」
「そっか、気をつけてね」
「ありがとう、それじゃあ」

手を振って去っていく彼女に同じように手を振り見送る。
可愛いな、陽寄さんはと思っていたら目の前に龍真の顔があった。

「顔、にやけてるぞ」
「え、あ……何?」

一歩後ずさると、龍真がふふふと笑う。

「蓮、これって恋じゃねぇ?」
「恋?」

17年間使うことがなかった言葉を口にしてみる。

「そう、好きになったってことだよ」

まさかと蓮は龍真に言い返したが、自分でもよくわからなかった。


好き、恋……





蓮の恋心が動き出した瞬間だった。












続く。
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