第二章 本編

対峙 樹side


料亭に着くと樹たち4人は蓮を探しにフロントへと急ぐ。車内で話し合い、蒼と龍真が蓮を探し、樹たち夫婦は祖父と話し合うため二手に別れることになった。

父親と話し合うことなんてできないが。
それでも大切な我が子を攫われ、何もなかったことになんてできなかった。

「蒼、蓮を頼む」
「分かった」

蒼と一緒に龍真が料亭の奥にかけて行った。
フロントにて祖父の居所を聞くと、階段を駆け上がる。彼女も一緒について来てくれている。
上りきると奥に向かって左右に二つずつドアが並ぶ。その奥に両開きの重厚そうな扉があった。
間違いない、ここにいる。
そう感じた樹は迷いなくその扉を開く。
その先には見間違うはずもない人物がいた。

「……やっぱりここだった」

振り返った相手は冷徹な笑みをその顔に宿らせていた。

「来たか、直接会うのは17年ぶりだね」

17年前、蓮が産まれた日に会ったきり、父親とは会っていない。会いたくなかったのが本音だ。

「お義父さん……」

彼女が話すと父親はその表情を曇らせる。

「あなたにお義父さんと呼ばれる筋合いはない。……まぁ、蓮を産み落としてくれたことには、感謝するが」

感情のこもらない声が、彼女を傷つけていると思うと苛立つ。
そして何より、彼女を‘モノ’扱いしていることが許せなかった。
樹は彼女を背に庇い、本題に入る。

「回りくどいことは聞かない。蓮はどこだ?蓮は俺たちの子だ」
「そして私の孫でもある」

ふははと笑う声が嫌に部屋に響く。
父親は笑いを止めて真顔になった。

「蓮は私の決めたΩとめでたく番になっているころだ」
「……っ!」

声にならない怒りが身体中から溢れ、相手を殴ってやりたい衝動にかられる。

「ダメ!樹くん!!」

止めたのは彼女だった。
怒りで震える手を彼女が両手で包み込んでくれている。

一番辛いのは彼女なのに。

ゆっくりと落ち着かせていく。
そうだ、心を乱れさせてはいけない、冷静に対処しなければ。
彼女の手を握り返し、樹は父親に立ち向かう。

「蓮は、どこに……」


ジリリリッ!

突然、けたたましく鳴る音が聞こえる。

これは火災を知らせる警報機の音だ。


建物全体に火事を知らせる音声と避難指示を出す従業員の声が聞こえる。

祖父が驚いた表情で樹たちの横を通り抜ける。

「一体なにがあったんだ?火災?そんなどこから……」

我に返った樹たちも走り出す。

「早く、蓮の元へ行こう」

おそらく、蒼たちが見つけてくれていると思うが、この目で姿を見なければ安心できない。
彼女の手をとり、二人は部屋を出た。


父親との話し合いは、やはり不可能なんだと思いながら。



    
続く。


































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