第二章 本編


出されたお茶に何か入れられていた?!

気がついたときには遅かったが、とにかくこの場所を離れなければと思った。
足元がおぼつかないまま、壁つたいにフラフラとこの部屋の出入り口のドアに向かう。

「な、なんだよ……これ……っ」

身体の中から熱い、何かが溢れ出てくるような感覚に息がどんどん上がってくる。
これは弟とどちらがより点数を取れるかしたバスケ試合よりきついと感じた。
とにかく早くこの部屋から出ないと、大変なことになるかも知れない。
その思いから力を振り絞って、ドアの前に辿りついた。額から汗が流れ落ちる。
すると開けていないのにドアが開いた。
その瞬間、蓮は息を呑む。

ドアの向こうには、祖父とその横には見知らぬ女性が居た。

ドクン!と
鼓動が跳ね上がった。

(ヤバい、これはほんとにヤバいやつかも)


「蓮、αの本能を呼び覚まされる感覚はどうだ?それを治めるに必要なことを行なってもらう」

「な、なにを……」

荒い息を吐き出すと、目の前がチカチカしてきた。背中から汗が噴き出る感覚。
これはいよいよ危険だ。
しかし目の前の孫に、道具としか見ていない祖父の冷たい視線を感じた。

「彼女はお前の番となる選ばれたΩだ。蓮、お前は今ここで番行為を行なってもらう」

たとえ学生だろうと、一度交わしてしまえば、番にしてしまえばどうしようもない。

とんでもない祖父を持ったのだと、改めて父のことを哀れに思ってしまう。

苦しいけど、目の前の彼女が欲しい。楽になりたい。

これがαの発情《ラット》状態なのだと、蓮は記憶の中に刻み込んだ。











        ※※※
《幕間》


今日、お会いする私の伴侶。
一ノ瀬家から選ばれた優秀な彼は、まだ高校生らしい。
実際に会うのは初めてだけれど、写真を見せられたとき、かっこ良くてすごく嬉しかった。
名前は 蓮 というらしい。

私より三つ下でまだ少し幼さが残る表情をしているけれど、とてもしっかりしていると聞かされている。
料亭の一室で待っていると彼のお祖父様、一ノ瀬の当主が私を呼びに来て下さった。

「長い時間待たせてすまなかったね。ようやく会わせることができる」

私は椅子から立ち上がり深々と礼をした。

「こちらこそ、このような機会を設けてくださり、ありがとうごさいます。Ωの私を見つけて下さり、援助していただけるだけで充分ですのに」
「あなたには良き縁を感じている。その証拠に孫の伴侶となることを了承してくれた」
「そんな、今でも私にはもったいないくらいです」

写真の中の彼を思い出し顔を赤らめる。
壁にかけられた時計に目をやると当主は彼女の手を引いた。

「それでは行こうか、孫の、蓮のいる部屋へ」
「はい」

私は生身の彼に会う緊張感とその先に進む覚悟をして部屋を後にしました。








続く。





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