二人の甘い時間
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ー代わりはいないー
昨夜の大雨が嘘のように本日は晴れ渡り、久しぶりに歩いて買い物に行こうと私は樹くんに提案してみた。
確かに車だと運動不足になるし、ちょうどいいねと二人してショッピングセンターに行くことになった。
この後大変な事態に巻き込まれるなんて私は思いもしなかった。
到着後、しばらく雑貨売り場や家具店などの生活用品を見て、これ今度リビングに置こうかな?なんて彼と話していたら、あっという間にお昼時になる。
「ねえ、お昼食べたら、食料品買ってゆっくり家に帰らない?」
「そうだね、今日は車じゃないから暗くなる前に帰ろう」
ショッピングセンター内のレストランで私たちは食事をした。
その後約束通り食品売り場で野菜や、卵、魚などを購入しお会計を済ませる。
柱にある時計を見ると、15時を回っていた。
そろそろ帰ろうと樹くんは私の買い物袋を持ち、空いた方の手を私に差し出してきた。
これは手を繋いで帰ろうの合図だ。
私は出された手に自分の手を重ね、しっかりと繋いでショッピングセンターを出る。
来た道を二人して歩く。
のどかな時間が流れていく、こんな情景が私は好きだなと思う。
大好きな彼と一緒になれて、結婚までは長い道のりだったけれど、何もかも吹き飛ばすくらい今がとっても幸せなのだ。
ぎゅっと繋いだ手に力を込める。
樹くんがどうしたの?と私に聞いてくるので、なんでもないよと笑ってごまかす。
そう、と彼は言ったが、なんとなくわかっているようだった。
幸せな時間が二人の間を流れていく。
帰宅途中、樹くんの電話が鳴る。
買い物袋を持っているので私は彼から手を離した。
スマホの画面を見て、『ごめん、仕事場からだ』と言い、少し離れたところで彼が電話に出る。
その光景を見ているとどこかで(助けて)と言う声が聞こえてきた。
「どこから聞こえてくるのかな?」
私は耳を済ませながら数歩先の河川敷まで足を運んでみた。
昨日大雨だったせいか川の水嵩が増えている。
何気なく川の淵に目を向けたそのとき、
「た、たすけて〜」
小学生くらいの男の子が川に落ちて流されているのを目にする。
「溺れてる!助けなきゃ!」
私は咄嗟に駆け、昨夜の雨で濡れた草の上を慎重に降りていく。
男の子はかろうじて淵にある水草に掴まっているようだ。
「君、大丈夫!?今、助けるからね」
「お姉ちゃん、わぁぁん、たすけてー!」
「落ち着いて、大丈夫だから」
自分の声が届き安心したのか男の子はさらに泣き出してしまう。彼を落ち着かせながら私はゆっくり男の子に近づく。
足元が濡れて歩きにくい。
スニーカーならまだしも今日はお出かけ日だったので履いてきていない。
それでも男の子を助けたい一心で私は近くの木の枝に掴まり手を差し出す。
「ほら、掴んで」
「わーん、こわくて、できないよ」
「頑張って、大丈夫」
そこに私の姿が見えないのに気がついた樹くんが走って来る。
「何やって……っ!?」
状況を見て察したのか、彼は私の横から男の子に手を差し出した。
「ほら、大丈夫だ、掴まって」
男の子はゆっくりと樹くんの手を掴んだ。
やはり男性の方が力が強い。
あっという間に男の子は川から上がることができた。
男の子は咳き込んでいたが大丈夫そうだ。ボールを落として取りにきた際に、誤って落ちてしまったようだ。
「良かった、助かって」
ホッとし、私は後ろに下がる。
「あ……」
ぬかるんだ土味に足が取られ、身体が水面に向かって吸い込まれるように落ちていく。
スローモーションのような出来事のあと、私は水の中に落ちた。
落ちた拍子に水を飲んでしまう。
「かっ……はっ」
増水の為か川底に足がつかない。
慌てると余計に水草が足に絡まってしまう。なんとか水面に顔を出すと、樹くんと男の子が緊迫した状態で私の名前を呼んでいるのが聞こえた。
特に樹くんは必死だ。
ショッピングの帰りだったので足が疲れていたのだろう、しかも水草も絡まって上手く動けない。
(ああ、私はこのまま溺れて死んじゃうのね)
段々と意識が遠くなっていく。
最後に人助けできたから、良かったかなと思う。
彼にお別れの言葉を言えなかったのが心残りだが。
その時、誰かが川に飛び込む音が聞こえた気がした。
誰かが塞いでいる。
私の口を。
苦しい。
胸を押さている感覚がある。
痛いからやめて。
私は薄れゆく意識の中、そんなことを思っていた。
※※※
「う……ん」
目を開けると白い天井が見えた。
天国かなと思ったら、一番先に樹くんの顔が見えた。
「気がついた!良かった、良かったよ……」
泣きそうな表情で私を見ている彼。
私は開口一番に聞く。
「ここ、て、んごく?」
樹くんが大きく目を見開いてベットに横たわる私の身体を抱きしめてきた。
ここにいる、存在していると言い聞かせるように。
「川で溺れたけど、生きてるよ」
「川……」
そうか私、男の子を助けようとして……
でも結局樹くんが助けたんだけど。
「あの子は?」
「大丈夫、君が気づいてくれたから助かったよ。お礼を言っていた」
「そう、よかっ……た」
その後、樹くんが川に飛び込み私を助け出し、人工呼吸をしてくれたことを救急のドクターから教えられた。
素早く対応できるのは、さすが医者の彼だ。
唇塞がれてたの、樹くんの口で人工呼吸してくれていたからなんだ。
納得のいく頷きをした後、私は彼の方を見上げた。
救急の先生はもういない。脳波にも異常がないので、落ち着いたら帰っても良いと言ってくれたので今、この空間に彼と二人きりだ。
「ねぇ、こんな無茶なこと、もう絶対にしないで」
樹くんがいつになく真剣な眼差しで私に話す。
「君がいなくなると思うと、心臓が止まるかと思った」
私と樹くんは《運命の番》だ。
その片割れが失われるということは、何者にも代えがたい悲しみを得てしまうと言うこと。
代わりはいないのだ。
私は手を差し出し、掌で彼の頬に触れる。
「ごめん、むちゃ、しないようにする」
そしてもう一度ごめんと謝った。
樹くんは目を閉じて私の手の温もりを感じている。
ところで、買い物袋は?
あ、川のところに置いてきてしまったような……
仕方ないか、また一緒に買い物行こう。
END.
昨夜の大雨が嘘のように本日は晴れ渡り、久しぶりに歩いて買い物に行こうと私は樹くんに提案してみた。
確かに車だと運動不足になるし、ちょうどいいねと二人してショッピングセンターに行くことになった。
この後大変な事態に巻き込まれるなんて私は思いもしなかった。
到着後、しばらく雑貨売り場や家具店などの生活用品を見て、これ今度リビングに置こうかな?なんて彼と話していたら、あっという間にお昼時になる。
「ねえ、お昼食べたら、食料品買ってゆっくり家に帰らない?」
「そうだね、今日は車じゃないから暗くなる前に帰ろう」
ショッピングセンター内のレストランで私たちは食事をした。
その後約束通り食品売り場で野菜や、卵、魚などを購入しお会計を済ませる。
柱にある時計を見ると、15時を回っていた。
そろそろ帰ろうと樹くんは私の買い物袋を持ち、空いた方の手を私に差し出してきた。
これは手を繋いで帰ろうの合図だ。
私は出された手に自分の手を重ね、しっかりと繋いでショッピングセンターを出る。
来た道を二人して歩く。
のどかな時間が流れていく、こんな情景が私は好きだなと思う。
大好きな彼と一緒になれて、結婚までは長い道のりだったけれど、何もかも吹き飛ばすくらい今がとっても幸せなのだ。
ぎゅっと繋いだ手に力を込める。
樹くんがどうしたの?と私に聞いてくるので、なんでもないよと笑ってごまかす。
そう、と彼は言ったが、なんとなくわかっているようだった。
幸せな時間が二人の間を流れていく。
帰宅途中、樹くんの電話が鳴る。
買い物袋を持っているので私は彼から手を離した。
スマホの画面を見て、『ごめん、仕事場からだ』と言い、少し離れたところで彼が電話に出る。
その光景を見ているとどこかで(助けて)と言う声が聞こえてきた。
「どこから聞こえてくるのかな?」
私は耳を済ませながら数歩先の河川敷まで足を運んでみた。
昨日大雨だったせいか川の水嵩が増えている。
何気なく川の淵に目を向けたそのとき、
「た、たすけて〜」
小学生くらいの男の子が川に落ちて流されているのを目にする。
「溺れてる!助けなきゃ!」
私は咄嗟に駆け、昨夜の雨で濡れた草の上を慎重に降りていく。
男の子はかろうじて淵にある水草に掴まっているようだ。
「君、大丈夫!?今、助けるからね」
「お姉ちゃん、わぁぁん、たすけてー!」
「落ち着いて、大丈夫だから」
自分の声が届き安心したのか男の子はさらに泣き出してしまう。彼を落ち着かせながら私はゆっくり男の子に近づく。
足元が濡れて歩きにくい。
スニーカーならまだしも今日はお出かけ日だったので履いてきていない。
それでも男の子を助けたい一心で私は近くの木の枝に掴まり手を差し出す。
「ほら、掴んで」
「わーん、こわくて、できないよ」
「頑張って、大丈夫」
そこに私の姿が見えないのに気がついた樹くんが走って来る。
「何やって……っ!?」
状況を見て察したのか、彼は私の横から男の子に手を差し出した。
「ほら、大丈夫だ、掴まって」
男の子はゆっくりと樹くんの手を掴んだ。
やはり男性の方が力が強い。
あっという間に男の子は川から上がることができた。
男の子は咳き込んでいたが大丈夫そうだ。ボールを落として取りにきた際に、誤って落ちてしまったようだ。
「良かった、助かって」
ホッとし、私は後ろに下がる。
「あ……」
ぬかるんだ土味に足が取られ、身体が水面に向かって吸い込まれるように落ちていく。
スローモーションのような出来事のあと、私は水の中に落ちた。
落ちた拍子に水を飲んでしまう。
「かっ……はっ」
増水の為か川底に足がつかない。
慌てると余計に水草が足に絡まってしまう。なんとか水面に顔を出すと、樹くんと男の子が緊迫した状態で私の名前を呼んでいるのが聞こえた。
特に樹くんは必死だ。
ショッピングの帰りだったので足が疲れていたのだろう、しかも水草も絡まって上手く動けない。
(ああ、私はこのまま溺れて死んじゃうのね)
段々と意識が遠くなっていく。
最後に人助けできたから、良かったかなと思う。
彼にお別れの言葉を言えなかったのが心残りだが。
その時、誰かが川に飛び込む音が聞こえた気がした。
誰かが塞いでいる。
私の口を。
苦しい。
胸を押さている感覚がある。
痛いからやめて。
私は薄れゆく意識の中、そんなことを思っていた。
※※※
「う……ん」
目を開けると白い天井が見えた。
天国かなと思ったら、一番先に樹くんの顔が見えた。
「気がついた!良かった、良かったよ……」
泣きそうな表情で私を見ている彼。
私は開口一番に聞く。
「ここ、て、んごく?」
樹くんが大きく目を見開いてベットに横たわる私の身体を抱きしめてきた。
ここにいる、存在していると言い聞かせるように。
「川で溺れたけど、生きてるよ」
「川……」
そうか私、男の子を助けようとして……
でも結局樹くんが助けたんだけど。
「あの子は?」
「大丈夫、君が気づいてくれたから助かったよ。お礼を言っていた」
「そう、よかっ……た」
その後、樹くんが川に飛び込み私を助け出し、人工呼吸をしてくれたことを救急のドクターから教えられた。
素早く対応できるのは、さすが医者の彼だ。
唇塞がれてたの、樹くんの口で人工呼吸してくれていたからなんだ。
納得のいく頷きをした後、私は彼の方を見上げた。
救急の先生はもういない。脳波にも異常がないので、落ち着いたら帰っても良いと言ってくれたので今、この空間に彼と二人きりだ。
「ねぇ、こんな無茶なこと、もう絶対にしないで」
樹くんがいつになく真剣な眼差しで私に話す。
「君がいなくなると思うと、心臓が止まるかと思った」
私と樹くんは《運命の番》だ。
その片割れが失われるということは、何者にも代えがたい悲しみを得てしまうと言うこと。
代わりはいないのだ。
私は手を差し出し、掌で彼の頬に触れる。
「ごめん、むちゃ、しないようにする」
そしてもう一度ごめんと謝った。
樹くんは目を閉じて私の手の温もりを感じている。
ところで、買い物袋は?
あ、川のところに置いてきてしまったような……
仕方ないか、また一緒に買い物行こう。
END.