二人の甘い時間
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「いたたた……」
仕事から帰って来るなり彼女はそんなことを言い出した。
立ち仕事だから仕方ないのだが、今日はいつもと違うようだ。
「どうしたの?」
玄関に腰を降ろしていた彼女がよいしょと立ち上がり腰をさすりながら入ってきた。
「今日、仕事場で届いた荷物を棚に載せるときに無理しちゃったみたいで」
「大丈夫!?鞄持つよ」
彼女のもとへ急ぎ介抱する。
大丈夫だからと言いながら腰をさする姿を見ると、とても放ってはおけない。
「横になった方がいいかもね、安静にしないと、このまま寝室に行く?」
「ん……仕事で疲れているけど、お風呂だけは入りたい」
「じゃあ、一緒に入る?」
「うん。……え、や、それはやめておこうかなぁ……」
テンポ良く返事をしてしてしまい、それは良くないことに気づいたのか断りを入れてくる。
せっかくのチャンスが。
結婚して一月程経つが、彼女はお風呂へ一緒に入ることにはまだ抵抗があるようだ。
「ゆっくりなら入れるから」
痛む腰をさすりながら、横歩きで廊下を移動していく。
「でも痛いんでしょ?」
すかさず先回りし、彼女の顔を覗き込む。
「……じゃあ、シャワーにする」
彼女は視線を逸らして一人でも入れる方法を提案してきた。
これなら一緒に入らなくても困らないだろうと思ったのだろう。
どうだ、とでも言うように見上げる彼女に不満そうな表情をしてみせた。
「ほんとに大丈夫だから!」
少し強めに言い返してくると、彼女は脱衣所へとその身を滑り込ませてしまった。
※※※
さて、脱衣所まで来たのは良いがこの空間に椅子はない。
座りながらなら脱ぎ着できそうだが、立ったままだと痛みがあって、屈む動作が特に辛い。
「仕方ない、ゆっくり脱ぐしかないか……」
私は痛みに耐えながら衣服を脱ぎ始めた。
いつもより時間はかかったが、なんとか脱ぐことができ、浴室に入る。
お風呂に入ることを樹くんが予測してくれていたのだろう、バスタブにはお湯が張られていた。
湯気で温かい空間ができ、洗い場も寒くなかった。
「よいしょっと」
浴室内には椅子がある。
私はそれに座るとお湯の温度を確かめてシャワーへと切り替える。
頭にシャワーのお湯をかけて、シャンプーで洗い出す。
働いた後のお風呂は少し面倒な気もするが汗も流したいし、何より洗うとさっぱりする。
シャワーを出し、髪を洗い流すとバスタブ縁に置いたと思われるものを手探りで探す。
そして気がついた。
「タオル……忘れた」
脱ぐことに集中していて、よく考えるとタオルの存在を忘れていたのだ。
洗い流した髪を拭かないと風邪を引いてしまうかも知れない、そして運悪く今日はバスタブに浸かれない。
「はぁ、どうしょう……」
立ちあがろうとした瞬間、痛みが走る。
「痛っ!やだ立てない、痛い」
なんと椅子から立ち上がれなくなってしまったのだ。
踏ん張ると腰に痛みが走り、身動きできなくなってしまう。
「タオル忘れるし、痛いし、もう嫌!」
己の段取りの悪さに嫌気がさして投げやりになる。
そして思う。
「このまま、お風呂で過ごさないといけないのかな……」
ー腰痛で立ち上がれず、数日経って発見されましたー
(ニュースで報道とかされたらどうしよう。
恥ずかしいを通り越して笑い者になるかも)
事件になる想像をして泣きそうになる。
「だ、だれか助けて……」
声が震えて上手く出せない。
気づいてもらえない不安が一気に溢れ出る。
「だれか……きて」
目から涙が溢れ落ちそうになる。
「やっぱり、一人じゃ無理でしょ?」
脱衣所へと続く扉が開き、樹くんが入ってきた。
そこで気がつく。
「あ、そっか、私一人暮らしじゃなかった」
一月前に入籍していて、彼と住んでいるのだ。
動けない怖さから忘れてしまっていた。
左手薬指に結婚指輪もつけているのに。
「ごめんなさい、一人暮らしの感覚がまだ抜けてなくて」
「もう一月経つんだからそろそろ自覚してね」
そこで裸のまま、会話をしていることに気づく。
「と、とりあえずタオルください」
彼に背を向けた状態で必要な物を要求する。
これ以上見られたくない。
お風呂意外では散々見られているのだから、今更な感じもするがやはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
普通に会話をしてくる樹くんは平気なのだろうか?
振り向く勇気がなく、後ろ手でタオルを渡してもらえるのを待つ。
しかし、いくら待ってもタオルは渡されない。
「あの、タオルくだ……」
「お待たせ」
タオルじゃなくて身体に、背中に温かいものを感じる。
タオルは生地だ、温かいはずはない。
「あの……タオル」
「腰、痛いんでしょ。洗ってあげる」
「ひゃ……」
反響する浴室内、しかも耳元で話されると色っぽさが増す。樹くんのこの声に私は弱く、身体が震える。
髪を拭き終わると樹くんはボディソープを泡立てて身体を洗ってくれた。
普通に、介抱してくれているんだと思いたい。でも、なんだか背中を洗う手つきが怪しく感じる。
「振り向くの痛そうだから後ろから洗うね」
泡のついたスポンジを前に持ってくる。
「大丈夫、自分で洗うから。どうもありがとう」
スポンジを受け取ろうとしたが、そのまま泡のついた手で腹部、おへそ辺りを撫でられる。
「ふっ」
「どうしたの?」
意地悪な声が聞こえる。
振り返って文句の一つでも言おうとしたら、スポンジを使わずそのまま直接肌に触れてきた。
「前はデリケートだから、スポンジだと傷つくといけないから手で洗うね」
「やぁ、もういい、泡、流して、はやく」
声が出てしまう。
手つきがいやらしく胸の頂に触れる。
びくりと身体が反応する。
何度も同じ場所を往復されると、感じてしまう。
「や、ちょ、もう、ああ」
触れられてしまうと声が出る。
「どうしたの、そんな声だして」
分かっているくせに、確信犯な樹くん。
どうにか顔だけを彼に向けて睨みつける。
楽しそうに私の身体を洗う姿に、樹くんは悦に浸っているようだ。
こんな恥ずかしいコト、他の誰にも見せてはいけないし、させてはいけないよとでも言うように。
樹くんの支配欲が全面的に出ている。
浴室内に彼を誘う、やらしくて甘い声が響く。
「も、もう胸は、終わり、お風呂あがるっ」
途切れ途切れに声を絞り出すと、ようやく手が離れていった。
ほっとしたのも束の間で。
「大事なところを洗うのを忘れていたよ」
「へ……」
椅子に座る私の足の付け根へと樹くんの手が近づく。
「ここ、綺麗にしないと……」
「や、そこは……」
静止の手も間に合わず、一番大切な場所を触れられる。
泡で濡れているのか、水音が響く。
「泡、だけじゃないよね」
はぁはぁと蒸気した身体を揺らしながらだんまりを決める。
「ねえ、ど、う、し、て」
またもや耳元で囁く。
しかも今度は耳朶まて甘噛みしてきた。
「ひゃん」
声が漏れる。
触れるか触れないかのところで寸止めされており、口元を抑えないと声が出てしまう。
「話してくれたら、やめていいよ」
「はな、はなせな……」
もう少しで気持ちよくなれる……
だめだと思う自分と、その先をして欲しいという二つの心に振り回されていた。
長時間お風呂に入ったわけではないのに、クラクラしてくる。
「のぼせそう?残念。じゃあ出ようか」
腰を支えてゆっくりと身体を立ち上がらせてくれる。
フルフルと太腿が揺れる。
痛みからではない、寸止めで終えてしまったからだ。
「泡、流すから」
良い湯加減のシャワーを肩から流していく。
背中、胸、足、そして。
「そこ、は自分で流す……から」
「ついでに流してしまうよ、ほら」
シャワーの勢いがかかる。
「……っ!」
「ふふ、どうしたの」
「シャワー……やめて」
「きれいに流さないと」
「もう、いいから」
彼の持っているシャワーをとろうとした。
しかし私より彼の方が背が高い。そして自分が腰を痛めていることに気づき顔をしかめる。
「いっ!」
「大丈夫!?」
樹くんが表情を変えて身体を支えてくれる。
「……いたい、もう出る」
とんと彼を押し、浴室を出ていく。
「着替え、助けようか?」
「結構です」
冷たく言い放って、どうにかパジャマに着替える。
そのまま痛む腰をさすりながら寝室にいき、ベットへ横になる。
(もう知らない、樹くんのことなんて!)
遠くで彼がシャワーを浴びて浴室から出てくる音が聞こえたが、無視して寝たふりをした。
※※※
「ごめん、ちょっと意地悪しすぎた」
でも彼女は怒っているようで返事を返してくれない。
それどころか違うところで寝ようと動き出した為、それを察知して彼女を抱きしめた。
「本当にごめん。君のこと好きすぎてつい、独占欲が勝っちゃった」
謝っているのかいないのかわからない、独占欲っていつもそんなに欲が出ているの?と聞かれたら、自分を抑えられない気がした。なので彼女が聞いてこなくてホッとする。
「……もう怒ってないよ。腰痛いから寝るね」
そのあとも樹は湿布貼る?とか、急激な痛みにはマッサージはよくないからなどと、甲斐甲斐しく妻の世話を焼いてくれた。
次の日、痛みがマシになった彼女は仕事へと向かって行った。
※※
一生懸命介抱してくれたから、今夜は樹くんにサービスしてあげようかなと思う。
メールで
《今夜は大丈夫、夜楽しみにしてる♪》
そう送った。
すぐに返事がきた。
電話で。
メール打つのも、もどかしかったのかな?
「もしもし」
「夜、楽しみにしてるってその……」
「昨日のお礼、ちゃんとお返しします」
何でとは言わずとも分かっている。
電話の向こうで喜んでいる彼の姿が想像できる。
「それじゃあ、また夕方に」
「うん、それじゃあ!」
電話を切る。
さて、今夜はどんなサービスを樹くんに振る舞おうか。
楽しみである。
end