天命は巡り逢う 第三章


翌日の放課後、遥華と蓮は校門前で待ち合わせし、二人して歩く。
学校内での話題を話しながら帰り道にある公園に立ち寄った。
いつ雪がちらついてもおかしくないほど外気は冷たく、時折『寒いね』と遥華は自身の手に息をかけて温める。
日が沈むのも早くなり、公園に着いたときには辺りはだいぶ薄暗くなっていた。
ベンチに腰をかけ、どう話しを切り出そうかと迷っていたら名前を呼ばれたので、遥華は蓮の方へ身体を向けた。

「陽寄さん、そう言えば……」

抑制剤の件だと遥華は身構える。
しかし遥華の思いとは違い、蓮の話しの内容はバイトに関するものだった。

「母さんが心配してたよ。ご家庭の事情なら仕方ないけど、来れるようになったら連絡してねって」

バイト先のみんなも早く助けに来て欲しいと嘆いていることも教えてくれた。

「みんなが……」

知り合ってまだ日が浅いというのにこんなに必要とされるなんて、遥華は今までの人生の中で味わったことがなかった。
それに、と蓮は言葉を続ける。

「妹がさ、陽寄さんは今度いつ来るのかな?料理の腕をもっと磨いてあげたいから、その……時間とれたら……って、家の事情で無理だよね」
「っ!」

照れ臭そうに頬を掻く姿に、遥華は胸の奥が熱くなる。

この気持ちはなんだろう?

また一つ、知らなかった感情が増える。

「陽寄さん?」

彼が遥華の顔を覗き込むようにして名前を呼ぶ。

「そ、そっかあ、伊織ちゃんがね」

動揺して声が上ずる。

「うん、それと下の妹の鈴も」

《遥華お姉ちゃんの料理の出来栄えと味見は任せて》と言っていたらしい。
数ヶ月前に知り合い、何度かお邪魔させてもらった一ノ瀬家のご家庭。
両親、兄妹共に優しくて思いやりのある人たちばかりだ。

(私の家族とは違いすぎて、眩しいな)

眩しすぎて、羨ましすぎて、そしてなにより家族全員がお互いに支え合って暮らしている。

調査による家庭状況で、蓮の両親たちの複雑な関係が成り立って今の彼らがいること。

遥華はそんな蓮たちを巻き込みたくないと心から願っていた。

けれど遥華の《NB》としての正体がバレた以上、陽寄家へと赴かない限り、蓮や彼の家族によからぬことを消し掛ける可能性が高い。

ー遥華姉さんが自分からこちら側に来てくれるよう、祈ってるー

翔の言葉が蘇る。
一族は遥華のサンプル用血液を手にしている。
これが何を意味するのか、彼女はよく理解していた。

目の前にいる蓮や彼の家族たちを守るため。
そして今後、自身の血を誰にも触れさせないためにも、遥華はより一層、決意を固めたようにして隣に座る蓮に目を向ける。
真剣な眼差しで語らなければ、決心が鈍ってしまいそうだった。

(離れたくない、けれど私のやるべきことは……)

「一ノ瀬くん、あのね……」
「陽寄さん?」
「私、あなたに伝えなければならないことがあります」





安らぎを得た束の間の休息が、終えようとしていた。




続く。



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