天命は巡り逢う 第三章


父が母の仕事の終了時間に合わせて迎えに行ったあと、蓮たちは帰宅するまで夕食を待つことにした。
夕方、学校から帰宅した伊織も優から改めて話しを聞き、事態は深刻なんだと理解した。
だが、考えすぎてもお腹は空く。
伊織はこんなときこそ美味しいご飯を作らなきゃ!と、キッチンに立って腕を振るう。
妹の鈴も手伝うと、いつもより積極的に夕食のお手伝いをしていた。
時刻は午後七時を回った頃、蓮は自室のベッドに横になり、父親が話したことを思い出していた。

【番の解消薬】


この言葉が耳について離れなかった。

そして、会って欲しい人がいると言う父の言葉に、その場にいた家族が尋ねた。
その人物は誰なのかと。

父が出した人物の名に、蓮は驚いた。
その人物とは、蓮たちバース性の薬を改良し世に貢献した、如月 晴人だった。

彼は父の勤める病院に、極秘入院しており、誰にも知らせることができなかったらしい。

如月家から逃れられない晴人が、事態を公にしたくない一心で、彼に黙っていてもらったのとのことだった。

そんな晴人がなぜ今になって、自分たちに会いたいということになったのだろう?

そのあたりの真相は、直接会って聞くとのことで、蓮たちは、会う日程を決めた。

二日後の土曜日、午後二時から父の勤める病院にて会うことが決まる。

その日直接彼に会えるのは、父と、蓮、伊織、そして優だけだった。

母親は仕事、蒼は部活、そして鈴はこんなときに友達と遊びに行く予定を入れており、断ってと優に言われたが、妹は、前から約束していたことなので無理!と言い放った。
仕方ないので、なるべく早く帰るように言うと、当日は家族四人で病院に行くことになった。

「如月 晴人さんか……」

寝返り打ち、蓮はどんな人物なのか想像する。

薬学としてはトップに並ぶ如月製薬。
そして、世の中に生きるα、Ωの人たちにとっては救世主である薬の改良者。
そんな大それた人物と会うことになるなんて思いもしなかった。

「会いたい理由って、なんだろう……」

考えに耽っていた蓮はスマホのメールを知らせる音で身を起こした。

「こんな時間に、誰だろう?」

ベッドを降り、机に置いてあるスマホを開く。
受信名は、陽寄さんとなっていた。

「陽寄さんからだ!」

今日はもうこないのかも知れないと思っていた矢先のメッセージだったので蓮は慌てて内容を確認した。

《こんばんは、返信遅くなってごめんなさい。私も、大丈夫です》

短い文章だったが、彼女が無事なことが確認できたのでほっとした。
それと同時に昼間、なぜ自分の体質のことを知っていたのか、そして、自分のフェロモンに当てられなかった理由。
その辺りが聞きたくて、蓮は陽寄さんに電話をかけた。
呼び出し音が鳴り、彼女が出た。

「もしもし、陽寄さん?」
「こんばんは、一ノ瀬くん。連絡、遅くなってごめんね」

陽寄さんは返信が遅くなったことの謝罪を改めてしてくれた。
そして、早退したようだったが、彼女の声が聞けて無事を確かめることができ、良かったと蓮は思う。

「大丈夫そうで良かったよ。そう言えば陽寄さん、少し聞きたいことがあるんだけれど」
「聞きたいこと?」

陽寄さんが電話越しに首を傾げる姿が想像される。

「電話だと話しにくいし、明日、学校来れそうかな?一緒に帰らない?」

蓮は彼女のことを気遣い、明日登校できそうか聞いたのちに決めようと思った。

「明日は学校行けるよ。わかった、放課後に。それと、蓮ママさんに伝言があります」
「うん、何?」
「バイト休んでごめんなさい。しばらく、家の事情で行けなくなっちゃったのって、伝えて欲しいです」

陽寄さんが申し訳にくそうに話す。
家の事情ってなんだろう、そう思いながらも蓮は母親に伝えることを話すと、彼女がため息を吐いたのを聞き逃さなかった。

「陽寄さん?」 

遠慮しがちに尋ねてみる。

陽寄さんは先程とは変わって元気な声で《なんでもないよ!また明日!おやすみなさい》と返事をしてきたので、蓮もまた明日、おやすみなさいと言い、通話を切った。

明日、放課後、陽寄さんと会う約束ができた。

蓮はスマホを机に置くと部屋を出て一階に続く廊下を歩く。
そう言えば両親たちがまだ帰っていない。
リビングに行くと、伊織がソファに座っており、父さんと母さんは?と尋ねると、もう少し遅くなるみたいだから私たちだけで食べようとソファから立ち上がった。

「遅くなる?」
「そう、さっき電話したらお父さんが出て、すぐ帰るって言ったんだけど、そのあとすぐにメッセージが来て遅くなるの文面」

私たちの両親はいったい何してるのやら?と首を傾げて伊織はキッチンへと向かう。
料理を温め直しに行ったのだ。

「蓮兄、みんな食卓に集合かけて!」
「了解」

蓮は、蒼、そして優と鈴に晩御飯を知らせ、兄妹五人で食卓を囲んだ。

両親が帰宅したのは、それから二時間程度経ったあとだった。






続く。
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