天命は巡り逢う 第三章
翔が去ったあと、遥華はこれからの動きを計画しなければらならなかった。
先程いたリビングに戻ると、スマホが光っているのに気づく。
陽寄家、もしくは如月家からの電話だと思うと確認するのに気が引けたが、よく見るとメールの知らせを教える色だった。
「こんな時間に、誰だろ?」
ボタンを押すと、メールの送信相手が表示される。
「……一ノ瀬くん、からだ」
受信時間を見るとお昼過ぎにきており、気づくのが遅れたことに申し訳ないなと思う。
この時間には陽寄家からの連絡があって、今、まさにこの件で悩んでいるのだが。
メッセージを開くと彼は私が鞄から持ってきた抑制剤を飲んで落ち着いたから大丈夫だよとの文面と、早退した遥華のことを心配している内容だった。
「そっかあ、体調、落ち着いたんだ。良かった……」
ほっと安堵の息を吐く。
陽寄家の血、《NB》は発情していない者を発情させてしまう。
彼は、正真正銘、α性だ。
だから遥華の血に反応し、発情させてしまった。
申し訳ない気持ちが、遥華の中に湧き上がる。
兄の晴人と一緒に事前に調査した資料で把握していた。
一ノ瀬家の家系、そして彼の父親である一ノ瀬 樹とその母親、蓮ママのことも。
彼らがなぜ、α、βの関係から“運命の番”へと繋がりを得たのか。
そして、蓮ママのβ性からΩ性への変化の理由も。
個人情報ではあるが、今回の計画を兄の晴人と立てたときから調べておかなければならなかったからだ。
全ては17年前に起きた事件をきっかけに。
遥華はメッセージ欄に『こんばんは、返信遅くなってごめんなさい。私も、大丈夫です』と打ち、送信した。
しばらくすると既読になり、電話が鳴った。
遥華は通話ボタンを押す。
「もしもし、陽寄さん?」
「こんばんは、一ノ瀬くん。連絡、遅くなってごめんね」
通話相手に再度謝罪をし、遥華は彼の体調が戻って良かったねと話した。
それについて、蓮は遥華に聞きたいことがあると話してきた。
「電話だと聞きにくいし、明日、学校来れそうかな?一緒に帰らない?話したいんだけれど……」
遥華は迷った。
おそらく、抑制剤の件とそれに関連する話しだろう。
このまま黙っていることもできない。
「明日は学校行けるよ。うん、わかった、放課後に。それと、蓮ママさんに伝言があります」
「うん、何?」
「バイト休んでごめんなさい。しばらく、家の事情で行けなくなっちゃったのって、伝えて欲しいです」
陽寄家に戻ればバイトなど、到底行かせてもらえない。
そして一ノ瀬くんとも、もう逢えないかも知れない。
楽しかった彼の家族との交流が途絶えると思うと、遥華は気が重くなる。
「陽寄さん?」
声にハリがなかったのを心配した蓮が心配してくれる。
「なんでもない!明日、また学校でね、おやすみなさい」
「また明日、陽寄さん。おやすみなさい」
気丈に振る舞い、通話を終わらせると窓の外を眺め、遥華は思った。
この生活は、もうすぐ終わりを告げるのだと。
続く。