フェイルアーの恋
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好きの意味
ブラックファントムを奪って基地を出た。やっぱり何も出来なくてただ突っ立ってるだけだったけれど。
「日本に知り合いが居るんじゃ。取り敢えずそこへ向かおう。」
ギルモア博士の一声でブラックファントムは日本へ進んでいる。汚れたスカートを叩いて目を閉じた。耳元で雑音が聞こえる。そう言えば通信機を探っていたことを思い出した。急に通信が切れると意識まで落ちそうになるのでその前に辞めなければ。
「っ、」
ぷつん、と切れた瞬間耳鳴りと目眩がした。思っていたより長く入り過ぎていたのか。しまったと思った時には既に遅く、足がガクリと力を失くす。ダメだ、立っていられない
「フェイ!大丈夫かッどこか痛むのかッ!?」
「ぁ…ごめ…004…へ、き」
「こんな時に何言ってる。嘘ならもっとマシな顔して言え」
「じゃ…も少し、このまま…」
「あぁ」
気付いてくれた004が抱き留めてくれたが足に力を入れようにも上手くいかない。身体の奥が震えてる。先程基地で言われた言葉が頭の中をぐるぐると回った。
《そんな役立たずまで連れていくのか。貴様らの仲間意識もそこまで行くとお見逸れする》
《出来損ないにはもう何も期待していない。しかしまぁ、愛玩用に運用が決まっているんだ。見目が綺麗で良かったじゃないか、はっはっは!》
気にしてはいけない。分かってる。でも愛玩用だなんて言葉皆には聞かれたくなかった…皆はなんて思ったのだろう。
「…フェイ。あまり深く考えるな。お前はお前だ。それは俺達がよく知ってる」
「…ふふ、なんで考えてる事が分かるの?…頭の中読んでる?」
「いいや。フェイが思いきりわかりやすい性格をしているだけの話さ」
「やだ、うそ」
「本当だ」
クスクスと笑い合うとやっと足に力が入るようになってきて004の腕に掴まって少し距離を取ると未だ支えるように捕まえてくれている彼にお礼を言った。少し目眩が残っているがこれくらいなら一人でも平気だろう。
「身体は?痛むか?」
「大丈ふ、…なに?…いたたたた!!」
真顔で頰っぺを摘まれてゆっくりと延ばされる。痛みを訴えると直ぐにやめてくれたが思わず頬を抑えて睨みつけた。
「なんで!痛いじゃない!」
「それは嘘を付かれた俺の痛みだ」
「嘘じゃないよ!」
「ならもう離れても平気だな?」
少々乱暴に開いた距離に油断していた私は盛大によろめいた。慌てて壁に手を着こうと伸ばした手を掴まれて004の胸へぽすりと舞い戻る。
「何か言うことは?」
「…ごめんなさい…どこか座れる所に連れてって…」
「最初からそう言えば良いんだ」
「うぅ…」
長いため息と共に横抱きにされていたたまれなくなる。004の腕の中で小さくなっていると私達を見つけた003が心配そうな顔で駆け寄ってきた。
「フェイ!まさか倒れたの!?どこか痛む!?」
「ううん、目眩がするだけ。平気だよ」
「そう、少し無理をさせてしまったから…ゆっくり休んで」
「ありがと。003もね」
「えぇ。じゃあ004、フェイをお願いね」
「あぁ」
皆に比べたら全然動いていないのに情けない。なんて言ったらまた怒られそうなので言わないでおく。今日はいろんな事がありすぎて疲れたのは本当だけど。目の奥がズキリと痛んで反射的に顔を手で覆うと目敏い004はほら見ろと言わんばかりに声をかけてきた。
「やっぱり痛むんじゃないか。ギルモア博士の所に行くか?」
「ううん、ちょっと疲れただけ」
「………」
「…治らないらしいの。偏頭痛みたいなものだから、暫くすれば治まるから」
「……どうやらそれは本当らしいな」
「………」
じっと私の顔を見るもんだから根負けしてつい本当の事を口にした。そんなに分かりやすく顔に出ているのかと思うと隠し事が出来ない自分にため息をついた。
「何か言いたいことでも?」
「004には適わないなって」
「ほぉ。適う気でいたとは驚きだ」
「とっても意地悪ね、そんなこと言ってるとモテないぞ!」
「フェイにだけさ。ご安心を。」
それに、と続けたが不自然に空いた間に004を見上げる。あ、悪い笑顔だ。また意地悪を言われるらしいのでムッとした顔を作って言葉を待った。
「フェイは俺が好きなんだろ?」
「!………す、き…だけど…意味が、違うわ」
「そうなのか?そりゃ残念だ」
「…もう!からかわないで!」
椅子に座らせて貰って赤い顔を隠すようにそっぽを向いた。確かに最後だと思って昨日好きだと言ったけど、そんなつもりで出た言葉では無かった。そもそも私が誰かに恋をするなんて…それが皆の中の誰か、なんてとてもじゃないが烏滸がましい。なので違うのだ。断じて。
「004、ありがとう。」
「あぁ。コズミ博士の所までまだ少しかかるらしい。今のうちに休んでおくといい」
「…うん」
「そう拗ねるな。本当に少しは残念に思ってるぜ」
「ッもー!だからそういう事じゃないってばー!」
高らかに笑い声を上げて悪かったと言われても説得力の欠片もない。手を振りながら去っていく後姿を気が済むまで睨みつけて鼻を鳴らして見送った。
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