フェイルアーの恋
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救いの手
作戦が始まる前に部屋から抜け出して組織を撹乱でも出来れば。なんて思っていたが何も出来ないまま閉じ込められてしまった。まぁ私なんかの力を借りなくとも001と003が居ればどうにでもなる、か。
銃声が聞こえる。通信機に入り込めば彼等を差し置いて番号を貰った新入りの、009も上手く目を覚ましたらしい。いよいよする事が無くなった私はベッドに突っ伏した。嫌にドキドキして眠れそうにないが少しは気が紛れるだろう。
【フェイ、ソコカラ離レテ!】
「!?001?なに、どうしたの?」
【イイカラ速ク!壁際ニ移動スルンダ!】
「はいぃ!」
暫くして不意に聞こえた001の叫び声に思わず敬語で従うとすぐ様爆発した。爆風が収まり顔を上げるともう二度と見ることが無いと思っていた顔が不適な笑みを浮かべて私に向かって手を延ばしている。
「ようお姫様。迎えに来たぜ」
「002…どうして」
「ずっと一緒だったんだ。ここまで来て今更サヨナラは無しだろ?」
「でも私は」
「おっと!お喋りは後だぜ。急ぐぞ」
「きゃ、ちょっと!待って!」
「待たねぇよ」
いつまで経っても手を掴まない私に痺れを切らしたのか身体ごと抱え込まれてあっという間に飛び上がった。どんどん遠ざかるかつての自室を見て思わず002の首に回した手に力を込める。
「大丈夫か?悪ぃな。これ以上は遅く飛べねぇ」
「違うの。全然平気だよ」
「ならもう少しスピード上げるぜ?そのヒラヒラのスカートしっかり抑えとけよ」
「無理!」
「ハッハ!大サービスだな!」
「もう!」
小さくなる島を一瞥して赤く染まった空を見つめる。ドキドキと胸がうるさい。私はまた、皆と一緒に居れるのだろうか。居ても、良いのだろうか。なびく髪をかき上げて002の顔を盗み見ると直ぐに気付いた彼が一瞬視線を寄越して口の端を上げた。
「変なこと考えるなよ。俺が守ってやるから黙って着いて来いってんだ」
「あは、かっこいいね002」
「フン、やっと気が付いたのか?」
着いたぜ。と声をかけられて降りた先は飛行中の大きな飛行機だった。フラフラと002から離れると支えるように腰に手を回して立たしてくれた。
「ありがと、002」
「フェイ!」
「わ、と…003」
やっと自立できた所で振り返ると001を抱いたままの003が首元に頭を擦り寄せてきた。それに応えポンポンとハグを返す。
「どうなる事かと思ったのよ…っ…本当に、本当に良かった…」
「ん、ありがと…001もありがとね。危うくこんがり焼けちゃう所だった」
【フェイッタラ中々動カナイカラ僕モ焦ッタヨ】
「あははっごめんね?」
よしよしと頭を撫でて謝って皆の方を見ると優しい笑顔で迎えてくれた。005が大きな手で頭を撫でてくれる。あんなに一生懸命心に決めたことをあっさりと崩されてしまった。でも何処か清々しい。
「怪我はないか、フェイ」
「うん、大丈夫」
「全く。うちの姫君は頑固でいけない」
「姫君を攫うのはいつも悪の手先とは限らないってか」
「ひとまずこれで一安心ネ」
「みんな…ありがとう。また会えるなんて思ってもみなかったよ」
じっと不思議そうに自分を見つめる彼と目を合わせると、君は?と問われる。それはそうか。防護服も着ていないしこの中で私は異質だろう。
「私はフェイルアー。出来損ないの、失敗作の試作サイボーグ。だから番号もないの。フェイって呼んで」
「失敗作……?」
「拒絶反応が凄くてね…ヒトにもサイボーグにもなれない半端ものよ」
「拒絶反応があるって事は身体がヒトでありたいと願い戦ってるって事だ。あまり自分を卑下するなよフェイ。お前さんの悪い癖だ」
「…ありがと、004」
力無く笑って礼を言う。腕を組んで眉間に皺を寄せる004はちょっと迫力がある。その様子に圧倒されていた彼が思い出したかのように口を開いた。
「ぁ、僕は島む…0、09。009だ」
「よろしくね、009」
言葉とは反対にスっと伸びてきた手をとって握手を交わす。温かい、がっしりとした男の子の手だった。
「フェイ、戦闘が出来ないからと言って気に病むことは無い。君しかできない事が他に沢山あるはずじゃ」
「…はい、博士」
どこまでも優しく包み込んでくれる人達に私は精一杯の笑顔を送る。ありがとうと心の底から伝わるように。怖い事も不安な事もここに居ればきっと乗り越えられる。あの場所でそうだったように。
「もうね、迷うの辞めたの。王子様が黙って守られとけ言ってくれたから」
「なッ」
「へぇ。その王子様とやらは一体誰の事だ?」
「002だよ」
「ッそういう事は内緒にしとくもんだろフェイ!!!!」
「どうして?あの時の002、ヒーローみたいでとってもかっこよかったよ?」
「っ!」
クスクスと笑うと皆も釣られて笑ってくれる。やっぱりこの人達と離れるなんて私には出来ない。この先どんなに危険でもずっと傍にいたい。今度はその為の努力をしよう。大好きな人達と一緒にいる為に。
2017/10/26
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