フェイルアーの恋
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小さな未亡人
「コハル!コハル、今朝コハルの部屋から004が出ていくのを見たけれど、もしかして」
「何も無かったよ。というかどうしていつもそうタイミングがいいの!?」
「なにも!?じゃあ誓いを立てれたってこと?」
朝食が終わるなりフランソワーズに腕を引っ掴まれて尋問される。突っ込みはスルーされるしなんだこれ。連れ去られてる時は皆女の子同士仲いいな〜なんて和やかな視線を送られるけど出来ることなら引き止めて欲しい。特にアルベルト。あんなに哀れみを含んだ目で見るくらいなら助けてくれたっていいのに。いや、フランソワーズとお話するのは好きだけど。
「うーん。なんだかんだで私が折れちゃった…のかな」
「ええ!?」
「あ、時間を頂戴ってお願いしたけどね?」
「でも、桜の彼に誓いを立てていたんでしょ?それを…」
「その時になってみないと分からないけど…アルベルトなら、いいかなって」
不安げに揺れるフランソワーズの瞳に出来る限り優しい笑みを送った。私がこの世に一人だけと心に決めていた彼は誠実で底抜けに優しくて。私が自らこんな身体になったと知ったらそれはそれは怒るだろう。体を生身に戻せないように、この気持ちももう巻き戻せない。…こんな私を、彼はどう思うだろうか
「…004にはコハルが彼に誓いを立てていた事話していないの?」
「え?うん」
「だめよ話さなきゃ!コハルばかり苦しむ必要無いわ!」
「そうは言っても…」
なんて話せばいいのやら。そもそもそう言った概念が無いのだから話した所でピンと来ないだろう。それになんて話す?恋人でもないのに私は貴方だけのものです、なんて重いだろう。
「ちゃんと大事なものは大事って言わないと。分からないんだもの。悪気もなく一掃されちゃうわ、そんなの悲しいでしょ?」
「そ、う…だね」
「…そろそろ戻りましょう」
「うん…」
歩き出したフランソワーズの後についてリビングへ足を踏み入れた。もう自分の中では解決したと思ったのにフランソワーズの言葉で揺れてしまった。どうしたら、いいのだろう…なんだか無性に彼の顔が見たくなって首からロケットペンダントを引き出す。チャームを開くと航空服を身につけて優しく微笑む彼と目があった。
「そう言えばフェイは出かけないの?故郷なんでしょ?」
「故郷って言ってももう知らない街と変わらないよ」
「あら?それは?」
ソファに座ってペンダントを仕舞いかけたらフランソワーズに不思議そうな声をかけられた。首をかしげて視線を辿るとペンダントを凝視している。
「あ、彼からの?」
「ううん、違うの。これは…」
「もしかして…写真?見ても?」
もう一度手の中に収めてかぱりと開く。フランソワーズに頷くと隣に移動してきたので首から外して手渡した。目元を優しく細めて素敵な人ね、なんて言ってくれるものだからつい誇らしくなってしまう。
「そうでしょそうでしょ。自慢の旦那さんでしたのよ」
「ダンナァ!?フェイ、結婚してたのか!?」
「ッビックリした…そんなに驚く?」
いつの間にか傍にいた002の叫び声に飛び上がった。厳密には夫婦ではないけれど。そんなに意外だった事が意外だ。まぁ見た目的に十代の002のが大人っぽい…気がしなくもないし。認めたくないけど。
「でも大学で出会ったんでしょ?」
「その後彼が軍に入って少しして婚約したの。だからまぁ、籍は入れれなかったんだけどね」
「へぇ、本当だ。ハンサムだね」
「えへ。でしょ?」
「どれどれ?」
いつの間にか009の手の中に渡っていたロケットペンダントが次々とみんなの手に渡っていく。別に良いんだけど、ちょっと気恥しい。
「フェイの旦那さんは軍人だったのか」
「そう。戦闘機に乗ってたの」
「へぇ、意外だな」
「意外?」
「ちょ、ちょっと待て!フェイ、お前幾つなんだよ!」
008の呟きに首を傾げると慌てた様子の002が話を割って入った。いつもなら女性に年齢を聞くのは云々言ってやるのだがそんな冗談を言う雰囲気でもないので普通に答える。
「23だけど」
「はぁ!?23!!??」
「えぇ!?フェイ、そんなに年上だったの!?私てっきり…」
「002はともかく、俺よりも上だったのか…」
「日本人は幼く見えると言うが…」
「フェイは特別…なんというか」
「009のが大人っぽいネ」
「「「うん」」」
「ひっどい!!!」
フランソワーズより見た目があれなのは認める。いや、待て009も見た所ハーフじゃないか。ハーフなら仕方ない。ノーカンだ、ノーカン。
むくれているとアルベルトが近付いてきてロケットペンダントを手渡してくれた。アルベルトにも見られたのか。いや、別に良いんだけどちょっとドギマギする…首にかけてチャームをしまうと服の上からそっと撫でた
「まぁ気にすることはないさ子供はいつか大人になるもんだ」
「なにをー!私が子供なら004はおじさんね!」
「なっ、」
子供にするようにぽんぽんと撫でられそっぽを向いた。散々あんな事しておいて子供扱いするだなんて。004が一番ひどい。
「おいおい、004がおじさんなら俺はどうなるんだ?」
「007はおじい…おじさま!」
「今おじいさんって言いかけなかったか!?」
大袈裟に落ち込む007に皆がどっと笑ってさっきまでのもやもやなんてあっという間にどこかに飛んでいった。
2018/9/12
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