フェイルアーの恋
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手遅れ
布団の柔らかな温もりに頬を寄せる。するとおでこに硬いものが当たった。なんだろう?おでこをすり寄せてみるが答えは出なかった。眠たい目を開いて見れば黒色。もう少し上は肌色、その上は銀色………え?
「!!??アルッんぅ!?んんー!!」
名前を呼ぼうとしたらキスで遮られる。なんで私の部屋に!?というかベッドに!?身動きが取れないように抱き込まれて足が絡まる。ぴったりくっつくとフランソワーズの言葉が頭の中を巡った。(ぼーっとしてるとあっという間にベッドの中…!)
「んう!んー!ん!んー!」
「…静かに。人が来るぞ」
「はァっ…あるべうと、なんでっ」
「夜這いを仕掛けにな」
「!!??」
「冗談だ」
冗談に聞こえない!とりあえず距離を開けて落ち着こうと手を突っ張るが直ぐに抱き込まれて腕の中に収まる。それでも抵抗を続けているとぽんぽんと背中を叩かれた。
「本当に何もしない。安心しろ」
「できないよっ!なんでベッドにっ!?」
声をひそめながら出来るかぎり叫ぶ。しかし頭を撫でられると警戒心も抵抗力も一気に剥ぎ取られてしまった。…悔しい。気持ちい…
「添い寝じゃないと眠れないんじゃないかと思ってな」
「いや、寝てたし」
「ついでに聞きたいことがある」
「うん?」
「003に何を言ったんだ?」
思わずぎょっとした。アルベルトに何を話したんだあの子は…っ!思い切り性の事について話してしまっていた手前下手な事を言って墓穴を掘る訳にはいかない。慎重に言葉を選ばなければ…!
「…逆になに言われたの?」
「なんだ、やけに警戒するじゃないか」
「そ、そういう訳じゃないよ?ただちょっと相談に乗ってもらってただけだから…」
「相談?」
「…アルベルトに内容言ったら意味無いでしょ」
「俺の事についてか。」
しまった…誘導尋問に乗ってしまった…ため息をついて諦めモードに入る。何を言われたか知らないが楽しげなアルベルトを見る限りフランソワーズが少し突っ込んだ所まで進言したのだろう。
「…日本人と欧州人との価値観の違いについて話してただけ」
「恋愛の?」
「…………そう」
「そういう事は本人に聞いた方が早いんじゃないか?」
「…私そんなに積極的じゃないもの」
おでこに口付けられながら髪を撫でられる。こんなに態度から甘い雰囲気を出されると逆上せてしまいそうだ。アルベルトの胸に手を置くと彼の手がやって来て指を絡めて握られる。
「なら日本人の恋愛観が気になるな。俺にも教えてくれないか?」
「…日本人って言っても何十年も前の、が頭に着くけど」
「そりゃ良かった。気にかけているお嬢さんが丁度その頃合いの日本人なんだ」
「へーぇ。お相手はとてもお年を召したお嬢さんね?」
クスクス笑うと握られた手に少し力がこもった。私も握り返すと更に力強く握られる。
「…今はそんなにお固くないかもしれないけど。そもそもこんな事、夫婦でもない限りしないよ」
私を抱き締める手がひくりと反応した。別に気を病むことはないと声をかける代わりにアルベルトの胸に擦り寄る。ベッドに自分以外の温もりがあるとこんなに安心するのか、と自然と口角が上がる。
「キスだって恋人じゃないとしないし、…セックスだってそう。将来を決めた人とだけ結ぶのよ」
「…………」
「…ビックリした?」
「あぁ…コハル…俺は」
言い終わる前に触れるだけのキスをする。今まで何度もしてきたけれど私からするのは初めてで、珍しく不意を付かれて固まったアルベルトがおかしくて声を出して笑ってしまった。
「ふふ、なのに私ね?アルベルトとキスをするの、好きなんだ。おかしいでしょ?」
やっと柔らかい表情に戻ったアルベルトに安心した。きっと私はアルベルトに恋をしてる。そんな私に彼も好意を抱いてくれている。難しいことは置いておいて今はそれで十分。そう思うことにしよう。
「あ、でも…でもね?もし、アルベルトが私にキス以上を望んでくれるなら…少し…時間が欲しいの」
「………さて、何度春が来る事やら」
「もう!」
「いいさ、お互い時間だけはたっぷりとある」
恋人ってなんだろう。何が重要なんだろう。実際キスだけで甘く蕩けそうになるのにそうなった時に断れるか自信が無い。彼がくれるものならなんだって欲しい。そう思ってしまった。
だけど彼の胸に消せない愛の残り火が燻っている事も知っている。だから私はアルベルトがくれるものを受け止める事にしよう。
「…コハル、キスしても?」
「あ、それいいね。いつもそれくらい気を使ってくれない?」
「もちろん。ダメと言われてやめる気もないが」
「意味無いじゃん!」
そうして唇が重なる。だんだんと深くなっていくそれに幸せを噛み締めた。
2018/08/16
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