短編
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相愛
「ひるま、…まだやってたんだ」
「もう終わる。中で待ってろ」
「ん。お邪魔します」
明るい茶色の髪に着崩された制服。短いスカートはブレザーに隠れそうな程で、見ている此方がハラハラしてしまう。耳には勿論ピアスが付いており、蛭魔をよく知るものが見ればお揃いだという事は容易に分かるだろう。猫のように引かれたアイラインがよりキツい印象を与えていて、物静かな事を差し引けばどこからどう見てもいろはは不良だと言えた。
カタカタとパソコンで作業する蛭魔の横に行儀よく腰掛け、暇つぶしに携帯を開く。時折部員の視線を感じながもいろはは無愛想にそれを無視することに務め、大して用のない携帯電話を弄り続けた。
「よし、待たせたな」
部員が一人二人と挨拶をして去っていき、日誌を書き終わったまもりがいろはに手を振って弟分たちを連れて帰る頃には蛭魔と二人きりになっていた。パソコンを閉じる音を聞いて漸く体の力が抜け、脱力する。
「随分とお疲れじゃねぇか」
「う〜髪の毛の色も服装も元に戻したい…」
視線を投げられるのは相当気疲れする。それに慣れないいろはなら尚のことで、そうある事を強要する蛭魔はカラカラと笑いながら労わるように頭を撫でた。
中学までどちらかと言えば控え目なグループに属していたいろはは、見た目が派手な者とは一生関わる事は無いと高を括っていたのにも関わらず、悪魔の策略で蛭魔に恋をして平凡な羽をもがれてしまった。そしてあっという間に見た目を変えられ、いろはもまたそれを良しとしているのだが、いくら見た目をそうしたからと言って今まで培ってきた性格が変わるはずも無く。また蛭魔もそこまでは望んでおらず、臆病ないろはの愚痴に付き合ってやり、笑って聞き流す程度には無理をさせている自覚があった。
「いくら蛭魔が恨みを買うような事をしてたって、恐怖が勝って何も出来ないと思うんだけど」
「可能性は低いに越したことはねぇ」
「…関係あるのかな、これ」
無駄にピカピカと色付いた自分の爪を眺めながら切ってしまいたいとボヤいて蛭魔の顔色を伺う。変わらず笑顔で巻かれた髪を撫でていて、きゅんと疼く心臓が憎らしい。
「…一緒に居られなくなっちゃう?」
「労力がかかるな」
「うーん。そうかぁ」
蛭魔が殆どの時間をアメフトに捧げ、その他の空き時間を自分と過ごすようにしてくれている事を知っているいろはは直ぐに交渉をやめた。何より今年は部員も増えてアメフトに割く時間も必然的に増えたのだ。これ以上二人の時間が減るのも、蛭魔に要らぬ体力を使わせるのも嫌だった。
「受験まで我慢しろ。大学では好きにさせてやるよ」
「…それって」
大学生になっても蛭魔の予定ではいろはが恋人のままという事だろうか、それとも逆か…そんな事を考えているのに、期待で紅潮する顔を見られたくなくて慌てて俯くと肩を抱かれて抱き締められる。一年以上付き合っているのに未だに慣れない心臓は忙しく蛭魔を意識させた。
「ひ、るま…」
「名前で呼べって言ってんだろ」
「でも…はずかしい…」
顎を持たれ目を合わせられると、直ぐに目を逸らした
。
「一年経っても慣れねぇのか」
「…頼むから自分の顔面偏差値を自覚してくれ」
「……やっぱこんなナリじゃ嫌か」
「………もろタイプだわ、クソ」
「ケケッ、口が悪ぃぞ」
そして塞がれた唇にピクリと反応する。一度離れるとまた直ぐに塞がれて唇を食むように繰り返し熱を与えられ息が上がる。ゾワゾワとした感覚が強くなると思い切り蛭魔の胸板を押して距離をとった。
「ん、はぁ…それ、えっちだから駄目って」
「俺が好きだから駄目じゃねぇ」
「私が駄目なの!ひゃあっ…ひ、るま!」
「いろはは嘘つきだな」
太ももを撫でられ声を上げると笑い声と共に下着のラインをなぞられ飛び退いた。短いスカートが恨めしい。荷物も持たずに出口へ急ぐと手がドアに届く前に強い力で手を引かれて抱き込まれる。それでも手を付いて離れようとするとその手を取られ、先程より深い口付けに飲み込まれて抵抗する力まで吸い取られたようにくたりとしてしまう。
「ひるっん…はっ…お布団、じゃなきゃ…やだぁ…ふぅ…」
「そうは言っても…ほら、欲しがってんじゃねぇか」
お尻側から下着の中に手を入れられ、指で割れ目を擽られるとじゅくっと期待が滲み出て蛭魔に縋る。やだやだと首を振って止めてとお願いする様に強く抱きつくと大きい手で背中を撫でられ安心してしまう。蛭魔はいろはの力が抜けたのを見計らったようにとろとろと誘う所に指を滑らせて先の突起を柔らかく押し潰した。
「ひゃあっ…だめっひる…やぁっ…ひ、と…来ちゃ…」
「いろはが声を抑えてりゃ、誰も来ねぇよ」
蛭魔の手を下着から引き抜こうと後ろに手を回して手首を掴むが当たり前のようにビクともしない。諦めて説得しようと顔を上げるとキスで抗議をねじ伏せられ、その気持ちよさに身を任せてしまいそうだった。いつの間にブラウスのボタンが外されたのかブラの上から胸を揉みしだかれ、体の力が抜けてしまう。体を支えられながらゆっくりと押し入ってくる指に震えるとそのまま深くまで突き刺していろはの気持ちがいい所を擦り上げてくる蛭魔が憎らしい。
「んあぁっ…ひるま…!やらっ…ちゃんと、っ…こ、な…ところで…!」
「…名前呼べって言ってんだろーが。俺のお願いが聞けねぇんだ。俺だっていろはのお願い聞かなくてもいいと思わねぇか?」
「や、だっ…やだぁ…!…よ、いち…ひゃ、…んっんぅ…よ…ち、やめっ…や、っあああぁっ」
ぎゅうっと抱き締められ逃げ場が無いまま果てを迎えるとまるで食べられるみたいに口付けられる。長い舌がいろはの口内を蹂躙して舌を束縛し、拒否するいろはを咎めているような荒々しい口付けだったのに、離れるとまた強く抱き締めていろはだけが聞くことを許されている言葉を耳元で囁かれては簡単に蕩けてしまう。
急に抱き上げられ机の上に寝かされると下着に手を掛けるので慌てて手を伸ばすがそれも虚しく素早い動きで片足だけ脱がされてしまい、唇を噛み締めて足を閉じる。
「よういち、ほんとっ」
「鍵は締めてる。」
「いつの間に…ってそういう事じゃなくて!」
「いろはがキスに夢中になってた時だ。…俺がお前のこんな所、誰かに見せる訳ねぇだろ」
ブレザーのポケットからゴムを取り出して口にくわえるとそのまま脱いで簡単に畳み、いろはの頭を引き起こしてそれを挟み込んで枕にした。蛭魔の優しさにきゅんとしているとベルトを外す音がして思わず音の方向を見るが、口で包装紙が破かれる所を目撃してしまい、その卑猥さに目を伏せた。
「うぅ…学校でなんて…不良だ…」
「良かったじゃねぇか。やっと見た目に追い付いてきたな」
「嬉しくない…妖一と違って慣れてないんだから。ちゃんとお布団でしたいもん…」
「………」
音が止み、膝を持って開かれると濡れたそこに冷たくて硬いものが押し当てられ身を固くする。ずりずりっと音を立てて擦られると腰がもぞもぞして足を閉じようとするが蛭魔に抑えられしまい悶える声だけが部室に響いた。
「…俺だって慣れてねぇよ」
「んっ…え?」
「十回やそこらで慣れるもんじゃねぇだろ」
蛭魔の言葉にいろはは首を傾げた。それくらいの数はもうした記憶があったからだ。
「妖一、どうて」
「入れるぞ」
「…い?あ、待って…!っんう…ひ、…ぁ…」
体の中に太いものが割り込んでくる感覚に仰け反りながら耐えると気持ちよさが追いかけるように脳味噌へ駆け上がっていく。ゆっくりと深くまで入り込むと蛭魔が覆い被さりいろはを抱き締めた。
「待ってって…言ったのに…」
「痛てぇか?」
「ううん大丈夫……きもちぃ、よ」
髪を撫でてちゅっと音を鳴らして唇にキスをくれ、頬にも唇を寄せると蛭魔は首筋に顔を埋めた。またゆっくり慣らすように動き始めると、いろははその優しさに無理矢理事に及ばれた事を許してしまった。
「…こんなこと、いろは以外としてぇなんて思わねぇ…」
「っ……」
「……今…中、締まったな」
「そ、ゆ事…言わないで…」
機嫌良さそうに笑う蛭魔を抱き締めると段々と動きが速まってきて体をよじる。内臓を押し上げられる圧迫感と快楽で声が漏れ、蛭魔の腕を握って逃げる様に首を振ると蛭魔が離れて顔を覗き込んできた。この少し余裕のなさそうな顔を見られるのは自分だけ。いろははまた一つ特別を見つけると、お腹の奥がもっと気持ちよくなって更に大きな声を出してしまう。
「どうした」
「ふ、あっ…こえ…我慢、できない…!」
必死ないろはを見て笑みを深めると意地悪く腰を動かして胸をやわやわと揉み、ブラの隙間から指を滑り込ませて突起を摘まむ。いろはは涙で霞む視界で蛭魔を見るとじっと見下ろされていることに気付いて両腕で顔を隠した。
「…糞エロい」
「や、だぁ…みるなっ…んぁっ…く、そ…いけめんっ」
「ケケケッ、そりゃあ悪口じゃねぇぞ」
蛭魔の動きに合わせて途切れ途切れに声を上げるいろはに体を寄せると深い所を抉り、体を震わせる。嫌だと言うくせにもっと深くへ誘うようにうねる中に打ち付け続けるといろはが蛭魔の名を呼んだ。
「ほら、口塞いでやるから手ぇどけろ」
「ひぁっ…あっあっ…ん、ひるまっ…ひるまぁ…っ」
「違ぇだろ、いろは」
「よ、…ちっ…あ…んっ…よういちっ…はやく…も、きちゃ…ふぁっ」
顔を隠していた手を伸ばして蛭魔の首に巻き付けると応えるように直ぐに唇を塞いで腰を速めた。水が潰れる様な音が快楽を押し上げて二人を繋ぐといろはの頭の中が白く弾けて痙攣する。舌を強く吸って唇を離すといろはの体を押し潰すように体重をかけて蛭魔も果てを目指した。
「あっあーっ!ひ、あっ…よ、ちっ!すきっ…すきぃ…っ!ふぁっ、んやああぁっ!」
「……っ!」
小さく声を上げて熱を隔てる所へ精を吐き出すと深呼吸を数回していろはの額に口付け、自身を引き抜いた。息を整えながら事後処理に勤しむと、蕩けた声で不満を漏らすいろはを笑う。
「はぁ…ふ、…不良はがんばる、けど…やっぱりお布団がいい…」
「へーへー、分かった分かった。暫くは我慢してやる」
暫くって!顔を赤くして口を尖らせるいろはにキスをして機嫌を取る。互いが互いに弱い事を再確認すると自然と頬が緩んだ。
「好きな癖に」
「っイケメンだからって何でも許されると思うな!」
「思ってねぇよ。いろはだけだ」
「あ、う……許す…」
「どーも」
いろはの蜜で濡れた所も綺麗に拭いてやると、荒い息をするいろはに覆い被さって何度もキスをする。それが何となく擽ったくてどちらともなくクスクス笑うと互いに愛を囁き合った。
震える手で下着に手を伸ばすいろはを手伝って履かせてやると手を引いて起き上がらせる。しかしいろはは直ぐに体を丸めて蛭魔のシャツを握りしめた。
「うっ…背中痛い…」
「はいはい、よく頑張りマシタ」
「このやろ…っ」
蛭魔を恨めしそうに睨み付けるが唇にキスを落とされると赤面してしまう自分が憎らしい。
「私が初めてとか絶対うそだ!最初からそんなんだったもん!」
「そりゃ良かった」
悔しくて声を上げるが蛭魔は涼しい顔でブレザーを羽織り携帯を弄っていてムカついた。しかし違和感を含んだ蛭魔の言葉の意味を考えてハッとする。初めてだと思われなくて良かったって事は…
「なに赤くなってんだよ」
「…なんでもない。童貞蛭魔がオロオロする所見たかったって思っただけ」
「ケッ」
本当に、いろはが初めての相手らしい。あの蛭魔の、そして一番大好きな人の初めてを貰えたと思うと嬉しくてつい赤面してしまった。蛭魔は素直じゃない己の彼女の頭をぐりぐりと撫でると自分の荷物といろはの荷物を肩にかけ、いろはに背を向けて少し屈む。
「…いろはもいっぱいいっぱいで気付かなかっただけだろ。…ほら、おぶってやるからさっさとしろ」
「〜〜〜っ!…こ、今度からはちゃんとお布団でじゃなきゃやだからね!」
何だかんだいろはに甘く優しい蛭魔に翻弄され、それが悔しくて無理矢理口を開く。蛭魔に勝てる事なんて一つもないと知っているので、負け惜しみで乱暴に背中に飛び乗る反抗心くらい、可愛いと許して欲しい。現に少しもふらつかずいろはを受け止めて足を進めている。それにときめいてしまうからまた腹が立つ。
「よし、なら今晩だな。お前ん家行くぞ」
「えっ!お母さん居るしダメだよ!」
「今日は帰れねぇからいろはをよろしくってメールがきた」
「はぁ!?なんで私より先に蛭魔に連絡がいくの!?てかお母さんとメル友なの!?いつの間にそんなに仲良くなってんの!」
数回しか合ったことが無いというのに、母親がやけに蛭魔を褒めちぎると思ったらいろはの知らない所でなにかしているらしい。抜かりが無いというか…何とも恐ろしい。
部室の鍵を閉めるだろうから背中から降りようとしたら片手で何でもないように支えられ、鍵を閉めて校門へ向かうのでかっこよすぎる彼氏の後頭部に額を擦り付けた。
「ケケケッ外堀はもう固めてあんだよ。覚悟しやがれ糞いろは」
「…む…そんな事しなくても逃げないもん」
「分かってる。でもお陰でいろはのお望みどおり布団でセックス出来んだからむくれんなよ」
「べっつに!したい訳じゃないし!」
「嫌なのか?なら家まで送って帰る」
「………もーーー!泊まってけ、馬鹿蛭魔!」
意地悪!と肩をぽかぽか殴ると蛭魔が笑って体が揺れた。セックスと言葉に出されるとなんだか恥ずかしくて顔を隠すように首にぎゅっと抱きつく。
「言われなくても泊まるんだよ。苗字で呼ばれた数だけ苛めてやらねぇとな」
「くっ…!よ、妖一…さん。あの…やっぱりお泊まり無しの方向で…」
「あぁ?なんか言ったか?聞こえねぇ」
「家にゴムないし」
「俺が持ってる」
「聞こえてるじゃん!しかもなんでそんなもん持ち歩いてんの!」
「紳士の嗜みってやつだ。さっき役に立ったろ?」
「紳士は部室で襲ったりしませーん」
「不良だから襲いマース」
「見た目だけの癖に!…や、そうでもないか」
「そんな男が好きないろはが悪ぃ」
「………」
「もうギブか?」
言葉の応酬につい黙り込んでしまう。蛭魔を好きで悪いと言うのなら悪いのだろう。強引な誘いに何だかんだ乗ってしまうのは蛭魔が上手にいろはを甘やかす所為だ。やっぱり、こんなに好きにさせた蛭魔も悪い。
「…だって…好きだもん…」
「ケケッ知ってる」
「ひる…妖一は?私の事すき?……ねぇ、おい、こら、無視すんなや」
「あー、好き好き」
「くっそぉー!むかつくなー!」
軽くジタバタと暴れるとお尻を叩かれ仕方なく大人しくする。そういう雰囲気になったらちゃんと言ってくれるから本当にムカついている訳では無いけれど、一応ふてた振りをしておく。
「帰ったら機嫌取ってやっから大人しくしてろ」
「お頼み申す」
「武士か」
蛭魔にいちいち反応して貰えるのが嬉しくてえへへと声を漏らすとその背に甘える様に擦り寄った。蛭魔の匂いが心を穏やかにさせた後、おまけに甘く胸を痺れさせて、いろははバレないように小さく悶えた。
「…妖一、好き」
「あぁ」
甘やかしてもらえるのを楽しみにしながら大好きな人の後ろ首にそっと口付けてしがみつく手に力を込める。贅沢な時間だなんて考えていたら蛭魔の低い声が聞こえて顔を上げた。
「………糞、覚えてろよいろは」
「え、嫌だった?ごめん」
「違ぇ…」
「うん?」
蛭魔は可愛く甘えるいろはに内心舌打ちをすると家までの距離が煩わしくて足を速めた。急に無口になって先を急ぐ蛭魔に首を傾げるいろはは帰宅早々ベッドに放り投げられる事なんて露知らず、何も言われないのをいい事に、後で理由を聞こうと呑気に考えながら蛭魔の髪の毛で遊んでいたのだった。
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