短編
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純情リフレクト
「いい加減にしろ!」
私はジェットが大好きだ。
耳元でダンッと音がして背中にくっ付く壁の冷たさに体が震える。ジェットが怒るところは何度も見た事があったけど、こんな風に自分に矛先を向けられるのは初めてだった。怒らせてしまった理由も分かる。けれど、無理なものは無理なのだ。彼が私に求めるものは、彼にとっては"それだけ"かも知れないが、私にとっては重大な事なのだから。
「そんなに俺が気に食わねぇってんなら、いっその事」
大好き、なのに……フランソワーズやジョー、果てはあのジェロニモにまで何度も窘められた。本当は沢山好きを伝えたいのに、私の口はいつも反対の言葉を言ってしまう。それはジェットと恋人になった日から日に日に増して、私をじわじわと責め立てた。私がこんなんだから、ジェットはこんなにも苦しそうな表情をしているのかな。もう、私の事なんか
「別れちまった方が」
「いやっ!」
「っ、だったら!」
「でも!……でも、駄目なの……」
もう半年も経ったのに、手を繋ぐ事すらまともに出来てなくて。それは全部私の所為だと分かっているのにどうしても直せずにいた。長年に渡り染み付いた性格だ。そう変わる事がない。けれど決して諦めている訳ではなかった。何度も素直になろうと努力したし、傷付けないように下手くそながら言葉を選んだりしてきた。天邪鬼なんて言うものは本当に厄介で、咎められれば咎められる程言うべき事と反対の言葉が出てくるのだ。
「分かってるッ!こんなんじゃ、嫌われちゃうなんて事も、もう…いつ見放されてもおかしくない事も…っ……私だって…ちゃんと…!…ジェットのこと…ッ……!で、も…!」
たった二つの音はこんなにも胸を焦がすのに、言葉にできないだけで私から全てを奪おうとする。きっと二度はない。私は本当に、本当にジェットが好きなのに。壊れていく様を目の当たりにしても尚、修復する道筋を辿ることはなく、ただ頬が濡れるのを無かったことにしようと手が動くだけだった。
「………あんな態度でも俺の事、好きだって言うのかよ」
「……ッごめ…」
何度も頷きながら涙を拭う。必要以上に突き放してしまうのも、くっついて甘えたいと言葉にするのが恥ずかしいからだ。いや、恥ずかしいならまだ良い。私にはそれに憎らしいおまけが着く。沢山我慢をさせてしまっている事も分かっている。…もしかして、もう駄目なのかも知れない。
「っ…ジェット…!」
「嫌じゃないなら、黙ってろよ」
目を閉じて涙が頬を流れるのを感じると、引き寄せられて温もりに包まれた。心臓がドクドクと煩い。緊張でどうにかなってしまいそうだけど、何だかすごく安心する…ずっとこのままでいたい…私が今まで跳ね除けてたのはこんなにも愛おしいものだったなんて知らなかった。
ジェットが急に顎を引いて、だけど私との距離を少しも離すこと無く頬に唇を滑らせると、口の端まで辿り着いた。それに驚いて身動ぎをするがぎゅっと強く抱き締められて動けなくなる。
「やっ!ジェットっ!」
「しー…」
「んっ…んぅ…」
唇を合わせたまま静かにする様に咎めると何度も唇を押し付けてきて、その度に心臓が痛い程反応する。強く抱きすくめられて、唇を塞がれると頭がぼうっとしてきた。知らない感覚への恐怖に声を上げると唇を強く押し付けられビクリとしてしまう。
「…教えてやる、いろは。こういう時は吐息で話すんだぜ」
「と、いき……?」
唇をくっつけたまま、穏やかに声をかけられると頭のモヤが濃くなっていく。ジェットが吐いた息を吸うと肺が痺れたように疼いて、思わずジェットにしがみついた。
「どうしたんだよ」
「ん……こ、わくて…知らないことばかり、だから…」
「なっ!いろは、お前まさか…!」
喋る度にぶつかる唇を恥ずかしく思いながら吐息を意識して棘のない言葉を吐き出すと、ジェットが私の肩を持ち、急に引き剥がして大きな声を出すから肩が震えた。…びっくりした。
「なに…?」
「い、いや…なんでもねぇよ…。…ちょっと場所移そうぜ」
そう言って連れてこられたのはベッドの上で。何をするつもりかと力が入ったが、ジェットはその上に胡座をかくと私を抱き上げて膝の上に座らせた。意図を聞き出そうと口を開くとまた強く抱き締められて唇を塞がれてしまう。じくじくと緊張が全身に広がっていっぱいになると、またあのモヤで満たされる。体が熱くなって、ふわふわと浮いてるみたいだ。
「あっ!やだ!ジェットっ」
「しー。教えただろ」
「んぁ…ひゃ、だ…ふ…舐、めひゃ…んうぅっ」
唇に舌が触れて飛び上がると動けないようにされて深く繋がる。…少ししょっぱい。涙の味だ。ジェットの舌が口内を擽る度にビクビクと震え、声が漏れてとても恥ずかしい。歯列をなぞって舌を舐め上げ、それが上顎に当たるとじんじんとした感覚が強くなって力が抜けてしまう。反対にジェットは私を更に強く抱き締めて、少し位置をずらすと私の舌を舐めたり吸ったり噛んだりと弄び始めた。
「ふぅ…んっ…は、んぅ…」
「……、どうした」
力の入らない手で精一杯胸を押すと舌は離してくれたがやっぱり唇はくっついたままで。もしかしたらジェットはこういうのが好きなのかも、なんて考えながら上がる息を整える。
「…頭が、ふわふわして……こわ、いの…」
「っ!?あーー、やべぇ…っ!いろは…っ……好きだ!」
「ひゃっ……ん、く…るし…」
今度はぎゅうっと抱き締められて何度も頬擦りされる。私がサイボーグじゃなかったら死んでるんじゃないかと思う。その位の力で抱き締められているけどそれも心地良くてされるがままになっていると、再び唇が奪われた。
「好きだ…いろは…いろは…っ……言えよ、いろはも……っ」
キスの合間に何度も愛を囁かれ、判断力が鈍る。気持ちを言葉にするより恥ずかしい事をしてると思うと、今なら言えそうな気がしてきた。唇が離れた隙に口を開くが直ぐにジェットが塞ぎにやって来て、なんだか気持ちが焦る。今を逃したらまた機会を失うかもしれない。
「ん…す……きっ、んふ…すき、ジェット…ん…すき、すきぃ………ふあぁっ!?」
急に胸にゾワゾワが走って声を上げると、そんな事お構い無しに舌を捕まえられて言葉を封じられる。ジェットが胸を揉む度に擽ったいような、気持ちいいような不思議な感覚が襲ってきて、恥ずかしい声が出てしまうのにもっとして欲しいような気もして混乱した。
「ひゃ、う…ふ…ジェッ…ンん…」
「いろは……悪ぃ、キスだけじゃ我慢できねぇっ………」
えっちしたいって事かな。ジェットとならいいけど、初めてだからどこか変かも。そう言いたいのに口から漏れるのはいやらしい声だけで羞恥にぎゅっと目を瞑る。いつの間にやら服の中に入り込んだ手に胸の先を押し潰されてぶるりと震える。気付けばブラの締め付けも感じなくなっていて、肩に布が滑るのを意識すると随分乱されている事に気が付いた。
「はぁ…ひぅ…ジェット…ん、ふぁ…」
「首に手、回して抱きついてくれ」
言われた通りにするとスカートに手をかけられたが、抵抗する前に深いキスで制されて下着と共に脱がされてしまった。恥ずかしさに身を縮めるとジェットも自らのシャツに手をかけていて、お互いに裸になるんなら、恥ずかしいのを我慢する事にした。自分の急激な成長に内心拍手を送る。
シャツを脱いだジェットが空いた距離を詰めるようにぎゅっと引き寄せると、肌が触れ合って気持ちいい。触れた所から好きな気持ちが広がっていく気がして、無意識に何度も同じ言葉を紡いでいた。
「んぁ…ふ…すき、ジェット…すき…ぁ…す、き…っ」
「っ、クソ…こんな可愛いくなるなんて聞いてねぇ…っ」
独り言のように呟かれた言葉の意味を考えていると急に真剣な顔をして「優しくする」なんて言うから、わけも分からず笑って頷く。肌を滑る手の温もりに油断していると、するすると下腹部を撫でられて飛び上がった。やっぱり私の抗議なんて聞く気無いらしく、敏感な所に触れると指で少し広げて下から上にゆっくりと撫でる。
「ひゃんっ…やだっそこ触っちゃ…!」
「こら、暴れんなよ。怖いならキスしといてやるからしがみついてろ」
「ひゃらっ、んん!ふぁ…っジェット……!」
私のそこを、ジェットがどんな風に触っているのかなんて分からなくて、時々くちゅ、と音がなるくらい何かが溢れている事を知ると足を閉じたくてうずうずする。するとジェットが宥めるように足を撫でた途端、強い刺激を与えられ仰け反った。小刻みに押し潰して擦り上げられ、頭が真っ白になる。痙攣を続ける背中を撫でて優しいキスをくれるジェットに、何故だかお腹の奥がきゅうっとした。
「は、ぁ…ふ…」
「…指、入れるぜ」
「ゆ、び…?ふぁ…んっ…あ、あぁっ!」
体の中に異物が割って入る違和感が怖くて抱きつくと足が勝手にビクビクと震える。何度も指を出し入れして、違う場所を触りながら痛みは無いか確認しつつキスをされる。痛い気もするけど、混乱の方が大きくてよく分からない。
「ここは?」
「ひゃっ…ん、やぁっ…わ、か…なっ……や、ジェット…も、やだ…っ」
「…泣くなよ…もう少し我慢してくれ」
瞼に口付けられるともう少し頑張ってみようなんて思ってしまう。指があちこち動き回るのを感じていると急に刺激が強くなって飛び上がる。指を入れる前に弄られていた所を別の指で触られているみたいで、コリコリと押し潰されると頭の中が弾ける感覚を思い出してジェットの胸を押した。
「んやぁっ!それ、や…!」
「っと…落ち着けよ、いろは」
「やらっ…あたま、ふわふわなるの…っ」
「っ……大丈夫だ。俺がずっと着いてる」
ジェットは何かに耐えるような表情をした後、片手でぎゅっと私の体を引き寄せて回した手の先で胸の横をやわやわ触り、それにも大袈裟なくらいびくついた。やっぱり擽ったくて気持ちいい…。気持ちいい?そう思ったら下腹部がゾクゾクし始めて、また直ぐに頭の中が真っ白になる。上がった息を整えながらジェットに縋り付くと背中を撫でられた。なんだか頭がふわふわする度にジェットの事がもっと好きになってる気がする…
「もう一回だ。…嫌わないでくれよ?」
「ン…ふ、あぁっ…す、き…あ……じぇっと…」
「っあんま煽るなって」
「ふ、ぇ…すき、や…?…んひゃあっ!あ、あ、やぁ!んんぅっ」
増えた質量に耐えながらジェットを嫌うわけないと気持ちを口にすると咎められて不安になる。悲しくてジェットを見上げると指の動きが激しくなって噛み付くようなキスに飲み込まれた。
「嫌じゃねぇ…っ…もっと言ってくれ…いろは…っ」
「ふぅ…っ!ん…!す…き…んぁっ…!ジェ、はぅ!…んっんっ」
言えという癖にキスで塞がれては上手く音にできない。けれど口にする度に甘く痺れるのが癖になって、壊れた機械みたいに何度も繰り返した。
埋め込まれた指が更に深くを抉ると腰が震えてお腹の奥に力が入る。先程とは違う感覚に逃げ出しそうになったけどジェットの温もりが恐怖を和らげてくれているみたいで、登り詰めるものを素直に受け入れた。気持ちいい…運動した訳でもないのに汗が吹き出て息が乱れるなんて変な感じだ。
「…いろは、痛てぇだろうが…その、…嫌だったら……自信ねぇけどやめる、努力はする」
「はぁ、ふっ…ふふっ…なにそれ」
ゆっくり押し倒されながら思わず笑うと髪を撫でられた。ジェットも柔らかく笑っていて、ああ、これだ。と思った。ずっとこんな風に愛し合いたかった。口に出したら見えない何かが変わる気がして尻込みしていたけど、恐怖とは反対に幸福が胸いっぱいに広がる。
「ジェット、今まで…ごめんなさい」
「やめろよ。俺だって分かってたのに、イラついちまって…怒鳴って悪かった」
「え、と…ね?…だ…い、すき……よ…?」
「、っとにいちいち可愛いんだよ!お前は!」
もう臆すること無く言えると思って口にしてみればやっぱり恥ずかしくて目を逸らしてしまう。それを可愛いなんて言われて照れると覆いかぶさったジェットが耳元で小さく唸るように入れる事を告げる。敏感な所に熱いものが当たって心臓が大きく脈を打った。
「ジェット、わ、わたしね」
「分かってる。でももう待てねぇ…悪い、いろは」
「っあ…!ン…っ…く…ひ、!んん……っ」
初めてだと口にする前に遮られ、熱が体の中に埋め込まれて行くのを感じて強ばる。火傷しそうな程に熱くて痛いけれど、ジェットとひとつになっていると思うと好きが溢れて涙になった。苦しそうに名前を呼ばれ目を開くとジェットの唇が降ってきて、再び目を閉じる。優しいキスに夢中になっていると唇を離したジェットが大きく息を吐いた。
「奥まで入った」
「ほ、んと…?」
「あぁ、辛くねぇか?」
「ん…へいき」
「…じゃあゆっくり動くぞ…」
お腹の圧迫感に声が勝手に漏れてしまう。労わるように髪を撫でて、時折口付けながら言葉をかけてくれる優しさにお腹の奥がきゅうっとする。下腹部がジンジンとして不思議な感覚に身を捩るとジェットが苦しそうに口を開いた。
「っいろは、痛くねぇなら、気持ちいって言ってみてくれ」
もしかして、初めての時に痛いのは女の体だけじゃないのかも。だって、ジェットそれくらい苦しそう。なら求められる事くらいは応えようといっぱいいっぱいになりながら口を開くとジェットがピクリと反応した。あれ?もしかして
「あっ…ん、ひゃっき、もちぃ…あっ、ふぁ…きもちいっジェット…」
「俺もっ…気持ちいぜ…いろは…っ」
「っあぁ!ひゃらっ、な、か…変…!んあっ、やぁっ!」
気持ちいいと口にすればする程お腹の奥がきゅんとして、ジェットが苦しそうにする。もしかして、これが気持ちいい感覚なのかも。ジェットだって、多分……。そう思ったら段々とゾワゾワが強くなって、ゆっくりだった動きも速まっていく。するといやらしい音が下腹部の辺りから響いてきて、とても恥ずかしいのにジェットの動きに合わせて腰が動いてしまう。
「ひぁっ、ジェッ…トっ、あ、あ、これ…やだぁっ」
「気持ちいんだろ。…ずっと、引っ付いててやるから…足、もう少し開いてくれっ」
「っ、ああぁっ!ふ、かい…とこっ、だ…めっ…!ふ、あ、あっあ!」
いつの間にか力が入っていた足を開かれ、ジェットがぴたりと覆い被さると擦れた所の刺激が強くて身を縮めて大きな背中に手を回す。じくじくとするものは痛みの筈なのに、上手く言えない感覚が痛みを包んで隠してしまっているみたいだ。これが気持ちいいって感覚なら、そしてそれをジェットと共有しているのなら、もしかして、凄く幸せなんじゃ…
「あっあっ、ジェットっ、きもちぃっ…ん、あぁ!ジェット、じぇっ、と…!」
「好きだ、いろは…っ」
「ふぁっ!すきっ、じぇっとす、き…!あっ、ひゃっ
、!なに、?…んむ、ん!んぅっ!んっんっ、んーーーーーっ!」
少し強引に唇を奪われて目の前が眩むと背筋を何かが駆け上がって体が痙攣した。短い時間に経験したどの感覚とも違う。全てを塗り替えられるような、有無を言わせず底の見えない暗闇に放り投げられるような、確かな快感。初めてのそれに混乱していると、動きを止めてくれていたジェットがまた苦しそうに目を細めた。
「いろは、俺ももうイきてぇ…」
「はぁ、んっ…あぁっ!ひゃ、まっ…!ん、やぁ…っ!あっあぁ!」
焦げ付いたキャラメルみたいに鈍く光る瞳に見つめられて思わず頷くと余韻を噛み締める暇もなく気持ちいいのでいっぱいにされてしまう。空気を取り込むためにだらしなく開いたままの口からいやらしい声が漏れ出て凄く恥ずかしい。そしてそれが気にならないくらい気持ちいい。このまま溶けて一つになってしまえたらいいのに、なんて考えてたら唇に噛みつかれた。
「んぅっ…ふ、んむっ、んっ、んーっ!ん、ん、ふぁ…っ、ひゃ、んっんぅーーーっ!」
頭が真っ白になって仰け反ると、腰が引けて空いた隙間を埋めるように押し付けられまた痙攣する。一番奥にぎゅうっと押し付けられたと思ったら勢い良く引き抜かれてお腹の上に熱いものが注がれた。ジェットが居なくなった所が寂しく痛むのを感じながら息を整えていると、ティッシュを数枚とる音がして、お腹の上を拭われる。
「平気か?いろは」
頬を撫でられ目を開けると、瞼に口付けられて気分良く頷いた。荒い呼吸を整えるのに必死だと言うのにその口を何度も塞いで邪魔をする。深くなっていくそれに、お腹の奥が沸騰しているみたいに熱くなって誤魔化すように足を擦り合わせようとしたけど、ジェットの体を挟み込んで腰をくねらせる事しか出来なかった。するとジェットが体制を低くして熱いものを私の気持ちいい所に擦り始め、敏感なそこは、生々しい肉の感触にもうジェットを欲しがっている。
「…畜生…無理させたくねぇから、一回で終わらせるつもりだったってのに…」
入れていいか…?なんて耳にキスをされ、低い声で甘く囁かれて尚、首を振るほど私の天邪鬼は強くないらしい。気を使うようにゆっくりと埋まる熱を迎えに行くとすぐに一定の速度で私を溶かす。うわ言のように、気持ちいい、好き、もっと、なんて恥ずかしい事を沢山言い合って、今までの距離を繋ぐように何度も求め合った。すっごく幸せだった。のだけど!
後日フランソワーズに、ジェットの機嫌が今までに無いくらいいいけど、キスでもしたの?なんて聞かれて眉間に皺を寄せる。私はその手の話が苦手だ。例え女同士の恋バナだって聞くのは好きだが聞かれるのは嫌だ。だって死ぬ程恥ずかしい。黙りこくった私に何かを感じ取ったフランソワーズはあれやこれやと問い詰めてくる。応援してくれていたし、とても感謝しているけれど、………恥ずかしい!
「キスとは言わなくてもハグとか、手を繋ぐとか!何か進展があったんでしょ?」
「………聞かないで…恥ずかしいの…」
「えっ!まさか」
顔を隠して赤面させると声のトーンが上がった。おめでとう!なんて喜ばれて恥ずかしくない訳が無い。セックスして何がおめでとうだ。…でも一応心の中でありがとうと言っておく。急に肩が重くなって顔を上げると、いつの間にかジェットが居てぎょっとした。今の話、もしかしなくても聞いてた!?
「おいおい、あんま俺のいろはをいじめんなよな?こう見えて初心なんだ」
「ちょっと!調子に………!」
いつもの様に振り上げた手をハッとして止めると優しく微笑まれ、更に顔が熱くなる。逃げる様に部屋を飛び出すと、煩い心臓を抑えつけて蹲った。もう、ダメだ……好きすぎておかしくなりそう……っ
「ったく、俺のお姫様は照れ屋で困る」
「嬉しいからってあんまり揶揄うと嫌われちゃうわよ」
「ご心配なく。そりゃねーよ」
いろはを追うようにフランソワーズに背を向けると、ポケットに手を突っ込んで肩を丸める。拙く何度も愛の言葉を呟く可愛らしい口を思い出して口元を緩めた。縋るように、けれど控え目に伸ばされる手も、戸惑いながらも好きにさせてくれる素直さも、本当は寂しがり屋な事も、誰も知らない。それを暴いたのは俺だ。だからもう、俺だけのものだ。
「さぁて、お姫様のご機嫌取りにでも行くか」
「また調子に乗って顔に手形を付けられないようにね」
「はいはい、ご忠告ドーモ」
後ろ手に手を振っていろはを追いかける。姿を見つけたら抱き締めて、キスをしてやろう。きっと可愛い顔で応じてくれる事だろう。甘えるように額をくっつけると嬉しそうにはにかむいろはを想像しながら素直になれない愛しい恋人を探す。…お、いた。フラフラと立ち上がってこちらを振り返るその顔は未だに赤いままで。目が合うと慌てて前を向くくせに、いつもみたく逃げようとはしない。俺だけが知っているいろはだ。華奢な体を抱き締めて、髪に隠れている項にキスをするとピクリと揺れた。そろりとこちらを見上げる顔は期待に潤んでいて、ゆっくりと唇をよせる。
あー、夜まで待てる気がしねぇな。
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