短編
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忘れられないひと時に
唇の温もりにじわりと瞼が熱を持つ。見開いたそれをゆっくりと閉じればもう思考するのも馬鹿らしくなる程に愛が溢れた。背中に回る手が強く体温を繋ぐと偽物の心臓が軋む。
下心以外、何も無かった。彼の誕生日を理由に約束を取り付け食事をして、お酒を飲んでホテルへ泊まる。後はもう勢いだ。いつもは理性的な彼もお酒の所為と理由をつければ私が望んだ物をくれるようで、安堵に息を鳴らす。
半分以上鉄で出来ている私達にアルコールが作用するのかなんて聞くのは不粋だろう。現に欲に飲まれようとしている。理由なんてそれだけで十分だ。唇を重ねたまま服を脱がし合うが震える手ではうまくボタンが外せず、反対に私はあっという間に下着だけになりベッドに沈められた。
お腹の下辺りに体重をかけないようにして跨いで座るアルベルトを、熱に浮かされながらぽうっと見つめると、口元に笑みを浮かべながら私が脱がし損ねたシャツを脱ぐ姿にお腹の奥が熱くなる。
「緊張してるな」
「こうなってから初めてだから…」
力が入って震える体を優しく抱き締めて、頬にキスをくれるアルベルトが「俺もだ」と耳元で囁くと一際大きく体が震えた。
「出来るだけ、ゆっくりする」
「…どうもありがとう」
精一杯おどけると、くすくす笑い合いながら唇を重ねる。背中に手が周り、ブラのホックが外されると流れる様に肌を撫でられて冷たさと擽ったさに身を捩った。唇が離れると今度は耳朶に口付けられ、まるで恋人にする様な愛撫に私の心はどんどんと溶かされていった。
「…冷たいだろ?温まるまで我慢してくれ」
「んっ、大丈夫…そんなの、気にならないくらい興奮してる」
「……そんな事を言われちゃあ、ゆっくりしてやれないな」
冷たい手が胸を滑ると、先をやわやわと刺激され声が漏れる。優しくされる度に胸の奥が鈍く痛んで泣き出しそうになるのを、ぎゅっと目を瞑って堪えた。なんて幸せなんだろう。もう人を愛す事なんて一生無いと思っていたのに、その人に触れてもらえる日が来るとは思わなかった。…そう仕向けたのは私だけど。
私から誘えば、優しい彼は拒まない。愛してしまったその日に、ただ仲間として傍に居られればそれでいいと誓ったのに、最近の私はどうかしていた。触れてみたい、触れて欲しい。そんな風に思うなんて、本当に馬鹿馬鹿しい。
それでも彼の手と唇が私の肌を滑り、ゆっくりと下着に手を掛けるとそれだけで達してしまいそうだった。
「俺の手が故障しちまいそうだ」
「あ…ん、アルベルトって、意地悪なのね」
下着を取り払い、零れる蜜をすくい上げて誘い出すように突起に触れられると、強い刺激に腰が揺れる。くすくすと笑われ羞恥に足を閉じるが、アルベルトが姿勢を低くして体を挟み込んだので呆気なく失敗に終わった。お仕置きとばかりに指を突き立てられると急な刺激に仰け反って息を飲む。
「痛むか?」
「は、ぁ…だ、いじょ…ぶ」
「ふっ…これでイかれると、俺のを入れるとどうなるのか楽しみになるな」
「ばかっあ…ひ、あぁ…っ!」
お腹側を押すように指を擦り付けられ、嫌になるくらい気持ち良い。歯を食いしばって手の甲で口を塞ぎ何とか乗り切ろうとしたのに、手を退けられると直ぐに口付けをくれて、更に快感が強まった。ゆっくりしてくれると言ったのに、性急に追い立ててくる愛撫に苦しさを感じながらも登りつめようとするものに抗うこと無くアルベルトに縋って繋がる熱に舌を絡めた。
「んん…んっ、んぅ…ん、ん、……」
「…はぁ…、悪い。俺でイかせたい。…いいか?」
後少しだったのに。そう思いながらも頷くと急に指を引き抜かれ、ひくひくとだらしなくアルベルトを欲しがる体がどうしようも無く恥ずかしくて腰を揺らせば、ズボンを脱ぐアルベルトが少し笑った気がした。今、口を開いたら同じようにだらしなく求めてしまう気がして息を整える事に専念する。アルベルトは一声かけて一度ベッドから離れると、何処からか避妊具を取り出していて、もしかして私と同じで元々そういうつもりで居たのかも。なんて勝手に嬉しくなった。
「男のこういう姿、見ないのがマナーってもんじゃないのか?」
「こんなになった女を、ベッドに一人で寂しく寝かせておく貴方に言われたくないかもね」
笑いを含んだ皮肉を皮肉で返すと、くすくすと笑いながら覆いかぶさり、優しくキスをしてくれるアルベルトの首に手を回す。だんだんと冷めかけていた熱を取り戻させるように激しくなるそれに、流される悔しさを感じる間もなく、濡れた場所に避妊具で隔てたものをずるりと擦り付けられ体が揺れた。
深い口付けに溶かされながら何度も突起を擦り上げられると腰がビクビクと震えて掴み損ねた果てを目指そうとしているのが自分でも分かる。焦らされた体はどうしようも無くアルベルトを欲しがったが、塞がれた口では強請る事も出来なくて与えられるものだけに必死で集中する。
「んっ、んぅっ!……っ…ん、んーーー…ッ!」
ジンジンと脈を打つ下腹部に期待を寄せていると、急に割って入ってきたものの息苦しさに眉をひそめた。無遠慮に奥まで進まれると直ぐに背筋がしなり体中が震える。それに合わせて舌を吸われ、その衝撃は息の仕方を忘れそうに成る程のものだった。
「っ…、大丈夫か?…やっぱり、すごいな…っ」
「ひぅ…は、ぁ…っ…さっき…から…っお、やじ…くさい」
「ふ、…違いない」
絶頂の最中、やっとの事で憎まれ口を叩くと優しい笑顔で額に口付けをくれて子宮がきゅんと疼いた。それを合図に一度引き抜かれ、その途中で奥まで突かれると、絶頂の延長のような快楽が頭で弾けて意図せず大きな声が出てしまう。それが恥ずかしいのに、アルベルトが動く度に抑えが聞かなくなって堪らず助けを求めるように抱き着いた。
「ひぁっ、や…待って、アル…ッあぁ!」
「ゆっくりすると言った手前、待ってやりたいが…もう無理だ…っ」
切羽詰まった声でそう言われるとつい嬉しくてきゅんとする。お腹の奥に届く度に意志に反してビクビクと震え、アルベルトにかき混ぜられてとろとろに溶かされているみたいで、久しぶりの行為だと言うのにあられもない程乱れてしまう。少しだけ余裕の無さそうな顔で、それでも時折優しくキスするのは忘れないのだから、全く。勘違いしちゃいそうになるじゃん。
「あっあぁ、アル、ベルトッ…ひぁっや、んぅ…ふ…あ、あぁ!」
強く腰を打ち付けられ、今まで何も入り込んだことがない所に当たると目の前に光が舞った。ぎゅうっと深くに押し付けられると更に汗が吹き出して頭がかぁっと熱くなる。アルベルトは首筋に噛み付きながら尚も奥へ奥へと擦り付けてきて、私は彼の背中に爪を立てて抗議することしか出来なかった。
「ひぁ…っ…!あ…あ、…!っ、……!」
「…イってるな…どうやら、俺達はとんでもなく相性がいいらしい……俺ももうすぐだ…っ」
やっぱり何処かおじさん臭いことを言う声を聞きながら、始めたばかりだと言うのにずっと絶頂の中に追いやられてばかりで、兎に角早く終わって欲しかった。これ以上溶かされてしまったら一度では済まなくなる。そんな予感がした。少しだけ慣れてくるとまた私の奥深くを掻き混ぜて直ぐに気持ちよさでいっぱいにさせると、粘着質な音が後から着いてくる。まるで自分の体じゃ無いみたいに愛してくれるから、視界がぼやけて涙が滲むとアルベルトはそこにキスをくれた。
「…大丈夫か、いろは」
「あぁっアル、アル、ッんあぁ!きもちぃ…っあっあっ!き、もち…ある、べると…!ひゃあっ!やぁっ、だめになっちゃ…!」
私がおかしくなる所を見つけたアルベルトは角度を付けて何度もそこを抉ってくる。三度突かれただけでつま先を丸めると、私の力んだ体を大事そうに抱えてスピードを速めた。きもちいだのかわいいだの耳元で言ってくれ、動揺すると果ての数を数えるのも早々に諦めてぐずぐずに熱くなったものを素直に受け止める。
アルベルトの小さな呻き声似合わせて一際深くまで繋がれば頭に抜ける衝撃で枕が少し動いた。視界が眩んで息の仕方を忘れるとふわふわとした感覚がまとわりついて、私の中で脈を打つものに背筋が粟立ち残りの快楽を貪る。
「、…まだ、起きててくれ」
薄い意識の中で息を整えていると額にキスを残してアルベルトの温もりが無くなった。それを追いかける体力なんて残ってなくて、下腹部を綺麗に清めてくれている気配を他人事のように感じた。
「いろは、」
落ちかけていた意識が浮上して目を開けると優しく笑うアルベルトが視界に映って、両手を伸ばして首に縋り付く。そのまま彼が仰向けに寝転んだので、半分体を預ける形になったが気にせず腕に力を込めた。髪を撫でてくれる手が愛おしくてなんの抵抗もなく言葉が滑り落ちる。
「好き…」
「っ……」
「好きよ、アルベルト」
戸惑っているアルベルトにバレないように笑うと首筋に額をすり寄せる。
「いろは…俺は」
「いいの。何も要らない……私はヒルダさんを想う貴方を愛してるの。……だから、このままでいい」
…でもね、好きなの。アルベルトが望むなら今晩の事だって無かったことにして、今まで通りに戻ったっていい。アルベルトの事だから、どんなに気まずくてもあからさまに避けたりしないはずだ。それならそれで良かった。穏やかに告げると大きなため息が聞こえて思わず顔を上げる。するとこちらもなんだか穏やかな顔をしていて、訳が分からず首を傾げた。
「お前さんがそんなだから俺は…」
言葉と表情が噛み合わず、ぼーっと顔を見上げていると困ったように笑って一つキスをくれた。意図が分からない。もしかして、相当困らせちゃったのかも…?
「いろは、」
「…ん?」
「いろはさえ良ければ…いや、いい歳してこれは無いな。………俺と一緒に生きて欲しい。これから先、仲間としてじゃなく…もっと近くで」
思いもしなかった言葉に目を見開くと、髪を撫でたアルベルトの手から緊張が伝わってきて口角が上がる。私みたいな小娘相手にそんな風になるなんて、もう…もっと好きになっちゃうじゃない。
「そうね、アルベルトさえ良ければ。」
「…意地が悪いな」
「お互い様でしょ」
なんだか癖になったみたいで、くすくす笑うとどちらともなく唇を合わせる。
「ねぇ、」
「なんだ?」
「今年も三十才の誕生日、おめでとう。…それから、………生まれてきてくれてありがとう」
アルベルトは大きな口を引き上げて、またため息をつくと「どういたしまして」と幸せそうに笑った。私も胸に顔を埋めて笑うと髪にキスをされ顔を上げる。額を滑った唇が同じところに触れると、冷めない熱が柔らかく溶けていってとても安心した。
「んっ!え、ちょっ…うそ」
「こら、逃げるんじゃあない。一緒に生きてくれるんだろ?」
「そうだけど!それとこれとは、きゃあっ」
私の体の下で柔らかかったものが存在を主張し始め、逃げる前に組み敷かれて額に冷や汗が滲む。息は整ったとはいえ、重くなった体は休んだ方がいいと眠気を誘っていたというのに、アルベルトの手が触れただけで期待に震えてしまうのが悔しい。
「いろは、愛してる」
「っそ、れ…今言うの…ずるい…」
「お互い様、だろ?」
「もう……」
手をぎゅっと握り合って温もりを感じれば、甘い痺れに笑顔が零れた。
2018/09/19
HappyBirthday
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