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サン光

サンクレッドは、誰よりも1番早くに起きている。と私は認識をしている。
もしかして寝ていなのでは?と思えるくらいに、彼の寝ている姿を見たことはない。
壁にもたれ掛かり目を閉じているのは見たことはあるが、それは寝ているとはいわないし。そうでは無いのだ。
彼の育ってきた環境上、仕方の無いことなのかもしれないが、共に眠る仲になって短くも無いに関わらず、彼の寝顔を見た記憶が無いのが、少し…いや、かなり不満である。
一時期、早く起きようと躍起になった時もあったが、それでも彼より先に起きれた試しがない。
バッチリと私の寝顔を堪能してるサンクレッドと視線が合ったのが早起きの最高記録だ。

これは一生見ることは無理そうだな。
そう思っていた矢先のことだった。

―――

ばちりと目を開いたその眼前に、目を閉じて浅く呼吸を繰り返しているサンクレッドがいたのだ。

「び、っ…」

くりした、そう言葉に出しかけて己の口を手で塞ぐ。
ゆっくりと体を上体だけ起こし、その寝顔を見る。
横になっているが故に長い前髪が流れ、少しだけ目元を隠していた。
すう、すう、と聞こえる穏やかな呼吸に頬が緩み愛おしさが込み上げてしまうのは仕方の無いこと。

(あぁ、寝顔ちょっと幼くなるんだな)

そう思いながら触れたら起きそうだからと、見るだけで気持ちを満足させる。
腰に回されていた力の抜けた逞しい腕がずるりとシーツに落ちるのを見届けて、それでも起きない彼にそれ程までにそばに居ることを許されたのだと嬉しくて堪らなくなった。

「ふふ…」

思わず嬉しさを声に漏らしてしまえば、ぴくりと色の薄い睫毛が小さく跳ねる。
起きるかな?じゃあそれまでもう少し、と欲を出してその整った顔を見ていると、落ちた腕が勢いよく腰に絡みつき引き寄せられた。

「ん、サン、クレッド」

「見すぎだ、穴があくぞ」

寝起きのかすれた声が耳を擽る。胸の辺りで額を擦り寄せ欠伸をひとつ零す姿も、珍しいものを見たとまたひとつ胸が弾む。

「おはよ」

まだ少しだけ眠たそうな顔を上げて、細められた温かなヘーゼル色の瞳と視線が交じる。
未だ掠れた声に心地良さを感じつつ、私は同じように朝の挨拶を返し、朝日を受け止めるくすんだ銀の髪を撫でた。
とろり、と気持ちよさそうにまた目が細まる。いつもとは違う、私が先に起きた朝。

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