サン光
「ハグの日」これまた語呂合わせというものが好きな世の常なもので、今日は8月9日。
抱きしめる事は常日頃、愛しい彼に許される限り引き寄せられるようにしているものだから、こじつけなくともできるのだが…とサンクレッドは己の顎下をするりと親指の腹で撫でれば、僅かに引っ掛かりを感じる寝起きの朝。
昨晩とある筋から教えてもらった情報ではあるのだが、もしかしたら彼女もまた同じように教えられているかもしれない。
サンクレッドはそう思いつつ、視線を下に落とし隣ですやすやと寝息を立てる愛しい姿を見つけ目元を綻ばせる。
お互いに昨晩はハードな依頼で日付が変わるより早く眠ってしまった為、今日になってからそれらしい事は何ひとつとしてしていない。
無骨でかさついている指の背でゆるりと頬を撫でれば、閉じられていた瞼がぴくりと反応を見せた。
そうしてその指をそのまま頭へと滑らせ、今度はピンと尖った可愛らしい薄い耳を撫でる。
「んー…」
反射的に跳ねる耳を追いかけて、柔らかな毛並みを楽しむサンクレッドの顔は穏やかに溶けている。今はまだ眠りの中ではあるが、彼女だけに向けられる顔。
遂に閉じられていた瞼は開かれ、その下から澄んだ海のような色の瞳が現れ、しぱしぱと数度瞬いてサンクレッドへと向けられた。
「おはよう」
「お、はよ…」
まだ眠たそうな彼女は、己を受け止めるシーツに額を押し付けて擦り寄る。
その様子を見ていたサンクレッドはそれを愛しいと思いつつも、どうせ擦り寄るのなら自分にして欲しいと、無防備な彼女の耳の内側に口を寄せて小さくリップ音を立てた。
「こらこら、甘える相手を間違えてないか?」
「ふ、ふ」
擽ったそうに首を縮め、小さく笑うサンクレッドの愛しい毛玉は愉快そうに尾をシーツに緩く叩きつける。ようやくお目覚めのようだと、サンクレッドはその首の下に腕を通して頭を支えてやんわりと引き寄せれば、彼女もまた自らの腕で体を押し上げて起き上がった。
「悪いな、起こして」
「んーん、でも珍しい…どうかした?」
特にこれと言った予定が無い日は、自ら起きるまで寝かせてくれるサンクレッドがこうして起こしてきたのだ。何かあったのだろうかと膝上に乗せられた彼女が小さく首を傾げれば、目の前の男も揃えて首を傾けた。
「今日、ハグの日なんだと」
「……あぁ、そういえは昨日そう言ってたの聞いたなぁ」
やはり彼女も同じように聞かされていたようだと、サンクレッドは苦笑を零す。
「徹底しているというかなんと言うか…。まぁ知らなかったとしても、言葉通りだ。説明なんて不要だろう?」
そう言いながらヘーゼルアイを細めた男は、愛しい彼女を今まで何度も抱き締めた、鍛えられた太い腕を緩やかに広げてみせる。
それを見た彼女は海色の瞳を見開き、そして困ったように眉を下げて口元に笑みを浮かべた。
「なんか」
「ん?」
「改めてそうやって誘われると…恥ずかしいな」
そうはにかみながらも、サンクレッドに包まれる心地良さに慣らされた彼女の身体が、まるで吸い込まれるようにその腕の中へと収まりに行くのであった。
抱きしめる事は常日頃、愛しい彼に許される限り引き寄せられるようにしているものだから、こじつけなくともできるのだが…とサンクレッドは己の顎下をするりと親指の腹で撫でれば、僅かに引っ掛かりを感じる寝起きの朝。
昨晩とある筋から教えてもらった情報ではあるのだが、もしかしたら彼女もまた同じように教えられているかもしれない。
サンクレッドはそう思いつつ、視線を下に落とし隣ですやすやと寝息を立てる愛しい姿を見つけ目元を綻ばせる。
お互いに昨晩はハードな依頼で日付が変わるより早く眠ってしまった為、今日になってからそれらしい事は何ひとつとしてしていない。
無骨でかさついている指の背でゆるりと頬を撫でれば、閉じられていた瞼がぴくりと反応を見せた。
そうしてその指をそのまま頭へと滑らせ、今度はピンと尖った可愛らしい薄い耳を撫でる。
「んー…」
反射的に跳ねる耳を追いかけて、柔らかな毛並みを楽しむサンクレッドの顔は穏やかに溶けている。今はまだ眠りの中ではあるが、彼女だけに向けられる顔。
遂に閉じられていた瞼は開かれ、その下から澄んだ海のような色の瞳が現れ、しぱしぱと数度瞬いてサンクレッドへと向けられた。
「おはよう」
「お、はよ…」
まだ眠たそうな彼女は、己を受け止めるシーツに額を押し付けて擦り寄る。
その様子を見ていたサンクレッドはそれを愛しいと思いつつも、どうせ擦り寄るのなら自分にして欲しいと、無防備な彼女の耳の内側に口を寄せて小さくリップ音を立てた。
「こらこら、甘える相手を間違えてないか?」
「ふ、ふ」
擽ったそうに首を縮め、小さく笑うサンクレッドの愛しい毛玉は愉快そうに尾をシーツに緩く叩きつける。ようやくお目覚めのようだと、サンクレッドはその首の下に腕を通して頭を支えてやんわりと引き寄せれば、彼女もまた自らの腕で体を押し上げて起き上がった。
「悪いな、起こして」
「んーん、でも珍しい…どうかした?」
特にこれと言った予定が無い日は、自ら起きるまで寝かせてくれるサンクレッドがこうして起こしてきたのだ。何かあったのだろうかと膝上に乗せられた彼女が小さく首を傾げれば、目の前の男も揃えて首を傾けた。
「今日、ハグの日なんだと」
「……あぁ、そういえは昨日そう言ってたの聞いたなぁ」
やはり彼女も同じように聞かされていたようだと、サンクレッドは苦笑を零す。
「徹底しているというかなんと言うか…。まぁ知らなかったとしても、言葉通りだ。説明なんて不要だろう?」
そう言いながらヘーゼルアイを細めた男は、愛しい彼女を今まで何度も抱き締めた、鍛えられた太い腕を緩やかに広げてみせる。
それを見た彼女は海色の瞳を見開き、そして困ったように眉を下げて口元に笑みを浮かべた。
「なんか」
「ん?」
「改めてそうやって誘われると…恥ずかしいな」
そうはにかみながらも、サンクレッドに包まれる心地良さに慣らされた彼女の身体が、まるで吸い込まれるようにその腕の中へと収まりに行くのであった。