サン光
ラザハンは熱い。
それはわかりきっていた事ではあるのだが、それとこれとは話は別というものがあり、私は物の見事にその暑さにやられてしまった。
じりじりと身を焼く太陽と、容赦なくまとわりつく暑い空気に負けて日陰の中にフラフラと籠る。
幸い今回の依頼は急ぐような物ではなく、少しくらい休憩しても問題はない。
とはいえ、今回は同行者としてサンクレッドも一緒の為、あまり待たせる訳にもいかないな、と思いながら自分の手で顔を扇ぎ、気休めではあるが風を送る。
「うー………つらい」
私はその場に座り込み、頭を膝に乗せて短く呼吸を繰り返す。
元々暑いのは得意ではないのだが、ここまでダウンするのは久々かもしれない。
この体制だと熱が逃げにくいか、そう思ってどうにか顔を上げればサンクレッドが駆け寄ってくるのが見える。
「…大丈夫、じゃないよな」
心配そうな顔で手を伸ばしてきた彼は、私に触れる直前でその手を止めた。
あぁ、己の熱で触れる事を躊躇っているのか。そう察した私はその手に擦り寄り、熱を受け入れる。
「ごめん、ちょっと無理かも」
素直にそう答えればサンクレッドの目が細まり、触れている指が優しく頬を撫でてくれる。
彼は目線を合わせるようにしゃがみ込み、少しだけ顔を傾けて顔を覗き込んできた。
「休めそうな場所を見つけた、少しここで休んだらそっちに移動しよう」
「ん…ありがとう」
気にするな。そう穏やかな声で言ってくれる彼は、それにいいものを見つけたぞ。と口をぱかりと開き舌を少しだけ出して見せた。
その舌の上には水色の小さな塊が乗っていて、私は飴かと首を傾げてサンクレッドに問いかければ、彼は首を横に振る。
「いいや、小さく砕いたアイスシャードだ」
「アイスシャード!?」
シャードを口に入れるだなんて聞いた事ない、と思わず驚けばこの反応が予想済みだったのか、サンクレッドは面白そうに喉を鳴らした。
「まぁ、飲み込まなければどうということは無いだろうと思ってな」
試しに口に含んでみた。なんて言うものだから、彼の行動力たるや…。
いや、それもこれも私の為に試してくれているのだと思うと、申し訳ないやら嬉しいやら。
「今の所特に問題無いし、これで少しはお前が楽になるといいんだが」
そう言いながらサンクレッドは、皮袋から1粒のアイスシャードの欠片を取り出し、己の口に運ぶ。
まるで私に本当に大丈夫なのだと見せるように、それを口に含み、そのまま顔を寄せ…………寄せ!?
「むっ」
口が触れ、何度か啄むようなキスをされた。
そうして驚きで固く閉ざされた私の唇に、ピタリと冷たい塊が触れる。
アイスシャード、だ。
熱にやられた私の体に、その冷たさは余りにも魅力的で、求めるように唇が緩み受け入れてしまう。
それを見計らって押し込まれる冷たさに便乗するように、サンクレッドの舌もぬるりと入り込む。
「ふ、っ」
アイスシャードによって冷やされた彼の舌は、いつものような熱さはなく、脳が変に錯覚を覚えてくらりと揺れた。
1粒だけ渡されたアイスシャードが舌の上を転がる。
冷たくて心地よいそれが頬へと押し込まれた所で、サンクレッドも体を離す。
「………口で渡す必要性」
一応人気の無い場所ではあるが、絶対見られないという保証はない。
そんな場所でこんな事をされるのは、恥ずかしくて堪らない。ただでさえ暑いのに、より体温が上がってしまった気がする。
別に手渡ししてくれたって良かったのに、そういう不満も混ぜて睨みつければ、サンクレッドはそれはもう格好のいい顔をふんだんに活用して微笑んでくれた。
「暑い中、愛する人のために駆け回った俺へのご褒美」
「ぐぅ…」
この返しには文句も引っ込んでしまった。
それはわかりきっていた事ではあるのだが、それとこれとは話は別というものがあり、私は物の見事にその暑さにやられてしまった。
じりじりと身を焼く太陽と、容赦なくまとわりつく暑い空気に負けて日陰の中にフラフラと籠る。
幸い今回の依頼は急ぐような物ではなく、少しくらい休憩しても問題はない。
とはいえ、今回は同行者としてサンクレッドも一緒の為、あまり待たせる訳にもいかないな、と思いながら自分の手で顔を扇ぎ、気休めではあるが風を送る。
「うー………つらい」
私はその場に座り込み、頭を膝に乗せて短く呼吸を繰り返す。
元々暑いのは得意ではないのだが、ここまでダウンするのは久々かもしれない。
この体制だと熱が逃げにくいか、そう思ってどうにか顔を上げればサンクレッドが駆け寄ってくるのが見える。
「…大丈夫、じゃないよな」
心配そうな顔で手を伸ばしてきた彼は、私に触れる直前でその手を止めた。
あぁ、己の熱で触れる事を躊躇っているのか。そう察した私はその手に擦り寄り、熱を受け入れる。
「ごめん、ちょっと無理かも」
素直にそう答えればサンクレッドの目が細まり、触れている指が優しく頬を撫でてくれる。
彼は目線を合わせるようにしゃがみ込み、少しだけ顔を傾けて顔を覗き込んできた。
「休めそうな場所を見つけた、少しここで休んだらそっちに移動しよう」
「ん…ありがとう」
気にするな。そう穏やかな声で言ってくれる彼は、それにいいものを見つけたぞ。と口をぱかりと開き舌を少しだけ出して見せた。
その舌の上には水色の小さな塊が乗っていて、私は飴かと首を傾げてサンクレッドに問いかければ、彼は首を横に振る。
「いいや、小さく砕いたアイスシャードだ」
「アイスシャード!?」
シャードを口に入れるだなんて聞いた事ない、と思わず驚けばこの反応が予想済みだったのか、サンクレッドは面白そうに喉を鳴らした。
「まぁ、飲み込まなければどうということは無いだろうと思ってな」
試しに口に含んでみた。なんて言うものだから、彼の行動力たるや…。
いや、それもこれも私の為に試してくれているのだと思うと、申し訳ないやら嬉しいやら。
「今の所特に問題無いし、これで少しはお前が楽になるといいんだが」
そう言いながらサンクレッドは、皮袋から1粒のアイスシャードの欠片を取り出し、己の口に運ぶ。
まるで私に本当に大丈夫なのだと見せるように、それを口に含み、そのまま顔を寄せ…………寄せ!?
「むっ」
口が触れ、何度か啄むようなキスをされた。
そうして驚きで固く閉ざされた私の唇に、ピタリと冷たい塊が触れる。
アイスシャード、だ。
熱にやられた私の体に、その冷たさは余りにも魅力的で、求めるように唇が緩み受け入れてしまう。
それを見計らって押し込まれる冷たさに便乗するように、サンクレッドの舌もぬるりと入り込む。
「ふ、っ」
アイスシャードによって冷やされた彼の舌は、いつものような熱さはなく、脳が変に錯覚を覚えてくらりと揺れた。
1粒だけ渡されたアイスシャードが舌の上を転がる。
冷たくて心地よいそれが頬へと押し込まれた所で、サンクレッドも体を離す。
「………口で渡す必要性」
一応人気の無い場所ではあるが、絶対見られないという保証はない。
そんな場所でこんな事をされるのは、恥ずかしくて堪らない。ただでさえ暑いのに、より体温が上がってしまった気がする。
別に手渡ししてくれたって良かったのに、そういう不満も混ぜて睨みつければ、サンクレッドはそれはもう格好のいい顔をふんだんに活用して微笑んでくれた。
「暑い中、愛する人のために駆け回った俺へのご褒美」
「ぐぅ…」
この返しには文句も引っ込んでしまった。