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サン光

つるりとした、自分の舌とはまた違うその感触が舌裏をなぞってくる。
他者に触れられる事のない部分を舐られ、はふ、と合わさる口同士の空いた隙間から己の息が漏れた。
耳に届く水音を聞いて耳がぺたりと頭に沿って伏せてしまうのも、どうしようもない。あまりにも恥ずかしすぎるのだ。
そんな私の気持ちを知っていて尚、サンクレッドの舌は今度は表面を楽しむように優しく絡めてくる。
さり、さり、と口内で擦れ合う舌が心地よく、サンクレッドの服を掴んでいた指が更に強く食い込ませれば、あやす様に優しく耳裏を指先で擦られた。

「は、ぁ…さん、くれっ…」

思っていたよりも甘ったるい声が出たな、と何処か頭の隅の方で冷静に過ぎりはするが、体も呼吸も限界で私はサンクレッドに体を支えて貰っている状態だ。
そろそろ一旦やめて欲しいと差し込まれる舌先を、牙でやんわりと突き立てて抗議すれば、小さく笑うような声が聞こえた後にようやっとずるりと抜き出ていく。

「ふ…はぁ、はっ…」

「すまん、大丈夫か?」

心配の言葉をかけてくれるが、反省の色なんて少しも乗っていないそれに睨みつけてみると、見つめ返してくるその目がより熱っぽくなった事に気付く。
これは逆効果だったようだと、私は目の前の厚い胸板を覆う服に額を押し付けて顔を隠した。

「悪かったって、お前の舌…ザラついてて気持ちよくて、な」

確かに、ミコッテの舌は他の種族とは違って表面がざらついているのだと幼い頃から知ってはいたが、いざこうして愛しい人から耳に吹き込むようにそう囁かれて再確認させられるなんて……初めてその事を知った時、無邪気に不思議がっていたあの頃の私は露にも思うまい。
タイニークァールに舐められた時のようなブラシで擦られるようザラつきでは無い、僅かにザラつきを感じられるこの感触が、どこか癖になるのだといつだったかこの目の前の男に言われた事がある。
だからと言って、深く口を合わせる度にこうもねちっこくキスをされるのは……色々と辛い。

「もう少し、手加減してほしいのだけれども」

「それが出来たら苦労はしない」

一拍も置かずにそう返されてしまうのは、果たしてこれで何度目のやり取りとなるのだろう。
ため息をつきながら、最近は我慢すればいいかと諦めかけている自分がいる事に苦笑を零す。
そんな私を余所に、サンクレッドの手が伸ばされ私の尾を掬い取ったのが視界の端で見えた。
長すぎず短すぎず、中途半端だと思っている私の尾を、彼は愛おしそうに楽しそうにその指で、口付けで愛してくれる。
それは結構…嬉しかったりするから、つい好きにさせてしまう。
そうして今も指先で優しくなぞり、楽しんでいる顔を見上げれば、どうやら彼の熱はひっこんでくれたらしく私は胸を撫で下ろした。

と、思っていたら、尻尾を弄る手とは逆の手が私の頬を撫でて意識を向けさせてくる。

―あぁ、これは

「負担をかけて悪いとは本当に思っているんだ…だが、抑えられなくてな」

ギラと熱の篭った瞳が、私の身を焼き付ける。
隠すのが得意なサンクレッドは、今回もどうやら私の負担を考えて隠そうとはしてくれていたようだ。
まぁ、結局はこうしてまた露わにしてきたのだけれども。

「許してくれ」

頬を撫でていた手が、顎を捉えて上を向かせてくる。
…全くもう。

「できる限りでいいから…手加減して」

返ってくる答えはわかっているけれど、彼に甘くなってしまったと自負してしまっている私は、こうしてまたお願いをするのだ。


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