サン光
ここはモードゥナにある暁の血盟の拠点である、石の家。
新しく蒼の竜騎士を迎え入れ、冷たい外壁ながらも暖かなその空間には、今日も様々な仲間達が集っている。
「あら、サンクレッド、お疲れ様」
出入口の扉を開けて入ってきた、白いコートの男へとヤ・シュトラが労いの言葉を掛けて迎え入れた。
クルルが暁の面々をオールド・シャーレアンへと迎え入れる為に尽力している中、その連絡を待つ彼らもまた、各地方での蛮族の拉致問題への対策で今も駆け回っている。
光の加護が無い分、出来る事は限られているが、それでも可能な限りはやるのだと働き者の面々の休みは多くはない。
今日は比較的顔触れは揃っているな、と視線だけで見回したサンクレッドは、ヤ・シュトラに軽く返事を返して言葉を続ける。
「休んでる所申し訳ないんだが…今回はいつもより戦闘になる事が多かったから、貰ったソイルはほぼ空だ。すまないが追加を頼みたい」
少しだけ疲弊している声色に、見えはしないが白と聞いている彼の外套はきっと至る所汚れているのだろう。
火薬の匂いが流れてくる彼に向けてヤ・シュトラは薄く微笑むと、視線を横へと向けた。
「丁度良かったじゃない、貴方のソイルの追加はもうできていてよ」
最も今回魔力を込めたのは私では無く、あの人なのだれけども。
そう聞いたサンクレッドは、ヤ・シュトラに習ってそちに顔を向ければ、そこには麻袋の中身を鈍く鳴らしながら眼前に差し出してくる手がひとつ。
その人物はかつてはアルテマウェポンを破壊し、またサンクレッド自らもその時に助けられ、長く続いていた竜詩戦争を治め、アラミゴやドマを解放し、そして第一世界で共に駆け回り世界を救ったかけがえの無い愛しい存在。
「お前か…ありがとう、助かる」
麻袋を受け取り、当の人物の顔を伺いみれば、よく見慣れた顔が目を細めて笑っていた。
それを見て、漸くサンクレッドは吐き出す呼吸と共に肩の力を抜く。
「どういたしまして。いつもより少し多く作ったけれど、足りないなら言ってくれたら追加で用意する…あと、おかえり。お疲れ様」
「――あぁ、ただいま」
そうしてソイルの詰められた麻袋を仕舞おうとして、戦闘中にも関わらずふと脳裏に過った疑問をサンクレッドは思い出し、袋の中の弾薬を摘み、調べるように指先でくるりと回す。
「…作ってもらったソイルに優劣を付ける訳じゃ無いんだが、こっちに戻ってからというもの、お前の作ったソイルはやけに馴染むんだよな」
「ん?…こっちって…原初世界に戻ってから?」
首を傾げ問えば、頷き1つで肯定を返される。特に魔力を込める過程で他と違う事はしていないはずだけれど…と口元に指を運び悩むが、これと言って理由は思い浮かばず答えは出ない。
「……答えが欲しいのなら、与えてあげない事も無いのだけれど」
悩む2人に割って入るのは、最初にサンクレッドを出迎えた後、椅子に座り紅茶を飲みながら寛いでいたヤ・シュトラだった。
そんな彼女に2人分の視線が注がれる。彼女は少しだけ眉を下げて微笑んだ後、指先をサンクレッドに1度向けてゆるりと横へずらし、ソイルへ魔力を込めた当人へと向ける。
「貴方が混じっているからよ」
それだけ答え、ヤ・シュトラはもう伝えるものは無いとでも言うように再び紅茶の注がれているカップへと口をつけた。
「…あー………」
それだけでサンクレッドは察したのか、気まずそうに腕を組んで隣へと視線を向ければ、同じく理解したのであろう愛しい存在が顔を真っ赤にして俯いていた。
「なんだ、その。すまん」
そんな事が理由だとは微塵も思っていなかったのだが、とりあえず謝っておこうとサンクレッドは未だ俯くその頭を少し乱暴に掻き回した。
なるほど、と合点がいき頷くウリエンジェ。
少しだけ驚いた顔をしているエスティニアン。
同じように顔を赤くしながらわたわたとしているグ・ラハ・ティア。
幸いな事に、まだ大人になり切れていない双子は居なかったとはいえ、人の少なくないこの場所でとんでもない事を暴露されてしまった今、さてこの状況をどうしたものかと今度は別な方でサンクレッドは頭を悩ませたのだった。
新しく蒼の竜騎士を迎え入れ、冷たい外壁ながらも暖かなその空間には、今日も様々な仲間達が集っている。
「あら、サンクレッド、お疲れ様」
出入口の扉を開けて入ってきた、白いコートの男へとヤ・シュトラが労いの言葉を掛けて迎え入れた。
クルルが暁の面々をオールド・シャーレアンへと迎え入れる為に尽力している中、その連絡を待つ彼らもまた、各地方での蛮族の拉致問題への対策で今も駆け回っている。
光の加護が無い分、出来る事は限られているが、それでも可能な限りはやるのだと働き者の面々の休みは多くはない。
今日は比較的顔触れは揃っているな、と視線だけで見回したサンクレッドは、ヤ・シュトラに軽く返事を返して言葉を続ける。
「休んでる所申し訳ないんだが…今回はいつもより戦闘になる事が多かったから、貰ったソイルはほぼ空だ。すまないが追加を頼みたい」
少しだけ疲弊している声色に、見えはしないが白と聞いている彼の外套はきっと至る所汚れているのだろう。
火薬の匂いが流れてくる彼に向けてヤ・シュトラは薄く微笑むと、視線を横へと向けた。
「丁度良かったじゃない、貴方のソイルの追加はもうできていてよ」
最も今回魔力を込めたのは私では無く、あの人なのだれけども。
そう聞いたサンクレッドは、ヤ・シュトラに習ってそちに顔を向ければ、そこには麻袋の中身を鈍く鳴らしながら眼前に差し出してくる手がひとつ。
その人物はかつてはアルテマウェポンを破壊し、またサンクレッド自らもその時に助けられ、長く続いていた竜詩戦争を治め、アラミゴやドマを解放し、そして第一世界で共に駆け回り世界を救ったかけがえの無い愛しい存在。
「お前か…ありがとう、助かる」
麻袋を受け取り、当の人物の顔を伺いみれば、よく見慣れた顔が目を細めて笑っていた。
それを見て、漸くサンクレッドは吐き出す呼吸と共に肩の力を抜く。
「どういたしまして。いつもより少し多く作ったけれど、足りないなら言ってくれたら追加で用意する…あと、おかえり。お疲れ様」
「――あぁ、ただいま」
そうしてソイルの詰められた麻袋を仕舞おうとして、戦闘中にも関わらずふと脳裏に過った疑問をサンクレッドは思い出し、袋の中の弾薬を摘み、調べるように指先でくるりと回す。
「…作ってもらったソイルに優劣を付ける訳じゃ無いんだが、こっちに戻ってからというもの、お前の作ったソイルはやけに馴染むんだよな」
「ん?…こっちって…原初世界に戻ってから?」
首を傾げ問えば、頷き1つで肯定を返される。特に魔力を込める過程で他と違う事はしていないはずだけれど…と口元に指を運び悩むが、これと言って理由は思い浮かばず答えは出ない。
「……答えが欲しいのなら、与えてあげない事も無いのだけれど」
悩む2人に割って入るのは、最初にサンクレッドを出迎えた後、椅子に座り紅茶を飲みながら寛いでいたヤ・シュトラだった。
そんな彼女に2人分の視線が注がれる。彼女は少しだけ眉を下げて微笑んだ後、指先をサンクレッドに1度向けてゆるりと横へずらし、ソイルへ魔力を込めた当人へと向ける。
「貴方が混じっているからよ」
それだけ答え、ヤ・シュトラはもう伝えるものは無いとでも言うように再び紅茶の注がれているカップへと口をつけた。
「…あー………」
それだけでサンクレッドは察したのか、気まずそうに腕を組んで隣へと視線を向ければ、同じく理解したのであろう愛しい存在が顔を真っ赤にして俯いていた。
「なんだ、その。すまん」
そんな事が理由だとは微塵も思っていなかったのだが、とりあえず謝っておこうとサンクレッドは未だ俯くその頭を少し乱暴に掻き回した。
なるほど、と合点がいき頷くウリエンジェ。
少しだけ驚いた顔をしているエスティニアン。
同じように顔を赤くしながらわたわたとしているグ・ラハ・ティア。
幸いな事に、まだ大人になり切れていない双子は居なかったとはいえ、人の少なくないこの場所でとんでもない事を暴露されてしまった今、さてこの状況をどうしたものかと今度は別な方でサンクレッドは頭を悩ませたのだった。
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