処女の陰核とノーパンと文化・社会

初めての「陰核文化社会論」の授業。
マヤは、新しい場所に足を踏み入れる緊張感と期待が交錯する中、教室の扉を開けた。教室には、すでに何人かが座っていた。周りの学生たちを見まわすと、友人の姿もあったけれど、少し距離をとって一人で着席した。授業が始まるまでの間、マヤはずっとドキドキしていた。緊張と興奮が入り混じったような気持ちでいっぱいだった。

授業が始まると先生は、授業の進め方や成績のつけかたを事務的に説明した。それから講義のテーマである「陰核文化社会論」についての概要に入っていった。先生は、よくいるような先生という外見で、口調が柔らかく、穏やかな雰囲気だった。しかし、その言葉の奥には、深い洞察力と厳しさが感じられた。
先生の話は分かりやすく、同時に興味深かった。マヤは、先生が抱える熱意や知識に惹かれ、ますます授業に集中していった。

「陰核文化社会論」という学問分野には、性的行為を男性中心の視点から解放することや、女性自身が自分自身の性的快楽を追求することが重要だと考えるのだと先生が説明している。

マヤは、先生の話に耳を傾ける中で、自分自身が性的なことについて、あまり深く考えたことがなかったことに気づいた。
「だって私はまだ処女だから……」と、マヤは心の中でつぶやいていた。
先生は重要な「陰核」という概念について、非常に詳しく説明しはじめた。

「まず、陰核は女性の性的快感の中心部位です。刺激されると、大きな快感が得られます。それは女性にとって、非常に重要な部位です。」
マヤは先生の説明に耳を傾けていたが、無意識のうちに股間に手のひらをあてていた。

「陰核と陰茎、クリトリスとペニスは、似たような形をしています。発生の過程をさかのぼると、共通の組織から分化し形成されたと考えられています。しかし、陰核は決して、陰茎の代用品でも、陰茎になれなかった欠陥品でも、ありません。」

先生の言葉に、彼女の体は反応していた。彼女は思わず手のひらを挟み込むように足を組んでしまい、陰核を刺激した。彼女はそれに気づいたが、恥ずかしさから動けずにいた。彼女は自分自身に問いかけた。

「私にとっての陰核の意味って、何だろう?」

マヤは自分自身に問いかけながら、より強い快感を求めて手のひらを挟んだ太ももに力を入れてしまった。彼女は思わず声をあげそうになった。
先生はマヤを見たが、何も言わず微笑んだ。彼女はそのまま、鼓動と呼吸を落ち着かせようと目を瞑った。
深呼吸するように大きく息を吐いて、マヤは再び、授業に意識を集中させた。

先生は、陰核という言葉の語源について説明していた。
「陰核clitorisという言葉は、古代ギリシャ語の動詞から来ています。それは『閉じる』という意味です。陰核は、陰唇で包まれ、閉じられているという意味が込められています。」

先生は、優しく微笑むような、でも真剣な口調で言った。「陰核は、女性の性的な鍵であると考えられてきました。しかし、私たちは、それが女性に対する社会的・文化的な制約や偏見を生み出していることにも注目しなければなりません。」
マヤは先生の言葉に集中していた。先生は話をさらに進めていった。

「陰核は、『淫らに触れたり、くすぐったりする』という意味の動詞に由来しているという説もあります。」
教室のあちこちから、クスっと照れ隠しのような小さな笑い声がし広がった。

「ほかにも、山場や頂点を意味するクライマックスclimaxと同じく、「丘の側面」を意味する言葉が語源になっているという説があります。陰核を刺激することで得られる性的快感によって、最高潮まで昇りつめた状態、オーガズムに達した状態を、絶頂climaxと表現するのは、興味深いことですね。」

自分自身もそんな経験をしたいとマヤは思っていた。でも、まだ自分自身の体についてよく理解していなかった。だからマヤは、授業を受けながら、自分自身を深く理解していこうと決めたのだった。

先生の話は歴史の内容になっていた。
「さて、そもそも中世ヨーロッパでは女性器は男性器の欠陥品とみなされ、価値の低いものとされていました。例えば、16世紀の有名な解剖学の書物でも、女性器がペニスに似たもの、陰茎を膨らませて中を空洞にしたように膣が描かれています。陰核は、陰茎の小さな先っぽと見られていたのです。」
「中世ヨーロッパでは、男性を中心に考えていました。その男性になれなかった存在である女性を周縁的な存在として扱うことが一般的でした。女性器とくに陰核を、陰茎になれなかった部分として描く背景には、こうした女性と男性との関係性があらわれているのです。」
「ただし、歴史的に何世紀にもわたってこのような考え方が行われてきたという事実があるからといって、それが正しいというわけではありません。このような考え方には批判的に接する必要があります。」

マヤは初回の授業を、不思議な感覚に包まれながら終えた。ずっと緊張していたと思うし、とても好奇心が掻き立てられた。ワクワクドキドキ。まさに、そんな感情なのかもしれない。
この「陰核文化社会論」という授業ははじまったばかりだけれども、すでに期待を超えるものだった。
性的な部分ということで少し複雑な気持ちになりながらも彼女は、自分の性的な欲求や感情に向き合ってみようと思った。
「もっと自分自身の身体を知るために、今日から陰核を探求してみようかな」。ほんの数時間前には考えもしなかった気持ちになっていた。
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