悪戯は命取り!?
足音をさせず進み、[#da=2#]の背後から鳳珠はギュッと抱きしめる。
(!!??)
びっくりして心臓が止まるかと思ったけれど、慣れた香りと目に入ってきた黄色い袖から出る手をみて、すぐに体の力を抜く。
「もう・・・驚きますから声をかけてからにしてくださいな」
「悪い」
「こちらにいらしていたのですね」
「あぁ」
「と、言うことは景侍郎や主上、邵可様にも聞かれていましたわね。恥ずかしいですわ」
と今更ながらに真っ赤になる。
(あぁ答えろと言われてからその通りにしているけれど、やっぱり恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい・・・)
「あぁ、余にも聞こえていたぞ」
少し離れたところから声がする。
「恥ずかしくて向こうに行けない・・・」
とくるりと反転して、鳳珠の胸に顔を埋める。
「私もこうしていたいけどな、それは帰ってからにしよう」
クスリと笑ってから耳元で[#da=2#]に聞こえるだけの声で伝え、そっと離れる。
「まぁ、そう言うわけだ、藍将軍。私も、[#da=2#]を手放すつもりは一切ない。本気でないなら人の大切なものには悪戯に手を出さないことだな。それから、今日のところは見逃してやるが、次にやったらたとえ藍将軍でも潰す」
一言告げて鳳珠は去る。
「黄尚書・・・」
しまった・・・と青くなる楸瑛。
(しかし、どうやら黄尚書が妻溺愛という絳攸の話は本当だったんだな)
(鳳珠がここにきていると言うことは悠舜様のいないところで主上に言いたいことがあると言うことよね。お話が終わるまでこちらで控えているべきなんだろうけど、藍将軍がまだいらっしゃるからここにこのままいないほうがいい・・さて、どうしようかしら・・・)
「[#da=2#]殿」
景侍郎が書棚から顔を出す
「お荷物重いでしょうから、こちらへ」
うまく誘導してくれて、少し離れた椅子に腰掛けることができた。
邪魔にならないように小声で話す。
「景侍郎、助かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、私は話がつかなかった時に後押しするためについてきただけなのでご一緒に待っていますよ。あなたのあの発言、鳳珠はすごく嬉しそうでしたよ?」
「恥ずかしいです・・・聞かれたのが景侍郎で良かったと思いましたわ。
いつも思うのですけど、景侍郎はよく仮面の下の機嫌が分かりますよね?」
「はは、まあ長い付き合いですから・・・あなたもご存知でしょうが、鳳珠は一見捻くれてますが実際は意外とまっすぐですからね。あ、これ、内緒にしておいてくださいね」
悪戯っぽく笑う。
(景侍郎、本当に鳳珠のことよく分かっているし、お仕事できるし
癒しだわ〜他の部にも景侍郎みたいな方がいたらもう少し違うのに)
「仕事の件で来たのに御騒がせして申し訳ない」
一度頭を下げる鳳珠。
それから徐に主上が朝議で回してきた予算について
ひとしきり雷を落とすかの勢いで説教し始めた。
しばらくかかりそうな様子を見て、そっとお茶を淹れに行く。
ここは早く抜け出したいところだけれど、きっとこれが終われば主上に捕まるだろう。
(それにしても、邵可様の前だと言うのに随分苛烈に・・・よほど納得がいかないことなのね)
持ってきた主上用のお茶を用意しながら考える。
(ま、いっか。やりすぎてたら邵可様が止めるだろうし)
お茶の用意ができた頃に、
「まぁまずはその辺で、主上ももう少し考えてみてはいかがでしょう?」
と[#da=2#]の想定通りに邵可が止めて話は一度終わった。
「邵可殿、[#da=2#](あと)を頼みます。私はこれで。柚梨、行くぞ」
「あ、あの、景侍郎、こちらを少しお持ちになってください」
と持ってきた紅州みかんをいくつか急いで渡す。
「後ほど、戸部の皆さんで」
「ありがとうございます。みんな喜びますよ、いただきますね」