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黎深台風その1



最後の仕事が戸部だったので顔を出したら、もう鳳珠と景侍郎だけしか残っていなかった。
「今日のお姿は素敵ですね、鳳珠の見立てですか?」
ニコニコと景侍郎が聞いてくる。

「当たり前だろう」
何を馬鹿なことを、と鳳珠が答える。
「色が白いから薄い色がよく映えますね、素敵ですよ」と褒めてくれた。

書簡を渡し、確認してもらう。
「また吏部絡みか。吏部の決裁はいつだ?」
「明後日受け取りに来ますと紅吏部尚書に申し上げました。」
「では、こちらも同じ日に。明日か明後日の朝議の時にでも確認しておこう」
といって、クルクルと巻いて机に置いた。

「今日はこれで終わりだ。柚梨も上がってくれ」
「はい、ではまた明日。[#da=2#]殿、失礼します」
といって景侍郎は出て行った。

「私たちも帰るぞ」
「あの、それでしたら府庫に寄っていただいてもいいですか?」
「府庫?」
「歩きながらお話しします。」


向かいながら、昼間の顛末を話す。
おそらく鳳珠の仮面の下の表情は眉間に皺が寄っているだろう。
話終わった頃に、府庫についた。

「帰りは鳳珠殿も一緒なら良かったね」
邵可は持ち帰る方の服を渡す。
「もう一つの方を見せていただけますか?」
鳳珠が頼むので邵可は紅い方を出した。


「これはまた・・・真っ赤だな、というか大きさが違うだけで黎深そのものだな」
「えぇ・・・」
「でも・・・私の妻と知りながら手を出す馬鹿どもには冷血長官の身内と分かったほうがもしかしたら効果的かもしれない」
黎深の狙いを察して、しばらく衣装を眺める。


「そういう考え方もできるね。でも、臙脂じゃ流石に黎深の色が強すぎるかな。若い[#da=2#]には強すぎるし、[#da=2#]が紅家の姫とあまり知られていないから、意外と面倒ごとになるかもしれない。少し手直ししてもらったほうがいいと思うよ。もっとも、私はこれは返すつもりでいたぐらいだけどね。」
ダメなものはダメと言い切る邵可は意外と強い。


「邵可殿・・・
 そう仰るなら、こちらの扱いはお任せします。」

「鳳珠殿、あなたが用意したいはずのこの子の着物に横槍を入れる形になって申し訳ない。あの子なりの二人への愛情表現だから許してもらえると嬉しい」
「黎深は・・・いえ、邵可殿がおっしゃればその通りにするでしょう。お任せします。こちらの方は、来週には着させますよ」





一週間後。


「ねぇ鳳珠、本当にこちらの服でよろしいのかしら?」
黎深から贈られた服に袖を通し[#da=2#]は尋ねる。

「やっぱりこの前の方が似合っているな」
なんとなく面白くないが、邵可殿と約束した手前(しかもうっかり自分から言い出した!)着させないわけにいかないというもので。
「黎深が拗ねない程度に、月に2、3回着てやれ。もうすぐ、新しいのも仕立て上がってくるから、黎深の服の時以外は”揃い”でいこう」


そして、黎深からは黄色と臙脂が逆転した1着目のお直し服が後日贈られた。
それをやたらといつ着るかを聞かれていたが、着ていった日は、誰も予想していなかった
黎深と色が逆転した”お揃い”だった・・・


この国のトップであるはずの紅色と黄色の尚書二人が着物をめぐって中庭で大喧嘩したのはまた別の話・・・
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