黎深台風その1
さてと。
この風呂敷を持ってまだ他部門をウロウロする訳にもいかず後宮まで戻るのも面倒、鳳珠に預けたいところだが戸部はこの時間は戦場、ということで、困った時の邵可様状態で頼らせていたこうと足を向ける。
「おや[#da=2#]、今日は早速新しい服なんだね」
邵可様はいつもの笑顔で迎えてくださる。
「黄尚書らしい見立てだね、とても似合っているよ」
(何も言ってないけど・・・わかっちゃうわよね(苦笑))
やはり素直に褒めてもらえると嬉しいものだわ、と思いながら
「実は服の件で邵可様にお願いがあって」と荷物を差し出した。
「先ほど、吏部に寄ったら、黎深様から今すぐ着替えろ、とこれを渡されたんです。まだ仕事中なので受け取ってきたんですけれど、これからまだあと3つ回らないといけないので、夕方まで預かっていただけませんか?」
「全く・・・そうだね、これを持って回るのは辛いだろうからね今日は夕方まではいるから、預かるよ。途中で黎深に会ったら、私が預かっていると言ってくれれ構わないから」
「一応、お会いした時のために見ておいたほうがいいですよね?」
邵可に確認を取る。
「うん、そうだね・・・見ていないと知ったら拗ねちゃうからね・・・」
クスクス二人で笑って、風呂敷を開く。
「「・・・・・・」」
「これ、完全に黎深の好みだね?」
邵可は呆れた声で言う。
「物も意匠もさすが黎深様という素晴らしい物ですけれど・・・」
同じように黄色と紅の2色で仕上がっているが、なにぶん黎深の服のように臙脂がかった赤だ。
挙句、黄色は申し訳程度に入っているぐらいである。
2枚目は、黄色が地になっており、袖口と襟周りに差し色で赤が入っている。
それでも、いま[#da=2#]が着ているものより紅の割合が多い。
「一枚目は、黎深に返そう。これはよくないね」
「でも・・・」
「大丈夫、話は任せておいて。二つとも返してしまうと拗ねちゃうから、悪いけど黄色い方だけ夕方に取りにきなさい。着るか着ないかは[#da=2#]と鳳珠殿の判断で構わないし、言いにくかったら私から話すよ」
「わかりました。ありがとうございます」
(なんか言いつけちゃったみたいで黎深様に悪いことしちゃったかな、一応、せっかくのご好意だったのに)
少し沈んだ気持ちで次の仕事へ向かった。