黎深台風その1
基本、官服や進士服、後宮女官の衣装などは全て支給だが、もともと後宮女官の華やかな服装で外朝で仕事をするにはそぐわない、ということで主上に直接相談して許可をもらい、自分で用意して着ていた”生成りの外朝服”は[#da=2#]だけのもので、他の人が同じ仕事をするときは身につけておらず、異例中の異例だåった。
(主上に話しておけ、と言われたけれど、女官服みたいに作っていただくとなると時間もかかるかしらね?)
話すタイミングを見計らって悩んでいたが、いい機会がなく、3日後にようやく午後に邵可を訪ねて劉輝がお茶をしていることを思い出して、ここでなら話しやすいかと思い足を向ける。
「[#da=2#]久しぶりなのだ!余は[#da=2#]が後宮住まいでなくなってしまって寂しかったのだ」
「主上、お久しぶりです。邵可様、お邪魔いたします」
「この時間に珍しいね[#da=2#]、お茶を・・・」
「いえ、わたくしがさせていただきますわ!」
さっとお茶を淹れて戻る。
「仕事と家庭の両立はどうだい?」
邵可が心配そうに聞いてくる。
「貴陽黄邸は人も多いですし、ほとんど何もすることはありませんわ。少しずつ黄家の勉強をさせていただいています。それで主上、ちょっとご相談申し上げたいことが…」
でも流石に言いにくくてモゴモゴと下を向いてしまう。
「[#da=2#]の頼みならなんでも聞くぞ!」
何やら張り切っているので余計に言いにくくなる。
「以前、ご相談申し上げてこちらの服装で外朝回りをさせていただいていますけれど、その…生地の色を変えてもよろしいでしょうか?」
「その格好でもう数年動いているんだ、顔も十分知られているだろうし、全く問題ないのだ。[#da=2#]は桃色が似合うと余は思うぞ」
「ありがとうございます」
「また自分で用意するのか?余から話をしておくが?」
「お心遣いありがとうございます。でも官服でも女官服でもありませんし、わたくし以外は着ませんから自分で用意いたしますわ。」
「そうか、もし他の者が着るようなことになったら、そのときは女官の外朝服として用意するようにしよう」
謎に張り切る劉輝に、邵可と[#da=2#]は顔を見合わせて苦笑いするのだった。
その日の夜に[#da=2#]から
「劉輝様へお話ししたら、あっさりといいとのことでした」
と報告を受けたので、
「では、明日から」と2着渡す。
「いつの間に??」
一つは薄い菜の花色に鳳凰の地模様が織り込まれた生地に細い鴇色と若緑色でアクセントをつけたもの、もう一つは蒲公英色に紅赤。
色の白い桃華に似合いそうな、だがあまり華美になりすぎないようにした、シンプルな意匠だ。
「すぐに着られるように、あのあと頼んでおいた」
「ありがとうございます。鳳珠の官服のいくつかある色とは一緒ではないのですね」
戸部官ぐらいしか一緒にいるところを見ることもないだろうが、あまりあからさまじゃなくてよかったかな、とも思う。
「完全に
(支給品をこっそり作るとは…)
さりげなく暴走する夫の笑顔に何も言えなくなってしまった。
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