青い嵐
書簡まわりの後、戸部へいって仕事を手伝う。
「[#da=2#]ちゃん、この後宮の試算はどこから?」
「わたくしでないことは確かですよ、もっとも、後宮で戸部の手伝いをしているのを知っているのは筆頭女官だけですから。先に見せてもらえれば半分以下に削って持ってきたんですけどね。柚梨様、遠慮せずバッサリやっちゃってください」
あまりに辛辣な物言いに柚梨は目を見張ってからクスクス笑い、
「では遠慮なく」
と削っていく。
「兵部の後宮警備の依頼は、わざわざ孟兵部侍郎が持ってこられたんですよ」
作業をしながら柚梨が説明をする。
「残念なことに、尚書に直接手渡ししただけで帰ってしまいましたけどね」
「直接説明する度胸もないなら認められん、とつき返してこい」
鳳珠が現れて書簡を柚梨に渡した。
覗き込めば、何一つ認めていない。
「金だけ書いて概要も示さない阿呆が」
鳳珠は吐き捨てるように言う。
「それって…本気じゃないのかも?」
「本気じゃない、ってどう言うことですか、[#da=2#]ちゃん」
「本気で予算を取りに来ていない、って言うことは、本気で警備しない、と言うことかしら?」
[#da=2#]の話を聞いて、鳳珠が尋ねる。
「藍家の姫、とは誰が入ってくるんだ?」
「十三姫、と聞いています」
「あそこは直系は男5人兄弟だったよな」
「どうやら、お父上がかなりお派手な方だったようで…あちこちにお子さんがずいぶんたくさんいらっしゃるようで、色々な育て方をされているそうです。母方の家で育てられる、というよりは、養育先を別に用意しているようで…珠翠が主上に教えてもらったと言っていました」
「御史台が絡むと言っていたな」
「秀麗が囮ですね、きっと」
「そんな!秀くん、大丈夫ですかね?」
柚梨は我が事のようにオロオロしている。
「おそらく、秀麗は警備のことには気づかないでしょう。珠翠がが十三姫につきますので、直接お世話することはないと思いますが、お話することもあるでしょうから、またご報告しますわね」
(珠翠…)
「どうした?気になることがあるか?」
「最近、珠翠の様子が少しおかしいのです…隠しているけれど顔色も良くないし」
後宮女官は基本的には名字を出さない。珠翠の後見人は確か霄太師だ。
(直接聞きに行こうかしら・・)
”霄太師”という言葉が漏れたらしく、鳳珠と柚梨の顔が険しくなる。
「桃華ちゃん、くれぐれも気をつけてくださいね」
ため息をついた鳳珠に代わり、柚梨が言葉をかけてくれた。
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