緑の風ー3
半月ほど経ち、[#da=2#]の調べた茶と鉄については大きな問題がなく、全商連から上がった銅の報告書は問題あり、ということがわかり、悠舜と鳳珠は打ち合わせをした。
「旺門下侍中の案について、戸部で対応できそうですか?」
「あぁ、戸部の従来の官位で対応可能だ。形は[#da=2#]が作ったから、あとは通常業務でなんとでもなる」
「ありがとうございます」
明らかに悠舜はホッとした顔をした。
「悠舜に、”戸部を任せます”と言われたからな。まぁ、人数が少ないから、この件以外でも、もう少し補充してもらいたいところだが、黎深に嫌がらせしかされない」
「鳳珠が厳しすぎるのもありますけどね、今は優秀な侍郎付きがいるじゃないですか」
笑いながら話す
「臨時だと思っていたが…この件が終わってもまだいてもらって問題がないのならな」
きっかけは贋金だったが、終わりを見せたいま、気になっていたことだった。
「いいんじゃないですか?黎深が期間を指定せずに正式に辞令を出しているわけだし、やましいことはありません。そのうちどこかから夫婦が同じ職場にいるのはおかしい、と言われたら、ここにおきますよ。今は戸部で仕事中ですか?」
「いや、書簡届けは終わって、凜に会うから工部に行きたいと言っていたので送ってきたし、悠舜との話が終わったら迎えだ。遅い時間は変なのに絡まれやすいからな」
「気をつけてあげてくださいね。今日は邸で凜と話があるので、私も一緒に迎えにいきましょう」
悠舜の足に合わせてゆっくり歩いて工部に着くと、中が相当騒がしい。
また尚書と侍郎の喧嘩か?と思うが、女性のキャーキャーした声が間に入っている。
??
二人は顔を見合わせて、尚書室へ入ると、口づけせんばかりに抱きつく女と、オロオロしている[#da=2#]。
それを引き離そうとしている凜と玉に「酌をしろ!」と叫ぶ飛翔の声が混ざって大騒ぎとなっていた。
パンパン!「はい、そこまで!!」
悠舜が手を叩いて一同の気を惹きつける。
「欧陽侍郎、凜、手を離しなさい。歌梨殿も[#da=2#]から離れて。そして飛翔、[#da=2#]に酌はさせません。」
有無を言わさない一言で、全員が一度離れる。
「いや〜ん、でも、[#da=2#]ちゃん可愛いんだもの〜〜」
碧歌梨はそれでもまた手を出そうと狙っているが[#da=2#]はその前に鳳珠の元へ逃げ込んだのを見て、つまらなくなったのか「帰るわ」と室を出てしまった。
鳳珠はさっと抱き寄せて「大丈夫か?」と確認をする。
「見ての通りだったので大丈夫ですけれど…びっくりしました」
ようやく、という感じでふぅと[#da=2#]は大きく息をついた。
その姿に唖然としたのは飛翔と玉。
「え???」
「おや飛翔、[#da=2#]が鳳珠のお嫁さんということは知ってるでしょう?というか、あなた結婚式出てましたよね?」
冷ややかな視線を悠舜が飛翔に送る。
「あぁ、知ってはいるんだが…その、一緒にいるのを見たのが初めてでちょっと驚いた…」
飛翔の驚きはそれだけではない
「仮面の奇人に抱きついているのはちょっと不気味だな」
鳳珠のこめかみに青筋が立つ
(管尚書…悪夢の国試組よね。鳳珠は黎深様や悠舜様との方が仲良しみたいだけれど)
考えながら歌梨がいなくなったので、鳳珠から少し離れて凜の方に寄ると、欧陽侍郎がじっと見ていた。
??
曖昧に微笑んでおく。
「鳳珠、迎えにきて正解でしたね。凜、帰りましょう」
「[#da=2#]、戻るぞ」
ハッとして尚書と侍郎に礼をして、工部を出た。