緑の風ー3
その後、大きな動きはないまま、外朝まわりのあとに戸部で頼まれた集計や書類整理をしながら日を過ごし、鳳珠と帰る日が続いていた。
柚梨が言っていた[#da=2#]の集中力の凄さについて、知ってはいたが宮城でも同じというのが公休日明けにすぐわかった。
疲れすぎないように鳳珠も早めに切り上げて一緒に帰り、邸で残りの仕事をする生活に切り替える。
しばらく様子見で今まで通りそれぞれの室で寝ていたが、[#da=2#]は頭が冴えているのか不安なのか、眠りが浅いらしく日に日に目の下の隈が濃くなってきていて、3日後に鳳珠に強制的に抱きかかえて室の移動をされて一緒に寝るようになった。
翌日、外朝周りのときに吏部尚書室に入ると、黎深がものすごい勢いで近づいてきて、手でムニっと[#da=2#]の頬を掴んで上を向かせる。
「れ、黎深おじ…さま?」
(近いっっ!)
鼻がくっつかんばかりに顔をちかづけられて、繁々とあちこち観察される。
ずりっと後ずさろうとするが、力が強いのか動けない。
「昨日は…眠れたようだな」
(!!鳳珠に強制連行されて添い寝されたのが”影”からバレた!?)
と思って焦っていたところ、黎深はパッと手を離すと、大きくため息をついた。
「戸部で変人仮面にこきつかわれて、脳が活性化され過ぎているだろう。[#da=2#]はいまの状況も確実につかんでいて不安に思っているだろう??どうして私に相談してこないっ!!毎日隈が濃くなっているのは見ていればわかる」
と激烈に怒っている。
(………)
あぁ、これは、最大限に心配してくださっているのね…
黎深の”天つ才”の前では、何もかも隠すことはできない。
素直に「ごめんなさい。ありがとうございます」と伝えて頭を下げる。
「武勇以外に[#da=2#]ができないことはないから安心しろ。そして、全ては悠舜と鳳珠がなんとかするから心配しなくていい」
自分が、とは言わない。
黎深には黎深の考えがあって、邵可様と悠舜様と鳳珠のためには動くが、王のためには動かない。
それがわかる[#da=2#]も、”天つ才”に限りなく近く、さらに”天性のカン”を持っている女人だった。