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緑の風ー3



昼が近いので甘味か食事でもしてから帰るか、と話しながら歩いていると、[#da=2#]が突然立ち止まった。

「あれ・・秀麗?」
手を離し、さっと懐から仮面を出してつけ、綾絹の布を外してしまう。

少し腕を丸めて「危ないからつかまっていろ」と出すと、ちょっと戸惑ってから小さな手が腕をそっと掴んできたのを合図に歩き出す。


「秀麗、久しぶりね」
「[#da=2#]姉様!・・と、黄尚書、こんにちは」
笑顔の秀麗が隣の鳳珠に気がついて慌てて礼をとろうとするのを「今日は礼はいい」と止める。

「[#da=2#]姉様・・・」
秀麗が上から下まで繁々と見て、腕を組んでいる様子にニヤニヤし始めた。

「もともと姉様は美しくくて可愛いくて自慢の姉様だけれど、最近特に綺麗になったと評判だった意味がよくわかったわ〜〜♪」

鳳珠が立つ反対側の耳元で「黄尚書に愛されているのね、よかったわ」と囁くので「もうっ」と軽く叩いておく。


「あ、姉様、ちょっと意見聞きたいんだけど」
と秀麗が目の前を指さす。

「このお塩、どう思う?」
林おばさんに「いいよね?」と聞くと少し舐められるように小皿に乗せて出してくれた。


「お塩?・・ん?舌触りがじゃりじゃりするというか…でも結晶化しているわけではないわね…」

鳳珠を見上げたら、少し指にとって仮面をずらして口に入れる。
「・・・砂が混ざっている?な」


「そうなんです。あと、実は少しお値段も上がっているんです。昨日買ったお塩がこんな感じだったのと、過去の帳簿と見合わせて確認したら、同じ値段のものを買っていたので気になって来てみたんです。おばさんが生産地からは普通に出荷されているみたいだけれど、貴陽に到着するまでの間に白砂が入ってしまって、小売りする段階で気がついて値段を上げざるを得なくなった、というのを今聞いていたんです。」

おばさんが秀麗の説明を受けて続ける。
「白砂の混ざり方にばらつきがあるの。混じったり混ざらなかったりでさ。で、なんとかこっちも少しずつ値段を上げるくらいで凌げてるよ。」


桃華と鳳珠は顔を見合わせる。

「黄尚書、塩は管轄ですよね?」
「わかった、確認しよう。桃華、行こう」

「あ、待ってくださいな。このお塩と一番いいお塩、少しずつでいいのですが購入させてください」
「えっ、でも…」
秀麗が戸惑ったがおばさんが嬉しそうに「ありがとう」と言ったので頷いておく。
お財布を出そうとしたら、鳳珠がさっと払ってくれた。

「秀麗、ありがとう、またね」
「姉様、せっかくの逢引、邪魔してしまってごめんなさい。今度、ご一緒にうちにいらして」
「えぇ、そうするわ。あなたも頑張って」


「甘味屋でも行こうかと思っていたが、出仕しなければいけないな、すまない」

「かまいませんわ。何かお手伝いすることがあれば、わたくしもご一緒します。あと、一度帰って着替えることを考えると、宮城で少し食べられるように、何か買っていきませんか?柚梨様が出られているようでしたら、3人分。あ、でもお弁当をお持ちかしら?余っても持って帰れるものがいいですわね」

「思いつかなかったがそれもいいな。そうしよう」
もう一度、手を繋いで指を絡めて買い物に向かう。




官服に着替えるのを手伝ってくれたあと用意をしていたら、[#da=2#]は自室で侍女に手伝ってもらって着替えて出てきた。

「あら、お土産を渡していなかったので置いてくるので少し待っていてください」
と言って、部屋を出て行く。

なかなか戻ってこないので侍女に確認しようかと思っていたところへ、ようやく手に何やら持って戻って来たのをみて、一緒に出かける。


「簪、外したのか?」
俥で揺られていて気がついた。せっかく贈ったのに、と思ったがいつもの組紐が巻かれていたのでまぁいいかと思い直してみたり。


「したままでもよかったのですけれど…普段していないお洒落をすると、柚梨様が気が付かれるでしょう?そうすると、その…お出かけを中断して帰って来たのかって思われてしまうと、気を遣われるかと思って…」

今のような桃華の周り、特に自分と関わる人に対する細やかな気遣いに心が温かくなる。

(また一つ、好きなところが増えたな)
俥を降りるまでの僅かな”逢引”の時間を楽しむべく、鳳珠は[#da=2#]の肩を寄せて、髪を撫でる。

先程の店で思いついたことと”普段もできるお洒落”が結びついてニヤリと笑った。

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