緑の風ー3
翌日から、普段とさほど変わらない予定を組み、昼前まで珠翠と[#da=2#]は打ち合わせをしたり後宮内を周り、午前後に[#da=2#]は外朝に出て仕事をする、という生活になった。
あまりに活発に嗅ぎ回ると気づかれる可能性があるため、日常業務の延長という形でさりげなさを装っていた。
報告をまとめた書簡は一番に黎深に直接届けて口頭で補足をしてから、各部を回る。
必然的に吏部には2回行くことになるが、言い訳は前日の悠舜の指令、という理由を使うと準備してあったので特に怪しまれても困ることもなかった。
1週間たち公休日前に黎深に細かい報告をする。
「順調に進んでいます。想定通りですが貴族後見…圧倒的に門下省とそれから…意外と御史台、兵部後見も多いですね。七家では紅家と黄家が多いですが、ここは当主と直系が尚書のせいか、特段おかしな者はいなさそうですし、比較的真面目な方が多いです。梨園の方は碧家一門が多いですが、ここも当初の見込み通り粛々と碧家の役割を果たしているのであまり気にしなくてよさそうです。むしろ、祭事や宴席がない分、暇を持て余していますね。各人の名前と後見人の一覧はこちらの書簡に。」
「4分の1ほどでこの結果ということは、この先も似たり寄ったりになるだろうな。2割以上は使えない、か…引き続きやってくれ」
「かしこまりました」
「黎深おじさま…あの、秀麗は…」
「査定中だ」
「秀麗は…それは秀麗の良さでもあるのですが、何かあるとそれに向かって突っ走ってしまって、正義感が強くて夢をみがちなので…きちんと査定していただけるか心配です」
黎深は目を見張って[#da=2#]を見てから
「また後で書簡を届けに来い」
とだけ言って、退室させた。
(全く、あの感性は誰に似たのか…)
そう、報告書には”紅秀麗は甘すぎる”と書かれていた。
[#da=2#]の亡くなった親は特筆するところはなかったように思うが、思い返してみればカンだけは鋭かった。
後見は邵可だったが、自分と玖琅のところにいたせいか、物事の先をみたり本質をつくことに長けている。
紅家の、玖琅の道具になるよりはと後宮に入れたし、鳳珠にそれとなく水を向けて結果的に惹かれあって結婚したが、女人官吏制度の国試の時に官吏にした方がよかったか、と時折思っていた。
(いや、それでは玖琅と同じだな…)
本人が望まない以上、無理強いはしない。
秀麗に向けたものとはまた違う、黎深なりの[#da=2#]への愛情表現だった。