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緑の風−2


「悠舜殿、この件はしっかり話を聞きたい。御史台が動いているからと黄尚書には話さないと言うことで動いていたはずだが?どうしてここまで具体的にわかったのだ?」

翌朝、早速贋金のことについて鳳珠が知ったことを劉輝に報告をした。

「主上がよくご存知の方の謎解きですよ。朝議の後に呼んでいますのでその時に。さぁ、行きましょう」
と朝議に向かう。





朝議後、しっかりと人払いをして集まったのは劉輝、悠舜、凜、絳攸に楸瑛、黎深、鳳珠、そして桃華。

昨日と同じ流れで[#da=2#]が説明をし、
昨日と同じように・・・今朝は劉輝と楸瑛が瞠目する。


「[#da=2#]、すごいのだ…後宮女官は勿体なさすぎるのだ…」
劉輝は驚きつつ手放しで大喜びしている。

「本当に…貴女はどれだけの魅力を秘めているのですか?」
楸瑛が隣に来てそっと腰に手を当てようとするのを、鳳珠が引き寄せて躱し、黎深が睨みつける。


「絳攸はあまり驚いていないようだな」

劉輝が尋ねると
「斬新な着眼点という意味では私より上。空いている時間は私の横で勉強してたから、知識量は似たようなもののじゃないか」
「絳攸様のように、論理的で無駄のない展開はできませんわ。わたくしの発想は大半がカンですし、飛び道具みたいなものです」
[#da=2#]の発言に黎深がニヤリと笑う。


「それで、これからの展開ですが」
悠舜が話を切り、昨日の打ち合わせの通りに新貨幣鋳造を急ぐこと、碧幽谷に意匠を頼むこと、新貨幣の重量に特徴をつけるべくバランスを考えて配合することを説明した。

「贋金探索の方は、おそらく御史台が動いているようですので、それは向こうに任せておきましょう。」


(そこまで掴んでいたから、最初に話した時に濁したのか)
鳳珠は一昨日の夜のことを思い出しながら口を開く。
「凜殿から聞いた配合で材料を用意した場合、また工匠を揃えると、工部が吹っかけてこない限り、予算はギリギリ抑えてこれぐらいでできるでしょう。あとは碧幽谷にどこまでかかるかだと思いますが、この幅であればなんとかなるかと…これを超えると、戸部としては今ある別の案件を大幅に削らないといけない」 

「悠舜殿と黄尚書の仕事も早いものだな…わかった。まずはそれで進めよう。」
「かしこまりました。では紅尚書、工部と詰めて臨時の工匠の雇用準備をお願いします」


黎深は懐からぱらりと書簡を出し、机上にひろげる。
「こちらに候補者を。紅州、碧州、黄州から集めます。それと、ここに記載していない者を、碧幽谷を除きあと2人入れます。」
「それはどのような役割なのだ?」

(そんなこともわからんのか、このボンクラが)
黎深は冷たい視線を劉輝にむけてから口を開く。

「本件は工部の協力なくしてはできないが、通常の業務に支障がでるわけにはいかない。集めた工匠に指示を出す本件の統括者を1人。また、尚書令と工部、戸部とのやり取りも機密事項のため、下官や侍童にやらせるわけにはいかないので、内容を理解し適切に動ける、確実に信頼できる者を1人。」

「そのような者がいるのか?」
(馬鹿王が…)黎深と鳳珠の額に青筋が浮かんだのをやれやれという顔で悠舜は見て苦笑いする。


「悠舜!飛翔の説得は任せたぞ」
「はい。女人官吏の時と違い、凜と[#da=2#]なら大丈夫でしょう」

「悠舜殿、いま紅尚書が言った2人はこの2人なのか?」
「はい、凜は発明家ですし全商連との交渉もお手の物です。[#da=2#]は普段の仕事と先程の話からしてうってつけの役割でしょう。」

「なら[#da=2#]は執務室ここを拠点にすればいい。先程の謎解きができるぐらいなら、余の相談にも乗ってほしいのだ。それに、[#da=2#]の淹れるお茶は美味しい。」
劉輝はウキウキと桃華を見つめる。


先にキレたのは黎深。
「ふざけたことを![#da=2#]は吏部に。用がある時だけ出ればいい!」

「紅尚書、それではあなたがますます仕事をしなくなるので、戸部で預かりましょう」
「黄尚書、それは公私混同だ![#da=2#]は吏部だ!」

「それをいうなら、戸部でも吏部でも公私混同ではないのか?余のところがいちばん安全で良いと思うのだが…?」
至極最もなことを劉輝は言ったのだが、そんなことで聞く耳をもつ2人ではない。


「・・・纏まりませんから、[#da=2#]に決めてもらったらどうですか?」
悠舜がにっこりと笑って2人を戒める。
とたんに大人しくなる尚書2人…


『鄭尚書令のあの微笑みは黒いな…』
『あぁ。あの黎深様と黄尚書を手のひらで転がせる方だからな…』
声を抑えて様子を見守る側近2人。


「えっと、あの…」
(もう、なんでこうなるのよー主上が余計なこと言うからー)

「[#da=2#]は"叔父さん"といたいよね?お昼をゆっくり食べて、お茶をしよう」
左の耳元で囁く黎深、働く気ゼロの通常運転。
ガクッとする絳攸。


「[#da=2#]、お前のいるべきところは私の隣だ」
右の耳元で桃華にだけ聞こえる小さな声で甘く囁く鳳珠

ボン!と顔を赤くして下を向く。
(鳳珠、皆様の前で、それ、反則…)


やりすぎたか?と思った鳳珠は[#da=2#]の頭をポンポンと叩いて、
「自分で選びなさい。行きたいところに行って構わない。ここは李侍郎もいるから安全だろうし、吏部に行けば紅尚書が真面目に仕事をするだろうから吏部官吏に歓迎されるだろう。もちろん、安全に関してはどちらも心配はない。」と告げた。


「フン、当たり前だ。だから吏部…」
「戸部は?」
黎深に被せて[#da=2#]が聞く。
「戸部は、どうなんです?」

ただ単に鳳珠の側にいたい、というだけではなく、何か、誰かの役に立てるなら鳳珠の役に立ちたい。

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