緑の風−1
「で、早速本題に入るが・・・」
予定通りの昼過ぎに、黎深、悠舜、凛が集まった。
もっとも、黎深は文を出すまでもなく昼餉の時間に「[#da=2#]にご馳走になりにきた」と勝手にやってきたのだが。
鳳珠はお茶と[#da=2#]特製のお菓子を少し傍によけ、一昨日、説明を受けた3枚の紙を机に出す。
「説明は、[#da=2#]から」
と言って頷いて見せると、凛とした表情に変わったの見て、悠舜と凛が目を見張った。
黎深は、表情を変えずに桃華を見ている。
「こちらの手紙に、薄墨の模様があったのが気になったのです。
手紙の内容は読んでいただいても問題ありません。
料紙にもともと書かれている模様ではなくて、意図的に書かれたものだと思いました。
よく見ると字のように見えたのですが、ご覧いただいた通り普通の文字ではありませんので
書き出して解析してみようと思ったのです。」
書庫で調べた紙を指す。
「文字らしきものの解析がこちらです。
それを踏まえてもう一度模様の方を見ると、模様自体にも意味があると思いまして」
模様を描き出した紙を指す。
「文字の方は贋金が出回っていることについて述べているでしょう。音や形を引くことにより意味が出てきました。
上段が書かれていたもの、中段が余分な飾りを引いたもの、
下段がおそらく本来の意味だろうと考えましたのでご確認ください。
意匠はほぼ同じで、重量の問題と示しているので少し厄介かと思います。
そしておそらく、この模様に見える配置は重量、すなわち金の含有量をの変遷を図式化しているものと思われます。
右肩下がりになっているので、流通量ではないでしょう。緩やかに下がってあるところで一定化しているので、これより下げると気づかれる、という可能性があってここで固定化されたのはないでしょうか?」
しばらく3人は黙って机の上と[#da=2#]の顔を見ていた。
「これは、すごいですね・・・」
悠舜が口火を切る。
「[#da=2#]、官吏として働きませんか?」
「ほへっ?悠舜様、なんでそんなことに??えっ???」
先ほどまでのキリッとした顔から、びっくり顔になって落ち着きなくキョロキョロし始める。
「そんな・・・これは黎深様がお声がけくださったからわかったことで・・・”押してダメなら引いてみろ”と。ありがとうございました、黎深様。」
「紅尚書は知っていたのか?」
凛が口を挟む。
(もしや、黄家の手紙のふりをして黎深が紛れ込ませた?だがこの料紙は業務の連絡で通常使っているものだ、一体誰が?)
鳳珠の心の中の疑問に答えるように
「私は何も知らないよ。吏部に来たときの[#da=2#]の表情がいつもと少し違ったからね、何かあるのかと思っただけだ。さすが私の桃華だ。よく解析したな」
と言って、微笑んで頭を撫でた。
「そうか。ただし[#da=2#]は貴様のものではない。これの解析は帰宅後に2日で行ったものだ。私は手伝う幕がなかった」
「「えっっ??」」
またも悠舜と凛は驚く。
「・・・フン、そのぐらい、[#da=2#]には造作もない。国試を受けたら状元間違いなしの頭だ。もっとも、秀麗ぐらいの歳の時には女人官吏制度などなかったし本人も官吏になりたいか聞いたが興味がないと言っていたからな」
「黎深様、そんな買い被りすぎですわ」
「そんなことはない!紅家本家で育てたのだからそれぐらいは当たり前だ」
「いや、どちらかというと黎深様より百合様と玖琅様が・・・」
「なんだとっ?!」
騒がしくなってきた二人の会話を遠くに聞く。
知らなかったことの衝撃もあるが、不思議と嫌な感じはしない。
「君は知らなかっただろう、悔しいか?」
勝ち誇ったように黎深が鳳珠を煽る。
「・・・つくづく惜しいですね、[#da=2#]、今からでも国試受験どうですか?」
悠舜はまた[#da=2#]を勧誘してる。