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緑の風−1


自分の室に抱き抱えるようにして連れて行き、座らせる。
侍女を呼びお茶と夜食がわりの饅頭を出してもらってから、誰も近づけるなと人払いした。
[#da=2#]を見ると少し落ち着いたようだが、まだかなり不安そうな顔をしている。

「温かいのを飲んで少し落ち着こう。大丈夫だ、何があっても私がお前を守る」
隣に座ってしっかりと肩を抱き、顔を見て伝えると、小さくうなづいた。

「説明してくれるか?」

[#da=2#]は机の上の方に昨日の手紙を広げ、「一枚紙をください」と言う。
渡すと下に並べて筆を取り、手紙の薄墨模様を抜き出し同じように書いていく。

「先ほどお渡ししたものを」と言うので、それも渡すと今書いた紙の左側に置いた。

そして少しキリッとした顔つきになり
「この解釈が正しいかわかりません。戸部にも無関係ではないので、お仕事に支障が出るかもしれません。ただ鳳珠が聞いてくださった上のご判断で必要だと思われたら、鄭尚書令や黎深様には早めにお耳に入れたほうがいいかと。」

「その解釈が仮に正しくなかったとしても、[#da=2#]を責めることはないから安心しろ。話の内容次第だが、必要であればそこから先は私が引き受ける。桃華は心配することない。お前は私が守る。」
と言って安心させて、説明を促した。




「[#da=2#]、お前・・・」
聞いた鳳珠は驚きを隠せない。
話の内容に。
そしてそれを導き出した桃華に。

「これを全部一人で・・・すごいな・・・」
「??」
「いや、仕事も他の後宮女官と比べても一人ずば抜けているとは思っていたが・・・明日から官吏として働いてもすぐに出世できるぐらいだな」

「そんな・・・買い被りすぎですよ」
さっきまであんなに凛々しい顔をしていたのに、急にフニャッとしてオロオロし始める。
また新たな一面を知ることができて口の端が上がる。


(それにしても・・・)
桃華の結論は間違いなく正しいだろう。
明日、悠舜の邸に行くが、結婚祝いという目的を考えるとこの話は前振りまでに留めておいたほうがいいだろう。
ただし、あまり長くは引っ張れない。明後日の公休日に文を出すかその次の日の出仕では話しておいたほうがいい。

「もしかしたら、明後日の公休日かその次の日に話をすることになるかもしれない。その時は同席してもらえるか?」
「わたくしなんかが、よろしいのでしょうか?」
「この件を説明してもらわなければいけないからな、きっと[#da=2#]が一番の功労者だ。」

大きな手で頭を撫でられる。
なんか子供扱いされたような気もするが、お仕事に関することで褒めてもらえるのは普段ないことなので素直に嬉しい。

「あ・・でも・・功労者は黎深様かもしれません・・・」
「黎深?これを見せたのか?」
「いえ、黄家の文ですから、見せてもいませんし話してもいないのですけれど・・・今日、吏部で捕まったと話しましたよね?その帰り際になんの前触れもなく突然”押してダメなら引いてみろ”と言われて。」

そう、本当に前後の脈絡なく、突然。
キョトンとした顔で見返した時には「気をつけてお帰り」と言われて
いつもならついてきたりするのに、珍しくそのまま部屋を出されてしまったのだ。

「先ほど、鳳珠がお帰りになって書庫で・・その・・ご挨拶をしているときにふと思い出したのです。
 それがきっかけで解読できたようなものだったので・・・」
「そうか。紅家なら何か掴んでいるかもしれないな。わかった。明日対応しておこう。」

功労者の妻に、お茶を足して食事を促す。
「頭を使ったから甘いものが美味しいです」
と言ってふんわり微笑む姿を目にして、思わず腕の中に閉じ込めた。

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