緑の風−1
遡ること、一日前。
先に帰宅した[#da=2#]に家令が告げる。
「黄州よりお仕事の御文が届いております。お室に届けてあります」
「わかりました、ありがとうございます」
部屋に行って文を開く。
もともと立場もあり鳳珠がそんなに積極的に関わっていなかったので、黄家の商売に関することやその他の報告は必要最低限しか入ってこないので
多少の手伝いはしているが、黎深が百合に任せていたほど仕事量も多くない。
”結婚したら仕事が増えて[#da=2#]にはすまない”などと鳳珠は言ってくれるが、そもそもの見ていた手本が百合なので、[#da=2#]自身はこのぐらいの量は”お仕事”のうちには入らないだろうと思っている。
(なんか読みにくい、この手紙・・・)
書いてある内容は大したことがないのだが、所々だが全体に左上から右下に薄墨で模様が入っている。
模様としては違和感があり、また不規則に入っているのがなんだか気になった。
遠くに話してみたり、近くで見たり、逆さまにしたり、灯りにすかしたり。
いろいろ試してみるけれど、特に仕掛けはない。
(多分、これは模様じゃなくて文字よね・・・)
ただし、普通の文字ではない。
わかりやすく1つ反転されているものもあるが、
明らかに存在しない文字なのだ。
(鳳珠や黎深様に見てもらったらすぐに答えが出るかもしれないけど・・・)
ふと思いついて、紙を出し、一つずつ薄墨の文字らしきものを順番に横に並べていく。
見本のような反転文字以外は、同じ規則性のものはない。
「なんか気になるわね」
お盆に硯と筆、書き出したものと紙を数枚乗せ、室を出た。