緑の風−1
「おかえり凜、桃華。外してもらって悪かったね。」
さて、気を取り直して、という感じで悠舜が続ける。
「ところで二人は何を話していたのですか?」
「旦那様、女同士の話ですから、内緒です」
「おや?私に隠し事ですか・・・それは後でゆっくり聞かないとね」
と凛の右手を取ってギュッと握る。
(あ、悠舜様、悪い顔になった・・・)と思った[#da=2#]がそっと横を見ると(同じ顔してる・・・)
目があってしまったので、コクコクと頷いておいた。
「私の可愛い凜が私に隠し事となると、相手が[#da=2#]でも妬けてしまいますね」
「悠舜、お前今日惚気全開だな」
「新婚の鳳珠に対抗するにはまだまだ足りないと思っていますけど?茶州から戻ってきたときにこういう会を開いて凜の自慢をしたかったのですが、黎深は邵可殿と秀麗殿以外興味ないし、鳳珠は拗らせ独身でしたからね。ようやくできて嬉しいですよ。」
「それは悪かったな・・・そういえば、君が帰ってきた時の黎深の第一声は秀麗殿のことだったな。いや、色々すまない・・・」
はっきり言って黎深のせいだが、なんだか居た堪れない気持ちになって鳳珠は謝っておいた。
「それはまた黎深様らしい逸話ですわね。悠舜様、申し訳ございません」
全く関係ないが、紅家に連なるものとして思わず謝ってしまう[#da=2#]。
「この家も、君の足の負担を軽くするために機能的に作られているようだし、凛が悠舜の奥方で本当に良かったと今日改めて感じたな」
「それだけでなく、細やかな気遣いが素晴らしいですわ。わたくしも見習わないと」
鳳珠に向かって微笑んでおく。
「[#da=2#]は今のままで十分だと思うがな」
「まぁ」
鳳珠の大きな手で頭をポンポンとされる。
最近、鳳珠が気に入っている[#da=2#]のかまい方で、初めは子供扱いされているように思っていたが、仮面なしで下手に手を取られたりして色気が爆発するよりいいか、受け入れることにしている。
その後、妻が可愛すぎる自慢大会をひとしきり行ったのち、今日のところはお開きとなった。
「ところで、凛と何を話していたのだ?」
帰りの俥の中で、[#da=2#]を抱き寄せ鳳珠は聞く。
「内緒、って言ったじゃないですか」
一応、抵抗してみる。
綺麗な手で[#da=2#]の顎を掴んで口付けて
「答えるまで寝かさないからな」
と色気を含んだ声で囁く。
「でも・・・」
「今頃、悠舜も同じことを言っているだろうな。それにしても、今日はすっかり当てられたな」
苦笑いをして、額をコツンとくっつける
「聞かされ代として、これぐらいしてきてもよかったかもしれないな」
「まぁ、そんな」
「また次に会う時にでもやるか。それとも、口付けの方がいいか」
と言いながら接吻の雨を降らせる。