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緑の風−1


「悠舜、お招きありがとう」
「お邪魔いたします」
「改めて鳳珠、[#da=2#]殿、結婚おめでとう。さぁどうぞ」

二人で住むにはちょうどいい大きさの、そして足の悪いことも考慮されていてとても気持ちの良い住みやすそうな邸だと[#da=2#]は感じた。


「宮城で顔は合わせたことがあるかもしれないが、妻の凜です。」
「よろしくお願いいたします、[#da=2#]殿」
「よろしくお願いいたします、鄭尚書令、凜姫様」

ん?と悠舜は少し首を傾げてから
「今日は仕事ではないので、鄭尚書令はなしですね。悠舜で構いませんよ。鳳珠の奥方なんですから。凜にも同じように鳳珠のことを呼ばせます。」
とクスクス笑う。

「お二人は私のことも凜と呼んでほしい。私も[#da=2#]とよばせてもらいたいし」
鳳珠を見たら頷いたので
「では悠舜様、凜、改めましてよろしくお願いいたします」
と再度頭を下げた。

「これを。酒好きな[#da=2#]が選んだ。あまり家で休む時間も取れないだろうが、たまには凜殿と酒でもゆっくり飲んでくれ」
結局、[#da=2#]が選んできた黄州と紅州の最高品質かつ珍しいマニアックな3本の酒のうち、2本を鳳珠が選んで持ってきた。

「ありがとうございます。どちらも珍しいものですね。楽しみです。大したお構いもできませんが、凜が用意したのでどうぞ。」
と酒とつまみを勧める。


「私から[#da=2#]へお祝いにしては色気がないけれど、私が作った護身用の煙玉と防具だ。秀麗殿に渡したものから少し改良を重ねてあるから使いやすくなっていると思う。」

「鳳珠がいないときに街を歩くこともあるでしょうからね、念のためと言って用意したんですよ。使ってしまったらまた渡します。鳳珠に渡したいものがあると前に言っていたのはこれのことですよ」

「お心遣いありがとうございます。これはどうやって?」
凜が桃華に使い方を教えている間に、男同士は酒を飲み始めた。


「外朝での仕事服と異なり、今日のような服装をしていると[#da=2#]はより可愛らしいですね。一見、秀麗殿とあまり変わらないぐらいに見える」
「実際はもう少し上だけどな。[#da=2#]は凜のことをキリッとしていて素敵カッコイイ言っているな。後宮あたりを歩かせたら人気の的だろうな。」

「そうですね、普段は名前の通り凛としてますし、女性らしい服装をするとそこもまた魅力的ですよ。まぁそれは私だけのものなので、おいそれと他人には見せませんが」
「大して飲んでもいないのに早速惚気か」
クスリと笑いながら二人は酒を煽る。


「旦那様、恥ずかしいですからやめてくださいな」
話を終えて凜が隣に腰掛けると、さっと手を握る。

「いいじゃないですか、本当のことなんですから。愛妻家と一部で噂の鳳珠と違って、私は人前では言う機会がありませんからね、たまには言わせてください。それに鳳珠が結婚してくれたので、やっと自慢できるところができたのですから。」
「黎深や飛翔は聞いていないからな」
鳳珠は苦笑いをする。


「確かに、工部でも管尚書が鳳珠様のこと”あの仕事人間が結婚したら妻第一で早く帰るから付き合いが悪くなった”とぼやいてやけ酒飲んでますね。」
「ほとんど早く帰れてないし、もともと飛翔とはそんなにしょっちゅう行っていないがな。全く、勝手に…」

(えっと、悠舜様の惚気話を聞いているはずが矛先変えられた?鳳珠、”妻溺愛”はちょっと恥ずかしいから否定して欲しいのですけど・・)
[#da=2#]の心の声は届かず、話は進む。


「この前も、藍将軍に[#da=2#]がナンパされた現場に居合わせて、目の前でいちゃついていたらしいですよ。あの鳳珠がねぇ、って話になりました」
「悠舜様、それって…」
「あ、主上から聞きましたよ」
(やっぱり・・・)赤くなって下を向く。

「藍家の小僧にはあのぐらいしないと効果がないだろう」
「あら、真っ赤になっちゃって、かわいい[#da=2#]」
「いや、あの時はちょっと色々…」
二人、いや三人からクスクス笑われる。


「で、実際はどうなんですか?鳳珠、結婚生活は?」
「悠舜こそどうなんだ?二人揃って遅くまで残っているからなかなかゆっくり楽しめないだろう」

「そうですね・・・でもなるべく公休日は家にいるようにしていますよ街中に出る時もあるけれど、家でゆっくりしている方が多いですね。鳳珠こそ、街歩きは難しいんじゃないですか?」
悠舜と凜が少し気になっていたのはここのところだった。
何せ仮面姿で逢引というのもあまり女性としては嬉しくないだろう。

なんとなく次の台詞を予測した[#da=2#]は
「わたくしは別に仮面つけてても構いませんから。たまには出かけていただいててますよ。あと、お弁当を作って少し遠出をしていただいたりとか。わたくしは紅州と紫州、それも邸周りと貴陽の街中しか知らないので、少しでも遠くに出ると新鮮ですし、お忙しいのに時間作ってくださって嬉しいです。」
と最後は鳳珠に向かって微笑んだ。
「一度、黄州にもいかないといけないな…」


「黄州といえば」
と悠舜が少し難しい顔をする。
「確認したいこともあるので近いうちに」
「今じゃなくていいのか?」
「まだ少し情報がたりてないんですよ。」
「・・・」

「お酒を少し足してきますね。[#da=2#]、お手伝いいただいてもいい?」
「もちろんですわ」
察した凜と[#da=2#]は席を外す。

「流石に商売もやっているだけあって良くできた奥方だな」
「お互いにですね。[#da=2#]は今の仕事よりもっと能力の高いこともできるでしょう。紅家のことを考えて黎深が後宮女官で入れたと黎深から聞きました。前にも言いましたが官吏に変わっても十分やっていけるでしょうね。」

「私の妻で官吏だとやりづらかろう。その代わり、少し黄家の仕事を見てもらい始めている。さっきの話で席を外したのは、話の内容がわかったからだ」
「ということは、鳳珠の方にも情報が入っているということですね」
「おそらく、悠舜が知らない情報もだ。[#da=2#]が書簡の中から解読した」
「えっ?それで?」
男二人は少し声を落として話し始める。

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