紅の企み
歩きながら仮面の下で軽くため息をつく。
黎深のやることは理解不能だが、先ほどの機嫌の良さといい、向かっている先といい
予想に違わず彼の兄に関することだろうと思う。
(秀麗を見に行くなら菓子など持っていないはず)
彼の思考回路がわかってしまう自分にもう一つため息をついた。
先ほどと同じ場所に着くと、まだ客人とお茶をしている姿が見えた
「邵可殿はお客人がいらしているようではないか、出直した方が良いだろう」
至極当たり前のことを鳳珠はいう。
それはそうだ、先客があるのに乗り込みなど・・・
「そんなこと、知るか。それに珠翠たちなら構わん」
なぜ・・・と鳳樹が言う前に、黎深は「兄上〜〜」と叫び走り出した
「あっ、こら黎深!」
仕方がないので引き戻すために慌てて追いかける。
「おや黎深、何か用事かな?今はお客様がいるからね、
急ぎでなければ後にしてくれるかい?」
少し困り顔で邵可は答える。
「申し訳ございません、黎深を止めようとしたのですが・・・」
「黄尚書までご一緒とは、なにか急ぎの用事かね?でも、その手にしているのは?」
急ぎの用などではないことは百も承知で邵可は尋ねる。
「邵可様、私どもはそろそろ・・・」
空気を読んだ珠翠が声を掛ける。
「いえ、よろしければご一緒にどうぞ!美味しいお茶とお菓子が手に入ったので持ってきたのです!!」
(いや、ちょっと待て、兄大好きなこの人が他の人とお茶をしようと誘うなどありえない!!)
全員の心が一致したのか、4人は顔を見合わせる。
「仕方ないね、珠翠、桃華、構わないかい?」
「私どもがご一緒してよろしいのであれば」
「では、座ろうか」
言い出したら聞かない黎深のことを一番わかっている邵可がまとめる。
「兄上、お茶は私がいれます!」
普段働かない黎深がウキウキと用意をしている様を不気味がりながら邵可は尋ねた。
「黄尚書はこちらの二人はご存知かな?後宮筆頭女官の珠翠と、次席の[#da=2#]。
[#da=2#]は外朝との連絡係でもあるから見知っているかと思うけど」
「はい、戸部にきている時に見かけたことはありますが、仕事のやりとり以外で話をするのは初めてですね」
「改めまして、初めまして、黄尚書。」
そんな会話を聞きながら、黎深は目の端で鳳珠の様子を見る。
他の人が見たら普段と変わった感じはないが
(やはり・・・)
はじめに兄とこの二人がいるところを見た時に感じたものは、どうやら間違っていなかったらしい。
珠翠は確かにこの彩雲国でもトップクラスの美人だ。
だが[#da=2#]も負けてはいない。むしろ、外朝との連絡のために煌びやかではない服を身につけている分、豊かな黒髪が映えるし、抑えた美しさのようなものがある。
聡明でしっかりしている。鳳珠がそれを知らないはずはない。
そして、二人の向かい側に座っている鳳珠の顔は、心なしか桃華に角度が寄っている。
(仮面の下は明らかに[#da=2#]に興味を持っている!!!)
自身は決して認めないが、黎深は兄と姪と養い子と嫁の次に、鳳珠(と悠舜)が好きである。
だから、鳳珠には想い人を自分のものにしたことは棚に上げて、一応幸せにはなってほしいと思っている。
だが、愛が勝りすぎて嫌がらせにしかなっていない日頃の態度から、残念ながら鳳珠には全く理解されていない。
そう、黎深が鳳珠にすることは嫌がらせ以外の何者でもないのだ・・・
4人の会話は邵可が上手く回し、和やかに盛り上がっている。
お茶を入れると自分で言っておきながら、その輪の外になってしまったのはすこぶる面白くない。
そもそも、自分がみんなでお茶を飲もうと言ったことも、自分がお茶を入れると言ったこともどこかへ飛んでいる。
(鳳珠め、私の兄上と和やかに会話など・・・)
しかし、黎深がそもそもお茶を誘った理由と、兄と楽しそうにする鳳珠への嫌がらせ(黎深としては愛情のつもり)が一致した瞬間でもあった。
黎深は菓子を広げ、説明をしながらお茶を配る。
まず、兄上から。
そこはブレない黎深。
そしてその隣の自分の席に先に置き、
わざわざ向かい側の珠翠、桃華と渡し、最後に鳳珠。
お茶を置き終わった後、盆の下に持っていた扇で、黎深の後頭部の紐を引っ掛け
さっと仮面を取り上げた
「黎深!!!」
青筋を立てて立ち上がり横を向く鳳珠
正面から横顔をまじまじと見つめる珠翠と桃華
「黎深、黄尚書にお返ししなさい」
邵可は呆れと怒りの色を滲ませながら、静かに言った。
「人が嫌がることをしてはいけないとわかっているよね?」
まるで子供への説教だが、黎深は明後日の方向を向いていた・・・
正確に言うと、珠翠と桃華の様子を見ていた。
二人はぼんやりと鳳珠の顔を見つめる。
(超絶美人・・・)
以外の言葉は浮かばなかったが
きっかり10秒後
「あら。。。」
「まぁ。。。」
と示し合わせたように声を発した。
黎深のやることは理解不能だが、先ほどの機嫌の良さといい、向かっている先といい
予想に違わず彼の兄に関することだろうと思う。
(秀麗を見に行くなら菓子など持っていないはず)
彼の思考回路がわかってしまう自分にもう一つため息をついた。
先ほどと同じ場所に着くと、まだ客人とお茶をしている姿が見えた
「邵可殿はお客人がいらしているようではないか、出直した方が良いだろう」
至極当たり前のことを鳳珠はいう。
それはそうだ、先客があるのに乗り込みなど・・・
「そんなこと、知るか。それに珠翠たちなら構わん」
なぜ・・・と鳳樹が言う前に、黎深は「兄上〜〜」と叫び走り出した
「あっ、こら黎深!」
仕方がないので引き戻すために慌てて追いかける。
「おや黎深、何か用事かな?今はお客様がいるからね、
急ぎでなければ後にしてくれるかい?」
少し困り顔で邵可は答える。
「申し訳ございません、黎深を止めようとしたのですが・・・」
「黄尚書までご一緒とは、なにか急ぎの用事かね?でも、その手にしているのは?」
急ぎの用などではないことは百も承知で邵可は尋ねる。
「邵可様、私どもはそろそろ・・・」
空気を読んだ珠翠が声を掛ける。
「いえ、よろしければご一緒にどうぞ!美味しいお茶とお菓子が手に入ったので持ってきたのです!!」
(いや、ちょっと待て、兄大好きなこの人が他の人とお茶をしようと誘うなどありえない!!)
全員の心が一致したのか、4人は顔を見合わせる。
「仕方ないね、珠翠、桃華、構わないかい?」
「私どもがご一緒してよろしいのであれば」
「では、座ろうか」
言い出したら聞かない黎深のことを一番わかっている邵可がまとめる。
「兄上、お茶は私がいれます!」
普段働かない黎深がウキウキと用意をしている様を不気味がりながら邵可は尋ねた。
「黄尚書はこちらの二人はご存知かな?後宮筆頭女官の珠翠と、次席の[#da=2#]。
[#da=2#]は外朝との連絡係でもあるから見知っているかと思うけど」
「はい、戸部にきている時に見かけたことはありますが、仕事のやりとり以外で話をするのは初めてですね」
「改めまして、初めまして、黄尚書。」
そんな会話を聞きながら、黎深は目の端で鳳珠の様子を見る。
他の人が見たら普段と変わった感じはないが
(やはり・・・)
はじめに兄とこの二人がいるところを見た時に感じたものは、どうやら間違っていなかったらしい。
珠翠は確かにこの彩雲国でもトップクラスの美人だ。
だが[#da=2#]も負けてはいない。むしろ、外朝との連絡のために煌びやかではない服を身につけている分、豊かな黒髪が映えるし、抑えた美しさのようなものがある。
聡明でしっかりしている。鳳珠がそれを知らないはずはない。
そして、二人の向かい側に座っている鳳珠の顔は、心なしか桃華に角度が寄っている。
(仮面の下は明らかに[#da=2#]に興味を持っている!!!)
自身は決して認めないが、黎深は兄と姪と養い子と嫁の次に、鳳珠(と悠舜)が好きである。
だから、鳳珠には想い人を自分のものにしたことは棚に上げて、一応幸せにはなってほしいと思っている。
だが、愛が勝りすぎて嫌がらせにしかなっていない日頃の態度から、残念ながら鳳珠には全く理解されていない。
そう、黎深が鳳珠にすることは嫌がらせ以外の何者でもないのだ・・・
4人の会話は邵可が上手く回し、和やかに盛り上がっている。
お茶を入れると自分で言っておきながら、その輪の外になってしまったのはすこぶる面白くない。
そもそも、自分がみんなでお茶を飲もうと言ったことも、自分がお茶を入れると言ったこともどこかへ飛んでいる。
(鳳珠め、私の兄上と和やかに会話など・・・)
しかし、黎深がそもそもお茶を誘った理由と、兄と楽しそうにする鳳珠への嫌がらせ(黎深としては愛情のつもり)が一致した瞬間でもあった。
黎深は菓子を広げ、説明をしながらお茶を配る。
まず、兄上から。
そこはブレない黎深。
そしてその隣の自分の席に先に置き、
わざわざ向かい側の珠翠、桃華と渡し、最後に鳳珠。
お茶を置き終わった後、盆の下に持っていた扇で、黎深の後頭部の紐を引っ掛け
さっと仮面を取り上げた
「黎深!!!」
青筋を立てて立ち上がり横を向く鳳珠
正面から横顔をまじまじと見つめる珠翠と桃華
「黎深、黄尚書にお返ししなさい」
邵可は呆れと怒りの色を滲ませながら、静かに言った。
「人が嫌がることをしてはいけないとわかっているよね?」
まるで子供への説教だが、黎深は明後日の方向を向いていた・・・
正確に言うと、珠翠と桃華の様子を見ていた。
二人はぼんやりと鳳珠の顔を見つめる。
(超絶美人・・・)
以外の言葉は浮かばなかったが
きっかり10秒後
「あら。。。」
「まぁ。。。」
と示し合わせたように声を発した。