桃色吐息
鳳珠と[#da=2#]が結婚して少し経ったある日。
後宮の庭を見つめて四阿でぼんやりしていたら
「仕事と家庭の両立は慣れた?」
と珠翠に話しかけられた。
手には茶器セットと菓子を持っている。
「えぇ、だいぶ。お茶は私が淹れるわ」
と[#da=2#]は受け取って準備をする。
珠翠の眼から見ても、[#da=2#]は結婚してからさらに色香が増したと思う。
(これは外朝の官吏たちが放っておかないはずだわ。仮面尚書夫人じゃなければ大変なことになっているわね)
うなじの見えなさそうで見えるところに咲く花が目に付く。
「[#da=2#]も大変なことで・・・」
思わず珠翠は口にする。
「え?」
きょとんとしながらお茶を出す[#da=2#]。
本人の無防備さにため息をつく。
「あなた、気をつけなさいよ。最近また外朝官吏の話題の的のようよ」
「どういうこと?」
「外朝の仕事の時、言い寄られたりしていない?」
「うーん・・・まぁ、そういえば前より増えたかな?」
やっぱり、とため息をつく珠翠。
なんだかわかんない、という顔をしてお菓子を見る[#da=2#]
「あぁ、また藍将軍からお菓子ついでに何か言われたの?」
いただくわね、とぱくっと一口食べる。
「ボウフラだけじゃないわよ、劉輝様からもよ、まぁ耳に入れたのはボウフラだと思うけれど」
いうには、結婚してからますます[#da=2#]の色気と美しさが増して、人妻との背徳を味わいたいだとか、
別れさせてぜひ自分のものにしたい、だとかいう馬鹿どもが後を絶たないとか。
「黎深様と黄尚書がお知りになったら、全員命はないわね」
[#da=2#]はケラケラ笑って言う。
「でも、断る時の文句は簡単よ。珠翠の真似してるもの」
「え?」
「少し表現は変えているけどね。
”愛する夫がおりますので”って。
と、言うのもね・・・」