桃色吐息
鳳珠は隣の[#da=2#]を見る。
結婚式の時の装いは妖艶さもあり目を見張るものだったが
今はあどけない表情で小さく丸くなっている。
(可愛いな)
子供にするように額に口付けてから起き上がり、一口水を飲んでもう一度横たわる。
再び熱を感じでいたが、[#da=2#]を労って我慢する。
そっと抱き寄せて、その我慢も幸せなのだなと思い眠りについたのだった。
翌朝、[#da=2#]は目覚めると、目の前に男性の胸が飛び込んできた。
「!!??」
顔をあげると超絶美人が朝から色気ダダ漏れでこちらを向いている。
「おはよう、[#da=2#]。体は痛まないか?」
心なしか、声もいつもより艶っぽい。
朝から色気爆弾でしかないのでなんとかしてもらわないと、いくつ命があっても早死にしてしまうかもしれない・・・などと訳の分からないことを思いながら、昨夜のことを思い出し、真っ赤になって抱きついた。
「我が愛しの妻は朝から積極的だね?」
ちゅっ、と首筋に口づけを落とされる。
「いえ、その・・そう言うつもりでは・・・」
しどろもどろになる姿を見てくすくすと笑われた。
「気持ちに応えたいのは山々だが、そうすると寝台から出られなくなるな。
まぁ、一日休んだところで問題はないだろうが」
と目の色が変わったのを見て慌てて止めた。
「鳳珠、おはようございます。朝からそんな・・・お支度お手伝いしますわ」
「では、夜を楽しみにしておこう」
と言って鳳珠は起き上がり、[#da=2#]を抱き起こして左手を取り、指輪に口付けた。
(そうだ!)
なんとか着替えた[#da=2#]は鳳珠の支度を手伝い終わった時に、
「これを・・・」と箱を差し出す。
「わたくし、いつも鳳珠から頂き物ばかりしていて、何かお返しをしたかったのです。それで、これを・・・」
「ありがとう、開けても?」
昨日の[#da=2#]と同じように返す。
中には、同じデザインの首飾りが二つ。
「あれ?」
中身をわかっていたはずの[#da=2#]が不思議そうな声を出す。
同じ黄玉と紅玉と濃いめの桃色の電気石でデザインされているが、一つは少し全体的に赤みの濃い桃色寄りで、もう一つは黄色が主体になっている。
黄色寄りの首飾りに、小さなメモがついていたので[#da=2#]は開いた。
”黎深が、黄家の色に染まりなさい、とあなたの分も作ったのよ”
百合からの一言だった。
「黎深様・・・」
「黎深?」
「いえ、本当は鳳珠の分だけの予定だったんです。指輪じゃないですけれど、会えない時もわたくしは常にあなたのそばにいる、と言う想いを込めまして。服の下でも邪魔にならない意匠にしていただきました。でも、これをお願いするときに、私には言わずにもう一つ黎深様が作ってくださっていたみたいで。」
と、黄色い方を手に取る。
「黄家の色に染まりなさい、と」
と言って、メモを鳳珠に見せる。
「私が桃色の方か、[#da=2#]色に染まれ、ということかな」
もう一つの方を手に取る。
「つけてくれるかい?」
[#da=2#]は鳳珠に首飾りをつけた。
「心から鳳珠をお慕いしております。いつでも、どんな時も、あなたのそばに。」
と言いながら。
「これが[#da=2#]なら、おいそれと人には見せられないな。ここに閉じ込めておかないと」
と言って、服の中にしまう。
「いつでもここにいてくれると思うだけで嬉しいよ。ありがとう」
ともう一度礼を言って、[#da=2#]を膝の上に乗せて口付けた。