桃色吐息
それから程なくして、鳳珠と[#da=2#]の結婚式が行われた。
本来は黄州に帰って挙げるものだが、仕事山積みで休めない戸部尚書ということで紫州で挙げることになった。
さらに、顔を晒せない花婿の事情により身内と近い人だけの出席となったが、その分、祝福の色が濃くつつがなく終わった。
柚梨に至っては「鳳珠、良かった」と号泣である。
鳳珠の顔を知らない絳攸と、さらに黎深が叔父と名乗りを上げていない秀麗は仕事と称して外されたが、それぞれ控えている間に手短にお祝いを述べにきた。
「[#da=2#]姉様、美しすぎるわ、黄尚書もこんな美しい花嫁じゃもったいないわね」
鳳珠の顔が醜いと思っている秀麗に、[#da=2#]は苦笑いで返すしかない。
(こんな超絶美人なのにね)
全て終わり、夜になってから思い出して微笑んだ[#da=2#]に「どうした?」という顔を向ける鳳珠。
曖昧に微笑んでおく。
「[#da=2#]、ちょっとこちらへ」
と呼ばれたので、大人しく隣に座る。
(私も、あれを渡さなきゃ)
「これを」
と先に小さな箱を渡されてしまった。
「開けても?」
頷く鳳珠に、丁寧に箱を開ける。
黄色と桃色の小さな石がぐるりと一周している指輪だった。
「茶州の方では、結婚した時に揃いの指輪をつける風習があるらしい。私は忙しかったりするし、仕事で会えないこともあるかもしれないが、いつでも桃華を思っている、という証として受け取って欲しい」
(もう一つ、男に言い寄られないため、というのもあるのだが…心の狭い男だとは思われたくないから黙っておこう)
鳳珠は綺麗な手で[#da=2#]の左手を取り、薬指にはめて口づけをした。
「ありがとう・・・ございます。嬉しいです。鳳珠様、これは鳳珠様もつけられるのですか?先ほど、お揃いの指輪、とおっしゃっていましたけど」
「私のは、これだ」
もう一つの箱を出し、開けて桃華にみせる。
同じ桃色金、だが石はついていない。
「同じ色味の土台ですけれど、石はついていませんのね」
”揃いの”と聞いていたので、少しがっかりした顔で言う。
よく見てごらん、と鳳珠は指輪をとり、少し傾けて内側を見せた。
同じ黄色と桃色が二つ、裏側に埋め込まれている。
「揃い、だろう?つけてくれるか?」
これ見よがしではないけれどそこが素敵だと思い[#da=2#]はにっこりと笑って
鳳珠の指に指輪をはめた。
「いく久しく、よろしくお願い申し上げます」と改めて言って。
鳳珠は立ち上がり、さっと[#da=2#]を横抱きにすると、
寝台のうえにそっと座らせた。
「[#da=2#]・・・愛している・・・」
壊物に触れるような優しい口づけは、甘い夜の始まりの合図だった・・・