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桃色吐息


(黎深様がご一緒にいてくださるならあのことを相談しても問題ないかもしれない)

とはいえ捻くれ者の黎深からは、あんなやつにそんなのは必要ない、とか言われそうだと思いもしたが、もう一人ではどうにも解決できないし、残り時間もあまりないところに来ていたので、[#da=2#]は迷っていることを素直に相談した。

黎深の愛する者への重すぎる愛情を理解しているため、彼のいないところで百合に鳳珠の件を相談するのは気が引けていたのだ。

「私では何も思いつかなくて・・・」
「あいつにはもったいないな!何もやらんでいい!」
案の定、黎深は間髪入れずに言い放った。

「もう、また君は![#da=2#]の気持ちを蔑ろにしてどうするのよ」
百合に嗜められる。
「そうねぇ・・・耳飾り・・・だと、色を変えても黎深とお揃いになってしまうわね。プププ」
「絶対ダメだ!!!」
ものすごい剣幕で黎深が反対する。

(それは・・・面白いかもしれない・・・)と想像して
思わず口元が緩んでしまったら、叩かれはしなかったが冷たい視線が飛んできて、さっと顔を引き締める。


「あいつは、服は派手目だがそのほかは過度に飾り立てたりする方ではないな」
それは[#da=2#]も思っていたことだ。
「仮面の印象があまりに強すぎるからそれで十分だ」
「でも、仮面も黎深様が贈られている、と聞いているので違うと思いまして」
「君、そんなことしてたの?まぁ可愛い恋人から仮面は贈られたくないわよねぇ」
百合が呆れて返す。

「首飾りは?着物の中に入れてしまえば見えないけれど、近くに存在を感じられていいんじゃない?」
いいことを思いついた!とばかりに弾む声の百合に対し
「そ、そんな・・・」と顔を赤らめる[#da=2#]。

「もー、[#da=2#]は可愛いなぁ」
百合がデレデレとしながら頭を撫でる。
「君はどう思う?君の親友のことなんだから、ちゃんと考えてあげてよね」
と黎深に聞く。

「桃色金の鎖、石は桃色の電気石トルマリン、黄玉と少し紅玉を入れよう」
スラスラと回答が出てくる。
意匠のイメージを黎深が簡単に伝えると、百合がそれを絵に落としていく。

びっくりして見つめていたら
「黎深の頭の中にふわっとあるものをね、職人に直接伝えると大変だから、一旦私が通訳しているのよ。最後の意匠は職人に任せてしまうけどね。こんな感じだと思うけど桃華も少し書き加えて?あなたからの贈り物なんだから。」
と言いながら百合が絵を見せてくれる。玄人のようなデザイン画に驚きを隠せない。

(素晴らしすぎるのでこれ以上直すのは・・・)
と遠慮しかかったが、これでは百合からの贈り物になってしまうと思い直して鳳珠がこれをつけている姿を思い浮かべる。
もちろん、服の上からつけても問題ないが、見せることが主目的でないなら鎖は少し細めにして大きすぎないように仕上げたほうがいいかと思い、百合に相談する。

「さすが[#da=2#]ね、そのほうがいいと思うわ」と言い
イメージ絵のバランスを修正して、黎深に見せた。
「悪くないな」
と言いながら黎深が何やら書き込んで、
部屋の端にいた職人に「これを」と渡していた。


「君に手直しされたのは久しぶりよね。大概任せっぱなしなのに珍しいわ」
と言いながら、職人に渡された絵を百合が覗き込んで、ニヤリと笑った。
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